チェリー

中学3年の時の話です。
僕の住んでいるのは結構田舎で、のんびりとしたのどかな感じの、家の周りもほとんど田んぼや畑で、夜になると真っ暗になってしまうような所です。
場所によっては携帯電話の電波も届かないような有様で、なのでなのか、中学生では携帯電話を持っている人はほとんどいなくて、僕の学校でも持っている人は数人しかいませんでした。
もちろん僕も持っていなくて、当時は家にパソコンもなかったのでネットなんかも出来ないし、性に関しての情報源はほとんどなくて、保健体育の教科書とマンガかテレビくらいでしか得られず、部活の方に精を出し過ぎていたせいか、セックスは当然、オナニーでさえ全く無縁な、かなり性に関しては疎いというか、無知でピュア?な中学生でした。
それが、ある友達のおかげで性に目覚めてしまいました。

それは6月の雨の土曜日でした。
陸上部の僕は、本来なら午前授業が終って部活の予定だったのですが、その日はあいにくの雨でグラウンドが使えませんでした。少しくらいの雨ならロードワークをするんですけど結構な雨だったのでそれも出来なくて、それなら室内練習をと思ったんですが、先生方の研究発表会みたいなものが行われるとかで、校舎内での運動部のトレーニング(雨の日にはグラウンドが使えない運動部が校舎のいたるところで走ったり筋トレしたりするから騒がしいんです)厳禁と言われていて断念し、体育館と校舎を結ぶ渡り廊下も既に野球部に占拠されていたので、仕方なく僕の部長権限で部活は中止にして解散となりました。
せっかくウェアに着替えて集合したのに残念でしたが、他にがっかりしている部員はいなくて、みんな「やったー」ってあからさまに喜んでました。そういうゆるい部活なんです。
僕は部室で、後輩が親戚から大量に送られてきたとかでおすそ分けに持ってきてくれたサクランボを食べながら、ひとり居残って日誌を書くと、それから着替えて部室を後にしました。
雨の降る中、グラウンド隅にある部室長屋から、傘差して自転車置き場に向かって歩いていると、後ろから「ケイ!」と聞き覚えのある声がしました。
僕は圭人(ケイト)という名前の響きが女の子みたいですごく嫌で、子供の頃から周りの友達には名字で呼んでもらっていたんですが、そいつは僕のことをケイって呼ぶのですぐに分かりました。
続けて「ケイ、待って!」と声がするので、仕方なく立ち止まって振り返ると、マサキ(仮)が部室長屋から傘を差さずに走ってくるところでした。
マサキは1年の2学期に転校してきたのですが、ちょっと小柄だけど運動神経バツグンの(その分、勉強はあんまりだけど)サッカー少年で、性格も明るく陽気でめちゃ爽やかな、まるでマンガの主人公みたいな奴で、基本誰にも優しいし、だからすぐにクラスにも馴染んで打ち解けていました。
というか、もう2年になる頃には学校でも人気者になっていて、バレンタインとかすごかったみたいです。
それというのも性格の良さもあるけれど、やはり見た目の良さにあるんだろうと思われます。
顔は小っちゃいくせに目はクリクリと大きくて、まつげが長く、アヒル口(本人はすごいコンプレックスだったみたいですが)で、アイドルみたいなんです。
さらさらの髪の毛も色素が薄いみたいで少し栗色がかっていて、「ハーフって言われても信じちゃいそうな感じ」とクラスの女子から言わせると欠点を挙げるのが難しいような存在なんです。
僕から言わせてもらえればいくつもあって、一つ挙げるとすれば、調子に乗り過ぎてすぐ羽目を外してしまうところでしょうか。そうなると歯止めが効かなくて、行くところまで行っちゃうという厄介者。
でもみんなアイドルみたいなマサキのやることには甘くて、大抵は大目に見られていました。
それが僕にはまた少し腹立たしくて、よく叱っていました。
というのもマサキは、授業中よく寝てるし、休み時間にサッカーに夢中になって授業に平気で遅れるし、忘れ物は多いしで、学生としてはかなり欠点が多いはずなのに「しょうがねえな、もうするなよ」くらいでいつも許されていて、1年の時、僕はクラス委員だったこともあって、そんなマサキを注意する係みたいになっていたから、ついそれ以降も叱ってしまうんです。
あと、クラスで一人だけ特別扱いされてるみたいな雰囲気が嫌いだったこともあると思います。
いや、やっかみとかでは決してなくてです。
僕にも小学校時代に周りからちやほやされた時期があって、その雰囲気がいかに不健全なものか身をもって体験していたので。
結局そのうちブームが過ぎて、やっかみから孤立しかかった僕は人と接するのが怖くなって、人と一定の距離をとることを覚えました。
もちろんマサキがそうなるってことはまずないと思うけど、みんなでちやほやするのはやっぱり変だし、マサキにはなんでか叱りやすかったので叱ってばかりいました。
で、そうなると叱られる方は叱る方をうっとうしいと思って敬遠するものだと思ったんですけれどそうはならなくて、なぜか妙に仲良くなりました。本人も一人だけ特別扱いみたいな雰囲気が嫌いだったみたいです。
1年の時、授業中にお菓子を隠れて食べている人たちが学校一の鬼教師に見つかって怒られているところ、マサキは運良く見つからなかっただけなのですが、手を挙げて「僕も食べました」と名乗り出たことがありました。
すると、いつもなら授業が終るまで長々と説教が続くうえ、その後で呼び出して更に説教するのに、明らかに先生の怒るテンションが下がって、名乗り出るのは偉いとかなんだかうやむやな感じで説教も終ってしまいました。
授業後、共犯の生徒から「助かったよ」と感謝される中をすり抜け、僕のそばまで来たマサキは「エラい?」って自慢げに聞いてきたので、僕はホントは名乗り出るなんて偉いなあと感心していたんですが「バカ、授業中にお菓子なんか食べちゃダメだろ!」と叱りました。すると、なんだか嬉しそうに「だよなあ」と頭を掻いていました。それから「ごめん」って。
そのことから考えると、マサキはマサキでちゃんと叱ってくれる人を欲していたのかもしれません。
マサキを叱るのは僕の役目になりました。
だから雨の中を傘を差さずに走って来るマサキにも叱ります。
「なんで傘差さないんだよ。風邪ひくぞ!」
だけどマサキはニコニコ顔で僕の傘に飛び込んできます。
「傘置いてきちった、入れて」
このニコニコ顔で大半の人が負けます。僕も半分負けます。
「陸上部も部活休み? 帰るんだろ? 一緒に帰ろうぜ」
もう傘の中に身体をねじ込んで来ているので追い出す訳にもいかず、だけど雨なのに傘を置いてくるってありえないだろうと叱りたくなるんです。
「部室にあるだろ置き傘くらい。雨すごいから、これじゃ濡れちゃうよ」
「平気だよ、くっつけば濡れないって」
とマサキは身体を寄せてきます。お互いに半袖のシャツだったので、マサキの雨に濡れた腕が僕の腕にベタっと触れてドキッとしました。
「くっつくなよー!」
僕はめったに出さない大声を出してしまい自分でもびっくりしてしまいました。
「もーベタベタするし、出てってくれよ」
それでもマサキは全くひるむことなく更に身体を寄せてくると、僕の手の上から傘の柄を掴んできました。

マサキは全くひるむことなく更に身体を寄せてくると、僕の手の上から傘の柄を掴んできました。

「手、握んなよー!」
僕はまた大きな声を出してしまいました。
「照れんなよ。同じ名字の仲じゃん」
マサキはお構い無しです。

マサキとは同じ名字で、それはもちろんたまたま偶然でしかないのですが、というか世間一般ありきたりな名字なんです。
世の中に何千万人いるんだってくらいポピュラーな名字です。

でも1年の時、マサキが転校してくるまでクラスには同じ名字の子はいなくて、だからケイトって呼ばれるのが嫌だった僕には好都合で名字で呼んでもらっていたんです。
だけど、マサキが現れてどうするってことになって、僕は今まで通りに名字で呼んでもらい、マサキはマサキって名前で呼んだらいいんじゃないかって提案したんです。
みんなそれで納得したんですけどマサキ本人だけが納得しなくて。
「自分で自分の名前呼んでるみたいで気持ちワルいからケイトって呼ぶ」と言ってきたんです。
確かにその理屈もわからなくもないけれど、それよりも名前で呼ばれることが嫌だったので反論しました。
僕の目からは殺人光線が出ていたらしく、クラスのみんなはどうなることかとハラハラだったそうです。
「名前で呼ばれるの嫌なんだ」と言う僕に、
「どうして?」とマサキはまっすぐに疑問をぶつけてきました。
僕は正直に「ケイトって女の子の名前みたいで嫌なんだよ」って伝えると、
「そうか?」とあっけないほど軽く言われて、
「そうなの!」と僕が声を荒げると、そこでマサキは少し考えて、
「だったらケイって呼ぶよ」と言ってきました。僕は即、却下です。

「やだ」
「じゃあ、ケイやんは?」
「はあ?」
「ケイっち、ケイどん、ケイちゃん」
「ありえない」
「じゃあさ、頭文字とってKは?」
「それ変わらないじゃん!」
「いいじゃんケイで。呼ぶの俺だけだったら、いいだろ?」

マサキはニコニコ顔です。伝家の宝刀です。
まわりのみんなも笑ってます。
僕は半分負けます。仕方なく提案を受け入れます。
「…うーん、分かったよ。なら呼んでもいいよ。ただ、頭文字のKな」
「それ変わらないじゃん!」ってマサキは笑いました。みんなも笑いました。
僕もつられて笑ってしまいました。
狭い傘の中での押しあいは続きました。
お互いに押し出されるたび、肩が雨で濡れていきます。
マサキは依然粘って、二人の共通項を並べて仲間意識を主張してきます。

「3年間同じクラスの仲じゃんか!」

確かに3年間同じクラスでした。
マサキはなにかとそのことを口にします。
5クラスある中で3年間同じクラスになる確率がどの程度のものなのか僕にはよく分かりませんが、マサキは2年になった時も3年になった時も喜んでいました。
2年から3年はクラス替えないのにです。

「同じ部長の仲じゃんか!」

僕は陸上部、マサキはサッカー部の部長でした。
こんなのが部長でホントにサッカー部は大丈夫なのかと心配にもなるんだけれど、持ち前の人気と、サッカーに関しては誰よりも真剣で意外と努力家なんだと他の部員から耳にしました。
それにめちゃくちゃうまいんだそうです。高校も推薦で強豪校に行くんじゃないかという噂です。

「同じチャイロの飼い主だろ?」

部室長屋に時々ふらりとやってきてはみんなに可愛がられている野良猫の名前です。
みんな好き勝手な名前を付けて呼んでいて、ノラとか、ミーとか、ノリカとか(これは野球部の奴が好きな子の名前を付けたらしい)何十通りかあるんですが、僕は茶色いからチャイロって呼んでいて、そしたらマサキもチャイロって呼んでることが発覚して二人で驚いたっていうことなんです。

「スピッツ好きな仲だろ?」
二人共「チェリー」って歌が好きで、一緒にクラスの仲間とカラオケに行った時に、マイクの取り合いになったことがありました。
マサキは歌もめちゃくちゃうまくて、なんかムカついてそれ以来一緒には行ってません。

そんなふうに共通項を挙げ連ねながら押し合っているうちに、自転車置き場まであと少しという距離まで来てしまいました。
いつも一緒にいるとマサキのペースに飲まれてしまいます。

マサキは共通項を思いつかなくなったのか静かになりました。
そこで気を抜いた僕がバカでした。
マサキは傘を差す僕の方をちらちら見上げてきます。
そこで不審がるべきでした。
マサキは突然、僕の傘を差している手を掴んで下から持ち上げたんです。
僕は思い切り片手でバンザイするみたいになって傘が高く持ち上がります。
「脇チェック!」
とマサキは得意顔で僕のシャツの開いた袖口から脇の下を覗き込んできました。
やられた! と僕は途端に悔しくなりました。

マサキは、半袖のYシャツやTシャツを着ている時に、油断していると脇を覗き込むというゲームを発明しました。
どうしようもないアホなゲームなんですが、これがやられるとものすごく悔しくて、覗かれないように阻止するのに必死になってしまうんです。まんまとマサキのペースにはめられてるわけですが。

「よし、まだ脇毛生えてないな」
マサキはほっとした顔でにんまりしています。
僕は腕を降ろしながら呆れてマサキを睨みつけます。
「変態、やめろよ」
「まだまだ脇が甘いな。油断がある」
マサキはケラケラ笑います。
「フツー脇なんて覗かれないから、そうそう身構えてられないっての。てか3年なんだからそろそろ辞めたら? 他の奴とかなんも言わんの?」
「俺、他の奴にはやらないし。ケイだけだから、するの」
僕はかなりの人間がこのゲームの犠牲になっているものと思っていたので驚いて、信じられない気分になりました。
「なにそれ? え、そうなの? 知らなかった…僕だけ? 心外だ」
マサキはケラケラ笑って「いやケイには負けらんないからね」と言いました。
それから自分の腕を持ち上げて、ツルツルの脇の下を見せつけると宣言しました。
「わるいけど、俺たぶんもうすぐ生えるよ」
なんだそれって思いましたけど、マサキにはなにやら秘策があるようで不敵な笑みを浮かべていました。

このやりとりには理由があって、二人して中3になってもまだ脇毛が生えていなくて、どちらが先に生えるかとマサキだけが競争心にめらめらと火をつけていたんです。
それというのも4月のことです。
マサキが深刻な顔をして僕のところにやってきて言ったんです。

「大変な事実が分かった。」
「何?」
「運動部の部長で、まだ脇に毛が生えてないの、俺とケイだけだ」
僕はそれを聴いた時、冗談を言ってるのかと思いましたがマサキはいたって本気で、
「これは部長の威厳にかかわる重大な問題だ」と言ってのけました。

どうやって調査したのかはバカらしくて聴きませんでしたが、おそらく身体測定の時にでもチェックしていたのでしょう。
マサキも僕も体毛が薄くて、腕も足もひげもちっとも生えてないくらいなので、脇もたぶん時間かかるんじゃないかと思っていて、僕は別にそのうち生えてくるよと気楽なものでしたが、マサキは変なことにこだわるたちなんです。
マサキは「いや、夏までにはなんとかしなくては部長の威厳が」と言って僕に勝負を持ちかけてきました。
夏にはプールの授業があるんですよね。
僕が「文化部はどうなんだよ?」と聴くと、
それには「ケイはデリカシーがないんだな。女子にそんなこと確認出来るかよ。だけど宮尾君はすごかった」と物知り顔です。
確かに文化部の部長は女子ばかりで、唯一男子で部長の宮尾君は化学部で、毛深すぎてあだ名が原人になったくらいの人です。
あれは実験中の事故で毛深くなったんだなんていう根も葉もない噂があるくらいです。
いやまさか、マサキは宮尾君から変な薬でも手に入れたんじゃないだろうなと僕は勘ぐりました。
「勝ったら何してもらおうかな。ホントに何でも言うこと聞かなきゃダメだからな」
マサキは雨に濡れたズボンの裾を捲り上げながら皮算用をしています。
僕は立ち止まって終るまで待ってやります。
いつそんな約束したのか覚えていないのですが、どうもそういう約束みたいです。
きっと僕も甘く考えていたんだと思います。
こういうことは背の高いほうが成長ホルモン的に有利に決まっていますから。
「今回は勝つよ。これ以上ケイに負けられないからな」
マサキは僕を見上げて笑います。
マサキは僕にどれだけ負けてると思ってるんだろうと思いました。
僕のほうこそマサキにはかなわないことだらけなのに。
僕が自信をもってマサキに勝てると言えるのは、学力と身長とまつ毛の長さだけです。

マサキは勉強不足というかサッカーしか頭にないような奴なので、学力は縮まることはあっても追い越されることはまずないはずでした。
身長も4月の時点で僕が170センチでマサキが自己申告では161センチだけど、身体測定の結果は160•4センチでした。
マサキはこういう小さいところでサバをよみます。
まつ毛はマサキに言われて気がついたのですが、比べてみようと無理矢理抜かれて、僕もお返しに抜いてやり、比べたら僅差で僕のが長かったというわけで、この3つがいまのところ僕が勝てるものなんです。

歩き始めるとマサキがまた変な顔をして僕を見ています。
自転車置き場まではあと数メートルのところまで来ていました。
雨の自転車置き場は誰もいなくて閑散としています。
僕は身構えて「なんだよ?」と訊ねました。
するとマサキは少し困ったような表情で、それから僕の首もとに顔を寄せます。
「ケイ、なんかいい匂いするな」
僕はドキリとして身を引きました。
「え、なんだよ突然」
「なんだろ? 甘酸っぱい、いい匂い。フルーツ系かな」
それで僕は思い出して、シャツの襟元を覗き見ます。
「さっきサクランボ食べたんだよ。それかな? 汁こぼしたかも」
「サクランボか!」
「うん。後輩に貰ったんだ。1パックまるまる夢中で食べたから」
「俺のは?」
「ないよ」
「なんだ」
「食べたかった?」
「ううん、いい。ケイ、サクランボ好きなんだ」
「うん。好きだね」
「ケイはサクランボか」
マサキはにやにや笑います。
「うん。マサキは?」
「俺? そうだよ。早く卒業できるといいよな」
と訳がわかりません。
「何言ってんの?」と僕が言うと、マサキはにたにた笑って僕を見ます。
「ケイからチェリーの匂いがする。チェリーだからか?」
と、そこで僕もようやく言わんとすることが分かりました。
全くのアホですよマサキはホント。
英語力をそんなことにしか活かせないなんて不憫でなりません。
僕はため息を吐いてマサキを睨みます。
マサキはケラケラ笑って、自転車置き場のトタン屋根の下まで走って行きました。
事実なので別に構わないんですけどね、童貞と言われても。
ただ、それであんなに喜んでおもしろがれるマサキが分かりません。
僕はゆっくり歩いて自分の自転車が置いてある場所まで向かうと、マサキがちゃっかり僕の自転車のサドルに腰掛けて待っていました。
「ごめん、調子に乗り過ぎた。怒ってる?」
マサキはしおらしくうつむいて、上目遣いに僕を見ました。
マサキはずるい。そんなふうにされたら誰だって許しちゃうんだろうなって思いました。
「怒ってるよ。誰かさんのおかげで肩がびしょ濡れだ」
僕はリュックを背中から降ろしてカゴに放りこむと、中からタオルを取り出して濡れた肩と腕を拭きました。
「ごめん。でもさ、そんなに気にすることないって。俺もだからさ。いざとなったら二人でナンパでもしに行こうぜ。俺たちゴールデンコンビになれると思う」
マサキは僕が童貞をからかわれたことを怒っているのだと思っているようでした。
「なんの話だよ? 一人で行けば?」
「え。なんで、興味ないの?」
「うん。そういうの向いてないから」
自分から知らない人に声を掛けるなんてとてもじゃないけど僕には出来そうもありません。
「そっか。もったいねえの。ケイかっこいいのに」
「よく言うよ。自分こそ」

マサキには信じられないことに彼女がいませんでした。
作る気さえあればいくらだって出来ただろうに、どうも本人にその気がないみたいで、というのもなによりもサッカー命だったので、女の子に費やす時間がなかったようです。
それと、これは想像ですけど、誰か一人に愛されるよりも、みんなに愛されたいと思っていたんじゃないでしょうか。
マサキの言動を見ていて僕は勝手にそう思っていました。

「でも変な女に捕まるくらいなら、俺がもらってやるからな、言えよ」
とマサキは少し真面目な顔をして言います。

マサキは時々、真面目な顔で変なことを言い出すので返答に困ります。
この時の僕は、セックスの知識が教科書レベルだったので、男女間のそれでさえおぼつかないのに、男同士のセックスなんて想像すら出来なくて、もらってやるというのが僕の童貞を指している皮肉なジョークだってことに気付きもしていませんでした。

「何を? もらってやるって偉そうな。マサキにくれてやれるような物は持ってないよ」
僕は拭き終わったタオルを投げてやります。
掴み損ねたタオルがマサキの顔にぶつかりました。
マサキはそのままタオルに顔を埋めてごしごし拭いています。

「ケイの匂いする」
「あ、臭う? ワルい、汗臭かった?」
僕は悪いと思ってタオルを返してもらおうかと手を伸ばしました。
けれどマサキはタオルを自分の胸のほうにグイと引いて取られないようにします。
「いや、平気平気。ありがと」
とマサキは腕とか肩とかは適当に拭くと、また顔を拭いて返してきました。
僕はタオルをリュックに戻して、マサキからカバンを受け取るとカゴに入れ、上からビニールを被せました。
「こんな雨でもチャリンコなんだな」
と、いまさらマサキが感心したように言います。
「うん。雨でも風でもチャリンコだよ」
「親、共働きだっけ?」
「いや」
「送ってもらわないんだ?」
「送ってもらわなきゃ通えないような子供じゃないだろ?」

送ってもらおうと思えば僕は母親に送ってくれと言うこともできたけれど、その頃母は祖母の介護で大変だったから、なるべく負担はかけたくありませんでした。
一方、マサキのところは母子家庭だったので、やはり負担をかけたくなくて送ってくれと言うことが出来なかったと思います。

「だな」
マサキはニッコリ笑います。
「マサキは歩き?」
「ああ、さすがに雨だと歩きだよ」
「近いからいいよ。家はチャリじゃなきゃ、さすがにキビシいから」
マサキの家は自転車で15分、歩いても30分くらいの場所で、僕の家は自転車でも1時間くらいかかるので、歩いたらどれくらい掛かるのか分かったものじゃありません。
「傘持つよ」
とマサキが言うので、僕はマサキに傘を預けて自転車を動かします。
「時間あるだろ? 家寄ってけよ」
二人で歩き始めるとマサキが言います。
「うーん…」
僕の曖昧な返事にマサキの傘が揺れます。
「なんだよ、予定あるの?」
「ちゃんと傘差してくれる?」
「予定あるのかよ?」
マサキは口を尖らせ、まるで子供です。
「別にないけどさ、雨で濡れて気持ちワルいから早く帰って着替えたいんだよね」
「着替えくらい貸すよ。寄ってけよ。たまには二人で思う存分語り合おうぜ」
とマサキは傘を振り回します。

なんだかテンションの高いマサキを見ていると心配というか不安が襲ってきて、やっぱり寄るのよそうかなとも思いましたが、どちらにしろマサキの家は僕の家へ帰る途中にあるので、もし気が変わったら寄らずに帰ればいいかとも思って、ひとまず寄ることにしておきました。

歩きながら喋って思ったことは、やっぱりマサキと喋るのは楽しいということでした。
普段学校ではたいてい他にも人がいるので、二人きりで喋るのは本当に久し振りのことでした。
マサキには気を遣うことも、愛想笑いをすることも必要ないので、とても気が楽で、いつまでもずっとこのまま喋っていたいと思いました。
チェリー5でマサキの身長ですが、文字化けしちゃいました。
本人は161センチだと言い張りますが、間違いなく中三の4月のマサキは160.4センチでした。

もう少しでエッチな展開になりますのですみません。

マサキもずっとテンションが高いままでしゃべり続けていました。
ただ一つ、僕の失敗はマサキに傘を持たせたことでした。
マサキは話すのに夢中になってくると、傘を持つ手が揺れて全く役にたちません。
帰り道を半分まで来た頃には、二人共全身ずぶ濡れです。
シャツが肌に貼り付いて気持ちワルくて仕方ありませんでした。
おまけに時々すれ違う人に、じろじろ見られます。
そりゃ傘差してるのに、ずぶ濡れの人を見たらじろじろ見たくもなりますよ。なんのための傘なんだと。
「すれ違う人の視線がイタい」と僕がこぼすと、マサキは困ったような顔して嘆息を吐きました。

「ケイってさ、少し自覚が足りないよね」
「はあ? どういうこと?」
「ケイはさ、人の目を惹きつけるような男だってことだよ」
と、そこでマサキは僕を見て大声を上げました。
「ああ!」
僕はびっくりしてマサキを凝視します。
「なに??」
「お前! 乳首、透けてるじゃんか! バカ! そんなの人に見せるなよ!」
とマサキは怒鳴ります。
そんなの怒鳴ることか?と思いました。
バカってなんだよと。
誰のせいでそうなったんだとマサキを見ると、マサキだって濡れたシャツが肌に貼り付いて乳首が透けて見えてます。
「マサキだって透けてるじゃん!」
と僕は腹が立ったのも忘れて、思わず吹き出してしまいました。
「俺のことはいいんだよ。ちゃんとそれ、隠せよ!」
マサキは指を指しながらも目が泳いでいます。
僕はマサキがうるさいので、面倒くさいなと思いながら言われた通りシャツを肌から引きはがして透けないようにしました。
「だいたいケイはさ、自覚なさすぎなんだよ」
とまた困ったような顔をします。
「ケイは自分のこと、過小評価しすぎ」
「うわ、マサキが難しい言葉遣った」
「茶化さない!」
マサキが僕のほうをじっと見つめるから、僕も見つめ返しました。
マサキの真剣な眼差しに思わず見とれてドキドキしてしまいます。
真面目な顔した時のマサキは文句のつけようがありません。
僕が内心動揺していると、マサキの方が先に視線を逸らしてくれたので、ほっとしました。
マサキは困ったような真剣な顔をして真っ直ぐ前を見ています。

「ケイはさ、なんだか最近色気が出てきた」
とマサキがまた変なことを言うので、僕は拍子抜けしてしまいました。
「はい?」
「マジでさ。もともとケイは綺麗だけど、そこに色気が加わったように思う」
「なんか全く嬉しくないんだけど、なんでかな?」
僕は綺麗な顔だと言われることが前から時々あって、でもそれはケイトって呼ばれるのと同じように好きじゃありませんでした。
「なんでだよ? 褒めてるんだぜ? ケイはまだ自分の魅力に気付いてないんだよ。色っぽいよケイは。セクシーだ。特に今日のケイは色っぽい。雨だからかな? 雨の日のケイは色っぽい」

僕はなんだか言われれば言われるほど、こそばゆく、恥ずかしくなっていきました。
それと同時に笑いがこみ上げてきて、セクシーと言われた時には吹き出しそうになりましたが、マサキが真面目な顔で話しているので堪えました。
不思議なことに色っぽいと言われることに意外にも嫌悪感は湧きませんでした。
マサキは口をつぐんで、遠くを見ていました。
僕が横顔を見つめても、すっと前だけを見て黙って歩いていました。
僕もマサキと同じように前だけ見て、黙って歩くことにしました。
しばらくの間、二人で黙々と雨の中を歩きました。

しばらくして、マサキがぽつりと言いました。
「俺、変かな?」
「うん。いつもでしょ?」
僕は迷わず答えます。
マサキは困ったようなほっとしたような顔で「だよなー」と笑って言いました。
「って、おいっ!」
マサキは僕の肩を軽く叩きます。
二人で顔を見合って笑いました。
それからはまた、果てしなく続いていくような、楽しいお喋りをしながらマサキの家まで歩きました。
マサキの家は暗くひっそりとしていました。
家に着くと、鍵を開けて先にマサキは家の中へと消えていきました。
僕は玄関の外の軒下で、二人のカバンを持って立っていました。
ドタドタと走り回るマサキの足音と共に、家のあちこちの灯りがつきます。
しばらくしてマサキが玄関に姿を現すとバスタオルを投げてよこしました。
「何立ってんだよ? あがれよ。シャワー浴びるだろ? 着替えだしとくから、どうぞお先に」
僕はずぶ濡れで気持ちワルいし、少し寒かったので、そうさせてもらうことにして、靴下だけ先に脱ぐと足を拭いて家に上がりました。

マサキの家には前に何度か来たことがあったのですが、シャワーは借りたことがなかったので案内してもらい、使い方も教えてもらいました。
一通り説明が終ると、マサキは僕のための着替えを捜しに脱衣所兼洗面所から出て行きました。

マサキはまだ濡れたままの格好でいたので、なんだかワルいなと思いながらシャツを脱ぐと、濡れたシャツをどうしたらいいものか迷ったんですが、とりあえず洗面台に載せて、それからズボンを脱ぎました。
もうトランクスまでびしょびしょになっていました。
辟易しながら僕は、さっさと脱いでシャワーを浴びようとトランクスに手をかけました。
その時です、マサキが何食わぬ顔で戸を開けました。
「わっ」
僕は思わず声をあげてしまいました。
脱ぎかけたトランクスをすぐに上げました。
間一髪見られなかったと思います。
さすがにあそこを見られるのは恥ずかしいので、ドキドキしてしまいました。
マサキは平然としているように見えました。
一応ワルいと思ったのか、一瞬の間の後で「ごめん」と謝ってから、
「濡れたの乾かしとくから、乾燥機の中に入れといて」と言いました。
僕は「うん」としか言えずにじっとしていると、マサキはそのまましばらく僕を見たままで出て行こうとしません。
「…何?」
と聞くと、マサキはくすっと笑って、
「透けてる」
と言って出て行きました。

僕は頭に血が上るのがわかりました。
寒かったはずなのに、顔が火照って熱いくらいでした。
トランクスを見下ろして分かったんです。
シャツと同じで、トランクスも濡れて肌に貼り付き、あそこが透けて見えていたんです。
白ベースに薄い水色のチェック柄だったので、それはかなりはっきりと見えていました。
僕はしばらく呆然としていましたが、別に見られるのくらい部活の着替えでも慣れていることで、別に恥ずかしがることないじゃないかと思って、気を取り直してトランクスを一気に脱ぐとシャワーを浴びました。
暖かいシャワーを浴びながら、今日の僕はなんだか変だと考えていました。
どうしてマサキにドキドキするんだろう。
裸くらい見られるのだって別に大したことじゃないのに、あんなに恥ずかしく思うなんて。
マサキじゃないけど、少し変なんじゃないだろうかと自分が心配になりました。
暖かいシャワーにのぼせたのか頭がぼーっとしてきて、あんまりイロイロ考えるとおかしくなりそうだったので、まだ濡れたままでいるマサキに代わってあげることにして、シャワーを終えました。

シャワーから上がって洗面所で身体を拭いていると、マサキが今度はノックをしてから戸を開けました。
どうってことないって思ったはずなのに途端に恥ずかしくなって、戸が開く瞬間に僕は咄嗟にタオルを腰に巻きました。
それから、なるべく平気な顔をしてマサキを迎え入れました。
「おう、お先。ありがと。おかげでさっぱりしたよ」
マサキは上半身裸でタオルを首にかけ、片手に脱いだシャツを丸め、片手に着替えを持って入ってきました。
僕は綺麗な小麦色の肌と割れた腹筋に目を奪われました。
「気持ちよかったか? これ、着替え。ちゃんと洗濯してあるやつだから。抵抗あったらタオルのままでもいいし。好きにしろよ」
と、マサキはいつものマサキな感じでにっこり笑います。
僕はありがたく着替えを受取りました。
「ありがと」
「じゃあ、俺も浴びちゃうわ。着替えたら、俺の部屋行っててよ」
マサキは言いながら僕の目の前で堂々とズボンを脱ぐと、そのままためらいもなくトランクスも脱いで全裸になりました。
僕はその間、一歩も動けず、まじまじとマサキの身体を見つめてしまいました。
平静を保てていたか自分ではもう分かりません。

マサキの身体は小麦色なのに股間の辺りだけが白くて、毛は僕と同じで根元にちょっと生えてるくらいでしたが、あそこは僕のよりも大きくて、しかも形が僕のとは違って、綺麗なピンク色の先端が剥き出しになっていました。
それは前に見たことのある父親のものともなんだか違っていて、父親のと比べたら小さいし色もピンクで、ちょうど子供と大人の間くらいな印象を受けました。
全裸になったマサキは、茫然としている僕を見て「じゃあ、あとでな」とニッコリ笑って悠然とシャワーを浴びに行ってしまいました。
僕はぼけっとマサキの後ろ姿を見送りました。
やはり、おしりだけが白くてとても綺麗でした。

しばらくドキドキが収まらず、シャワーの音が聞こえてからだいぶたって、ようやく着替え始めることが出来ました。
マサキが用意してくれたのは、ナイキの白いTシャツと青いジャージのハーフパンツ。
それとピンクと白のギンガムチェックのトランクスでした。
僕はこれ、マサキがいつも履いてるのかと思うとまたドキドキが襲ってきて、しばらくトランクスと睨み合っていましたが、早くしないとマサキが上がってきちゃうと思って、トランクスに足を通しました。
Tシャツとハーフパンツも身につけると、シャワーを浴びているマサキに「部屋行ってるよ!」と声を掛けて洗面所を後にしました。
マサキの部屋は廊下の突き当たりにありました。
6畳の和室で、部屋の中には勉強机とMDコンポしかなくてシンプルというか、殺風景というか、物が無くてスッキリしています。
部屋の隅にサッカーボールが一つ転がっていて、壁にはマサキの好きな外国のサッカー選手のポスターが貼ってあり、うちの学校のユニフォームがハンガーにぶら下げてあります。
それから、勉強机の脇の壁にコルクボードがあって、たくさんの写真が、人だけ切り抜いたりして綺麗に貼って飾ってあります。
僕のも何枚かありました。
マサキは決まってカメラ目線で、たいていダブルピースでしたが、僕は見事にどこか別の場所を向いていました。僕はカメラ目線がどうも苦手なんです。
写真は中学になってからのものばかりで、ほとんど知っているものでしたが、他にすることもないのでよくよく見ていると、僕の視線の先には必ずマサキの写真があって、僕がマサキを見つめているみたいな構図になっているのに気付きました。
たまたまだとは思いながらも、僕は写真を並べ替えておきました。

ブラインドの下がった窓の外では相変わらず雨が強く降っていました。
マサキは案外綺麗好きで、勉強机の上にも何もなく(勉強している気配もありませんでしたけど)、コンポの下の棚にはMDとCDがしっかりと整理されていました。
脇毛の一件もそうですが、マサキは見た目にこだわるところがあるんです。見える所はキチッとしたいタイプみたいです。
写真を並べ終わったらすることもなくなり、僕はサッカーボールを抱えて畳に寝転がりました。
畳の柔らかい感じがとても心地よく、目を閉じました。

しばらくして音楽が聞こえると思い目を開けると、マサキが部屋にいました。
僕はうとうと眠ってしまったみたいです。
マサキは薄い灰色のトランクス一枚の格好で、タオルを首から掛けて立ったまま水を飲んでいました。
「あ、ごめん。寝ちゃってた?」
「おう。おはよー」
マサキは僕の頭のすぐ横に立って笑顔で見下ろしています。
見上げるとちょうどトランクスの隙間から中が覗けそうな感じで、僕はどうしてもさっきの光景を思い出してしまい、ドキドキして身体を起こしました。
「どんくらい寝てた?」
「ん? ちょっとじゃないかな? 俺、今来たところだから。水飲む?」
「ああ、ありがと」
マサキは飲んでいたペットボトルを僕にくれました。
間接キスってバカげた考えが一瞬頭に浮かびますが、それをすぐに無視して僕はごくごくと飲んでマサキに返します。
部屋にはスピッツの曲が小さめに掛かっていました。
マサキは部屋をうろうろ歩き回りながらタオルで髪をごしごし拭いています。
見ないようにしようと思っても、どうしてもマサキの身体を目で追ってしまいます。
綺麗に割れた腹筋が、頭を拭くのにあわせて動きます。
つるつるの脇の下も他に比べると少し白くてなまめかしく、トランクスから伸びる足はサッカーをやっているわりにはまだ細くて、ふくらはぎがぷっくりふくらんでいるのがなんだか可愛らしく見えました。
そして歩く度に僅かに揺れるトランクスの膨らみに、気がつけば目が吸い寄せられてしまいます。
今日の僕はやっぱりどこか変なんだと思いました。
胸のドキドキが止まりません。それに加えて、おへその下あたりがキューンと締め付けられるような変な感じがします。
僕は畳にあぐらをかいてボールをその上に抱えると、音楽に集中しようと試みました。
「やっぱりスピッツっていいよね」
明るく僕は言いました。
「うん、いいね」
マサキはボリュームを少し上げると、勉強机のイスにどかっと腰を落として、歌い始めました。
僕も一緒になって歌います。
久し振りに聞いたマサキの歌声はやっぱりめちゃくちゃうまくて、ムカつきます。
しかも、微妙にかすれるような感じがすごくカッコいいんです。
だけどマサキはしばらくすると歌うのを止めてしまい、なんだかんだ言いながらも僕は少し残念でした。
マサキはオレンジ色のタンクトップを着ながらニコニコして、歌う僕を眺めていました。
間奏になってマサキが言います。

「前に1回カラオケ行ったよな」
「うん、行った行った。1年時な」
「マイクの奪い合いになったの覚えてる?」
「覚えてるよ。同じ曲入れてたんだよ」
「それでお互い自分の番だと思ってさ」
「あれはひどかった」
「ひどかった?」
「そうだよ。結局マサキが1本しかないマイク独占してさ」
「え?」
「なに今更、驚いてんの?」
「いや、違うだろ?」
「なにが?」
「あれはケイが、途中からマイクなんかいらないって言って、生声で歌い始めたんじゃん」
「はい?」
「俺、驚いたもん。なんかケイ、テンション高いなぁと思って」
「え‥ウソ言ってない?」
「ウソじゃないよ。ケイの生声すげえ綺麗でさ、俺聴きいっちゃったんだよ。他の奴らもみんなそうだったはず。歌本めくるの止めて、みんなじっとして聴いてたからね」
「…あれ? そうだっけ?」
「そうだよ。覚えてない?」
「…うん」
そう言われれば、声を張り上げて歌った記憶もあるような、でもそれはマサキがマイクを離さなかったからで、僕から率先してやった訳じゃ無いはずです。
「ケイ、あれから誘っても全然カラオケ行かないからみんな残念がってたよ。俺もすげえ残念でつまんないから行かなくなっちゃったけど。今日はツイてるな俺。ケイの生声独り占めだ」

にっこりとマサキに見つめられて僕はまた胸がドキドキです。
もう頭も身体も変になりそうなくらい熱く、またおへその下あたりがキューンとなります。
僕はもうマサキの顔を直視出来ませんでした。
僕は陸上部のくせに肌が白くて、夏場はそれなりに焼けるのですが、まだ夏前だったのでぜんぜん白くて、きっとその白い肌が真っ赤になっていたんじゃないかと思います。
「なあ、歌ってよ」
と、マサキは無邪気に催促してきましたが、僕は歌どころじゃありませんでした。
「やだよ」
熱い身体を冷ますのに、もう一度、今度は冷たいシャワーを浴びたい気分でした。
「なんだよ。ケイトは歌が好きだろ? ケイトはマサキの家に遊びに行って、一緒に歌を歌いましたってあったじゃんか」
「それは、英語の教科書だよ」

英語の教科書の例文にケイトと言う名の女の子が出て来るとマサキは喜びました。
「マイクとかナンシーとか言われてもさ、全然イメージ湧かないんだよなぁ。ケイトは実際にいるからイメージしやすくていいよ。例文、全部ケイトにしてくれればいいのにな」
マサキは例文にケイトが登場する度に、いちいち僕に報告してきました。
僕はその度にげんなりです。
「ケイトはリンゴが好きだって」
「ケイトはいつか日本に行きたいらしいぞ」
とか、同じ教科書なんだから知ってるよとツッコミながら聴いていました。
そして3年になって、マサキいわく奇跡が起りました。

例文に、マサアキという名前の日本から来た男の子が登場したんです。
マサアキはサッカーが得意な少年で、英語にするとマサキよりaが1つ多いだけです。
マサキはもちろんマサキだと勘違いして喜びました。
しかも、ケイトがマサアキの家に遊びに行くという例文も出てきたんです。
マサキは喜んで僕に報告にきました。
そこで僕はきちんとaが1つ多い事実を指摘してあげました。
マサキは残念がるかと思いましたが、なかなかたくましく、そのあとマサアキのaを全部修正液で消してマサキにしてました。
油断していた僕の教科書も、いつの間にか同じように消されていました。
マサキは知らん顔してましたけど「他に誰がやるっていうんだよ」と叱りました。

「ケイ、歌ってよ」
マサキはまた子供みたいに口を尖らせます。
「ダーメ」
「いいじゃん、ケチだな」
「ケチじゃないよ。言いがかりはよせよ」
「いいやケイは、けちんぼだ。あ、透けチンポだっけ?」
マサキは自分で言っておいて、その下ネタに「くっくっくっ」と笑います。
「最低だな‥」
絶対、さっき洗面所で見た僕のを思い出して笑っているに違いありません。
僕は、ケラケラ笑いはじめたマサキにサッカーボールを投げつけました。
マサキは見事なヘディングでそのボールを打ち返してきて、僕はキャッチングに失敗して鼻を打ちました。
「ふっふっふっ‥俺にサッカーボールを投げるとは愚かな。知ってるか? こういうの、猫に鰹節って言うんだぞ。俺にサッカーボールと言ってもいいな。ケイにはサクランボだ」

知ってるも何も、今日の授業で先生が言っていたじゃないかと思いました。
マサキは初めて聞いた言葉をすぐに使いたがります。
それもちょくちょく使い方を間違えます。
今回も、好物を近くに置いておくと、油断がならなくて危ないって意味からすると、やっぱり少し使い方間違っているような気がしました。

「あれ? マサキには下ネタじゃなかったっけ?」
僕は鼻を押さえながらマサキを見上げました。
「そうとも言う」
イスに片足載せて胸を張って笑うマサキのトランクスの隙間が目に飛び込んできて、僕は見ないようにしようと思っても、つい覗き見てしまいました。
隙間からはマサキのツルンとした玉がちらりと見えています。
僕はイケナイことをしている気分でドキドキしました。
「あのさ、ケイに耳よりな話があるんだけど聞きたい?」
マサキの股間を盗み見ていた僕は、イタズラがバレた子供みたいに、びくんと背筋を伸ばしました。
マサキは畳に降ろしている足を操って、イスを左右にくるくる回しながら神妙な顔をしています。
「ううん。聞きたくない」
僕は笑顔を作って答えました。
マサキがそう言う時は、たいてい面倒な話の時で、ロクなことがありません。
「まあ、そう言わずに聞けよ」
「聞けよ?」
「聞いて? 聞いて下さい」
マサキの態度の変わりように僕は笑います。
マサキも僕が笑うのを見て笑いました。
「で、なに?」
「うん…ウチの部の1年の奴のことなんだけどさ、ちょっと困ってるんだよ」
マサキは眉をひそめると口を尖らせました。
アヒル口がよりいっそう強調されると微笑ましくて、本人の意思とは裏腹に深刻さが半減しています。

変な話ですが、そんなマサキのアヒル口を僕は見飽きることがなく気に入っていて、眺めていると自然と笑えて幸せな気持ちになれるというか嬉しくなります。
たぶん深刻なこともマサキがアヒル口を尖らせることで、深刻じゃなさそうに見えるからじゃないかと思います。

「ん? 相談なんだ?」
僕は顔をほころばせて訊ねます。
「うん、そうなんだ。それがさ、」
「高いよ、相談料」
「うっわー! 悪徳中学生だ。いけないんだぞー、友達にお金を要求しちゃ」
マサキはそう言いながら畳に降ろしていた足もイスの上にあげて、イスの上で体育座りみたいな格好になりました。
しかも、僕のほうに向かって股を閉じたり開いたりします。

きっと身長が伸びることを期待して大きめのサイズを買ったんじゃないかと思うんですが、(もしくは見栄ですかね)どうもマサキのトランクスはサイズが少し大きいみたいで、そんなことされると隙間からかなり見えちゃいそうで目のやり場に困ります。
そうじゃなくても畳にあぐらをかいている僕の目線の高さにあって、さっきからどうしょうもなく気になって仕方ない僕に、見るなというほうが難しい状況でした。

「ケイがそんな奴だとは、俺は悲しいよ。人の弱みにつけ込んでさ。そういうの漁夫の利って言うんだぞ、悪代官」
マサキは両手でイスの背もたれを支えながら、イスを左右に回して僕を非難します。
股を大きく開いたままでイスを左右に回したりするものだから、マサキのあそこがポロンと零れるようにトランクスの隙間から姿を見せました。
僕はもうマサキのあそこにばかり、目を奪われていました。
股を大きく開いたままでイスを左右に回したりするものだから、マサキのあそこがポロンと零れるようにトランクスの隙間から姿を見せました。
僕はもうマサキのあそこにばかり、目を奪われていました。

「ん? どうした?」
マサキが僕を訝しそうに見ます。
僕はドギマギして、目が泳ぎ、関節がギクシャクして、ぎこちない動きでサッカーボールを投げつけました。
「…悪代官じゃないし。漁夫の利でもないよ、間違ってる」
力の加減もコントロールもめちゃくちゃで、僕の投げたボールは机のへりに跳ね返って戻ってきました。
キャッチングに失敗した僕はまた鼻を打ちました。球技は苦手なんです。
「ひとりでなにしてんだよ?」
鼻を押さえる僕を愉快そうに眺めてマサキは笑います。
「ほら、ケイが悪だくみするから、バチが当ったんだぞ。ケイバツだ」
ちらっと見ると、マサキのあそこがまだ見えていて、僕は動揺してしまいました。
見ないようにしようと思っても、目はあそこに釘付けです。
確かにマサキのあそこを盗み見ている僕へのバツかもしれません。

「そんなじゃないよ…」
僕は涙目になりながら鼻を押さえて、弱々しい声しか出せませんでした。
笑っていたマサキは、そんな僕の様子が心配になったみたいで、笑うのを止めると僕の顔を覗きこんできました。
「平気か?」
マサキはようやく両足をイスの上から降ろすと、身を乗り出して僕の方に顔を寄せます。
「うん、平気だよ…」
「見してみ」
「いいよ」
「いいから、見してみって」
マサキはイスから立ち上がって、僕の目の前にしゃがむと、両手で僕の手を強引にどかしてまじまじと僕の鼻を見つめました。
「あんまジロジロ見んなよ」
僕はあまりの至近距離に恥ずかしくなって、キョドキョドしてしまいました。
「動かない」
マサキは片手で僕の顔をぐにっと押さえつけます。
マサキの手が僕の唇に触れました。
僕はマサキの顔を間近にして、心臓がバクバクしました。
顔がだんだん赤くなっていくのが自分で分かります。
「赤くなってるけど大丈夫みたいだな」
マサキは、くすりと笑って僕の鼻の頭をキュッと摘んできました。
僕の鼻はまだジンジン痛くて、摘まれた拍子に僕は「イテっ」と声を漏らしてしまいました。
「泣くなよ」
マサキは、僕のおでこを軽くペシッと叩いて立ち上がりました。
「泣いてないよ」
僕は鼻を押さえながらマサキを睨みました。
「しょうがねえなぁ、ケイが元気の出るもの持ってきてやるよ。ちょっと待ってな」
マサキは痛がる僕を見て、なんか嬉しそうに言うと、僕の頭をくしゃくしゃっと撫でて部屋を出て行きました。

マサキは僕より優位に立つのが嬉しいみたいで、それを隠しているつもりでもすぐ分かります。
「まったくもう…」と思いながらも僕は鼻をそっと擦りながら、一人になることが出来てほっとして息を吐きました。
頭にも、おでこにも、鼻にも、唇にも、マサキの手の感触がまだ残っています。
その全てがじんわりと温かく感じられます。
イスを見ると、さっきまでそこに座っていたマサキの様子が思い出されて、脳裏にマサキのあそこが浮かんできました。
トランクスから見えたマサキのあそこは、さっき洗面所で見た時とは少し違っていて、ピンク色の先端がすっぽりと皮に覆われていて、僕のとほとんど形が変わりませんでした。
仮性包茎っていう言葉は知っていましたが、実際に見るのは初めてだったので、なんだか不思議な気持ちで「ああ…なるほど、あれがそうなのか」とひとりで納得してました。
僕は恥ずかしいですけどその時はまだ包茎で、皮は自然と剥けるものだと思っていたので、マサキの皮が被っていない状態のと、皮を被った状態のとを何度も繰り返し思い出しながら、僕も剥けたらああなるのかなと想像していました。
想像しているうちに僕は、だんだん頭も身体も熱くなってきてしまい「いかんいかん」と思って抱えていたサッカーボールで頭をポンポン叩きました。

「泣く子は、いねか~」
マサキがバカみたいに、なまはげのマネして部屋に戻ってきました。
なんのつもりか、着ているタンクトップを頭の上まで引き上げていて、可愛いおへそが丸見えになっています。
ホントに子供っぽくて呆れていると、マサキが「悪い子は、いねか~」と勢い良く飛びついてきて、そのまま僕は押し倒されてしまいました。
頭の中は真っ白で、何がどうなったのかさっぱりです。
はずみで唯一の武器だったサッカーボールも手から零れて部屋の隅まで転がっていき、反撃することもできません。
「なんだよっ! ちょっと、おい!」
僕が動揺して慌ててもがいているうちに、素早い動きでマサキは身体の上に乗っかり押さえつけて僕をくすぐると、笑って開いた僕の口に何か押し込んできました。
僕は口を押さえつけられて、なんだか訳も分からずに食べさせられました。
なんかすごく屈辱的でした。

「どうだ? 美味しい?」
マサキが僕の上でニコリと笑っています。
僕の口の中には甘いサクランボの味が広がりました。
「もう1個食うか? はい、アーンして」
ニコニコ顔のマサキがサクランボを僕の顔の上でぶらさげます。
くやしいけどその笑顔に負けそうでした。
だけど、僕はマサキの重みを感じながら口の中のサクランボを味わうと、マサキを睨みました。
「重たい。どけよ」
僕はこういうマサキの度を超した行動に、とてもじゃないけどついていけませんでした。
僕は、腹の上に乗っているマサキの柔らかいお尻を思い切りつねってやりました。
マサキは「痛っ!」と僕の上から飛び退くと、お尻を押さえながら部屋の入口まで逃げていきました。
僕はゆっくり身体を起こすと、マサキを見ました。
マサキは入口から恨めしそうな顔で僕を見ながら、お尻を擦っています。
「こっち来い」
僕は種を手のひらに吐き出して、マサキに微笑みかけました。
「怒んないから、おいで」
マサキは恐る恐る近くまでやってきました。
よっぽど痛かったみたいで、まだお尻を擦っていました。
「ここ、座りな」
僕はなるべく優しく言いながら目の前の畳を指します。
「ごめん…」
マサキは言われたままに畳に正座して、捨てられた子犬みたいな顔で僕を見てきました。
そんな顔で見るなよと僕は思いました。
「…また調子乗り過ぎちった」
「どうして普通に出来ないかな。普通に持ってきてさ、普通に食べさせてくれたらいいのに」
僕は嘆息を吐きました。
「あ、どうぞ」
マサキはサクランボの入ったパックを僕の方に押して勧めてきました。
「あ、ありがと」
僕はサクランボに手を伸ばします。
「…美味しい?」
「うん」
「それ、ホントは俺の食後のデザートだったんだけどさ、ケイに全部あげるよ」
「うん、ありがと」
僕はもう1つ頬張ります。
「…それ、美味しいだろ?」
「うん、うまいね」
「な。少しずつ食べようと思ってさ、とっておいたんだ」
「そうなんだ」
ホントに美味しくて僕は手が止まりませんでした。
「ホントそれ、うまいよな。高いやつみたいだよ」
「分かった。もう、分かったから。マサキも食べなよ」
僕は笑ってしまいます。
「え、いいの?」
マサキは上目遣いで僕の顔を覗いてきます。
マサキの顔には、ありありと食べたいって書いてあるのが見て分かりました。
「だって、食べたいんだろ?」
「うん…いや、でもケイにあげたから」
「いいよ。早くしないと全部一人で食べちゃうぞ。マサキも食べな」
僕はまた1つ手を伸ばしました。
「あ、そう? じゃあ…」
マサキはいっぺんに4つも5つも掴むと、正座を崩してあぐらをかいて、美味しそうに1つ頬張りました。
「うん、やっぱコレうまいわ」
マサキはホントに惚れ惚れするくらいの会心の笑顔をみせました。
僕もそれを見て、自然と笑みが零れました。
「ケイってさ、サクランボの茎、口の中で結べる? ほら」
マサキは器用に口の中でクチュクチュッと結んだ茎を自慢するみたいに見せてきました。
僕もそんなのはお安い御用で、口の中でクリクリと舌を動かして、結び目を作ってみせてやりました。
僕が結び目を作っているのをニヤニヤ見つめていたマサキは、感心して結び目を眺めました。
「おー、意外だ。ケイも意外にうまいんだな」
「意外は余計だよ」
残り少なくなったサクランボを僕はまた1つ頬張ります。
「いや、ケイは絶対したことないからヘタだと思った」
「勝手に決めつけるなよ。特技と言ってもいいくらいだよ」
「特技かよっ」
マサキはケタケタ笑いました。
「そうだよ」
僕はムキになってもう一度、茎を口の中に放り込んで結び目を作ると、舌の上に乗せてペロリと出して見せてやりました。
さっきよりも速くできたので僕は得意になっていました。
「な、うまいだろ?」
それまで、じっと見ていたマサキは途端に視線を逸らしました。
「なんだよ?」
「いや…それ、自己紹介の時なんかに言わないほうがいいぞ。…あと、俺以外の前ではすんなよ、ヤバいから…」
「はい? ヤバいって?」
「…あ、いや、顔が」
マサキは僕のことをチラチラ見ます。
「え、ウソ。そんな変な顔してた?」
「いやぁ、変じゃなくって…」
マサキはもぞもぞと身体を揺すっていました。
「なんだよ? はっきり言えよ」
「なんつうか…エロい」
「は?」
「ケイのそれ、エロいんだよ」
マサキは困り果てたような顔で言いました。
僕は途端に顔が真っ赤になるのが分かりました。
「バ…バカか! もう、何言ってんだよ、変態! 全部、食べちゃうぞ!」
僕は残りのサクランボに手を伸ばしました。
「ちょっと、ちょっと待てよ、半分こだろ!」
マサキも手を伸ばしてきてサクランボの取り合いになりました。
結果、僕が2つ、マサキが3つという戦績でサクランボは無くなりました。
「言えっていうから言ったのに、言わなきゃよかった…」
とマサキが言うから、僕は叱りました。
「バカ、そういう風に人のこと見てることが間違いなんだよ!」
僕は、マサキの正面に座っていられないくらい恥ずかしくなってきて、立ち上がると窓の側まで行き、外を眺めながらサクランボを頬張りました。
「エロいってなんだよ…エロいのはマサキの頭の中じゃないの?」
僕はぶつくさと窓の外を眺めながら文句を言いました。
「そうなのか? エロいのは俺なのか?」
マサキの自問する声が後ろから聞こえてきました。
「知らないよ」
顔の火照りがなかなか収まらなくて、僕は困って窓の外ばかり見ていました。
雨は弱まることなく降り続けていました。
窓を流れ落ちる雨を眺めていると、マサキがすぐ隣にやってきました。
「止みそうもねえなぁ…」
わずかに腕と腕が触れ合います。
「うん」
僕はドキッとしたけど、窓の外を見続けてました。
「ほら、半分こ」
「え?」
マサキは綺麗に半分食べかけたサクランボを僕の方に差し出しました。
「なに?」
「5コをふたりで割ったら、2コ半だろ?」
マサキが真面目な顔して言うので笑いそうになりました。
「いいよ、食べちゃいなよ」
「いや、こういうのはちゃんとしないと気持ちワルいから」
マサキがぐいとサクランボを押し出してきて、仕方なく僕は受け取りました。
「変なところで律儀だよな」
「そうだよ。俺は律儀なんだよ」
マサキは偉そうに言ってニコッと笑いました。
僕はどうしようかと半分欠けたサクランボを眺めました。
「で、わざわざ半分にしてくれたんだ?」
「そうだよ、ちゃんと半分だろ?」
感心するほどサクランボは見事に半分で、その努力を思うと僕は笑えてきました。
「律儀だなー」
マサキの食べかけを食べるのは照れくさかったんですが、マサキに悪いなと思えて、僕は半分のサクランボを頬張りました。
僕の食べるのを見ていたマサキは、またニコッと嬉しそうに笑いました。
「ケイだけだよ、俺が律儀な男だって分かってくれるのは。みんな俺のこと、いい加減で軽いヤツと思ってるんだもんなぁ…」
みんなの評価は正しいと思いましたけど、マサキは不満そうで、ぶつぶつ文句を言いました。
「知ってる? 俺、ヤリチンってことになってんの。笑っちゃうよ、童貞なのに」
と僕の脇腹を軽くパンチしてきました。
「八つ当たり禁止」
マサキの口からヤリチンとか童貞って言葉を聞くと、僕はどうしてもマサキのあそこを思い出してドキドキしてしまいました。
「ウワサだと俺、今、女子大生と付き合ってるらしいよ」
マサキはへらへら笑っていましたが、すごく寂しそうな顔をしました。

確かにマサキがヤリチンって茶化されてるのは見たことがありました。
それでもマサキはケラケラ笑って軽く否定するくらいでしたから、そんなに嫌だったなんて思いませんでした。
「マサキはいいカッコしいだからな。嫌ならちゃんと怒んなきゃだめだよ」
と僕が言うと、マサキは難しい顔して口を尖らせました。
「だって俺、ケイみたいに人のこと怒るの得意じゃないもん」
「ケンカ売ってる? 僕だって別に得意じゃないんだけど」
僕はそんな風に思われていたのかとちょっとショックでした。
僕が怒るというか叱るのはマサキにだけで、他の人に対してはちゃんと距離を保って、優しく接しているつもりだったんです。

「いやいや、ケイの怒り方は素晴らしいよ。なんて言うか、ケイに怒られると胸がすーっとするんだよな。よく怒られてる俺が言うんだから間違いないよ」
マサキはとても誇らしげでした。
僕は、そんな風に言われてもちっとも嬉しくありませんでしたけど。
「まあ、マサキは怒られる方が得意だもんな」
「そうなんだよ。だから困ってるんだよ」
マサキはまた口を尖らせました。
「なにを困ってるって?」
僕は小憎らしくて、その尖らせた唇を指で摘んでやりました。
マサキの唇は柔らかくぷにぷにしていて、自分でやっておいて内心ドキドキしました。
「さっき言ってた1年のこと?」
僕の問いかけにマサキは頷きました。
「そう、それ」
と、たぶん言ったんだと思いますが、僕が唇を摘んでいるので何を言っているのか分かりません。
マサキの鼻息が指先にかかって、くすぐったくて仕方ありませんでした。
「どんな奴なの? 僕、知ってるかな?」
それにもマサキは頷いたり、首を傾げたりして答えます。
なんか、もごもご言ってましたが、今度は全然分かりませんでした。
無抵抗なのも困りものです。
僕はマサキの唇から手を離して解放してやりました。

「ちんちくりんで、髪を茶色く染めてる奴だよ。俺の後ろをうろちょろ付いてまわってるから見たことあるかも」
マサキは唇を指で確認するように撫でながら喋りました。
「ああ、あの小猿みたいな子か」
そんな1年の子が、マサキを訪ねて教室までやって来たことを思い出しました。
マサキは少し迷惑そうだったのを覚えています。
「そう。その小猿がさ、プレーはずば抜けてうまいんだけどさ、すっげーナマイキなんだよ」
「マサキみたいじゃん」
僕は笑って言いました。
「いや、俺はもっと可愛げがあるから。先輩とも上手くやれてたし。気に入られてたから」

確かにマサキは人に好かれることに関しては天才的です。
カッコ良くてサッカーもうまかったら、先輩からひがまれて、イジメとかありそうなものなのに、そういう話は聞いたことがありませんでした。

「その子はうまくいってないんだ?」
マサキは渋い顔をして頷きました。
「そなんだよ…。自分よりヘタな奴には見向きもしないから。挨拶しなかったり、パス出さなかったり。1年の中でも孤立してるしさ」
「部長が面倒みてやんないの?」
「みてるよ。しかたないから、なるべく目が届くところにいるんだけどさ、ずっとって訳にもいかないだろ? 2年の奴らがシメルって話してるの聞いて、なんとかなだめて止めさせたんだけど、いつ俺の知らないところでそうなるか。けっこうマジでヤバい」
「小猿に態度を改めさせるしかないね。マサキの言うことは聴くんじゃないの? どうせ気に入られてるんだろ?」
そう言うと、意外にもマサキは少し黙り込んでしまいました。
「…そなんだよ。入学する前から俺に憧れてたんだって。俺にまとわりついてさ、なんでも俺のやることマネして鬱陶しいし。朝はなに食べてるのかとか、どんな曲好きかとか、テレビはなに観てるのかとか、何時に寝るのかとか、風呂の入り方とか、スッゲー聞かれて面倒くさい」
マサキはまくしたてるように言いました。
もちろん口を尖らせています。
話を聞いていて、マサキが傘の中で執拗に僕との共通項を並べ立てたのを思い出しました。
「カワイイじゃん」
僕は可笑しくなって笑いました。
「…え。ケイはあんなのがカワイイの?」
マサキの顔色がさっと変わりました。
「なんか、誰かさんと一緒で、手が掛かる奴ほどカワイく思えるもんなんだよ」
僕がマサキをしげしげと眺めながらそう言うと、マサキは怖い目つきで睨んできました。
「だ、誰かさんて誰だよ!」
マサキは怒鳴って、僕の胸を小突いてきました。
僕はびっくりしました。
そんなにヒドいこと言ったとは思わなかったので、心外でした。
「そうやって怒鳴る奴のことだよ」
僕はマサキの胸を指でぐいと突き返してやりました。
「え?」
マサキは間抜けな顔で僕を見てます。
「手が掛かるってのは言い過ぎだったかも知れないけど、でも、怒鳴ることないと思う」
僕はマサキをじっと見ました。
マサキは目がキョロキョロして、あからさまに動揺してました。
「…あ、俺? もしかして、俺のことか…?」
「そうだよ。他に誰がいるんだよ、そんな奴」
僕が呆れているとマサキは大きな瞳をクリクリ動かして、なんだか照れてるみたいでした。
「…バ、バカ! そんなの分かんないだろっ、ちゃんと言ってくれなきゃ!」
マサキは僕を突き飛ばすように押しのけると、部屋の中をオロオロと歩き回っていました。
マサキは同じ所をぐるぐる回ってる犬みたいに部屋をうろついていました。
僕は机のヘリに腰掛けて、そんなマサキを眺めていました。
「なんだよ? どうかした?」
マサキは何かを考えてるふうで、チラチラ僕を見てきました。
「気持ちワルい、なんか言えよ」
そう言うと、ようやくマサキは口を開きました。
「…ケイはさ、その…俺のこと、どう思ってる?」
何を言い出すかと思ったら、ホントに今日のマサキはどうかしてるなと思いました。
僕は噴き出しそうなのを堪えて答えました。
「そうだな…変なヤツ、サッカーバカ、変態、それから、」
「ちょっと待った、待った」
マサキは驚いた顔で僕を見ました。
「そういうんじゃなくて」
「なんだよ、まだあるんだけど」
「そういうんじゃなくてさ、てか、そんな風に思ってんの?」
「あれ、まずかった?」
「あ、いや…うん、なんか、ちょっと…」
マサキはちょっとへこんでる様子で、言い過ぎだったかなと僕は少し反省しました。
「まあでも、良いヤツだよ。マサキは、すっげーいいヤツだと思うよ。元気だし」
「まあ、元気だけど…」
マサキは不満そうでした。
「ほら、好き嫌いなくなんでも食べるし、単純で分かり易いし、元気だし。調子に乗りすぎるとやっかいだけど陽気で明るいし、仲間はずれとかしないし、元気だし。正直者だし、意外と気配りも出来るし、お年寄りと子供に優しいし、ちゃんと敬語も使えるし、元気だし」
僕は思いつくままにマサキのいいところを挙げていきましたが、まだマサキは不満そうでした。
「なんだよ、ホメてんだけど?」
「え? 俺、ホメられてるの?」
マサキはびっくりしたような顔をしていました。
「まだ不満?」
「…うーんと、不満じゃなくてさ。その…友達とか、親友とか、その…なんていうか、好きとか嫌いとかさ、ほら、色々あるじゃんか」
マサキはごにょごにょと歯切れ悪く言いました。
それはいつものマサキとはあきらかに違っていて、やっぱり変でした。
「なんだそれ? …どうした? やっぱ変だぞ。なにかあったんだろ? 話してみ?」
マサキはまた少しびっくりした顔で僕を見ました。
僕は、図星だなと思いました。
「なにがあったん?」
マサキは僕から目を逸らすと、またウロウロと部屋を行ったり来たりしていましたが、少しして僕の隣に来ると、僕に身体を寄せるようにして机のヘリに腰掛け、覚悟を決めたみたいに小さく息を吐いてから話し始めました。

隣にいるマサキの身体がとても熱く感じられました。
僕がマサキを見ると、マサキは一度僕のほうを見ましたが、それから自分の足先に目を落としました。
「実はさ…」
「うん」
僕はなんだかドキドキしてきてしまって、マサキにバレないように唾を飲み込みました。
「今日の放課後、例の小猿に話をしようと思ってさ、部室に残ったんだ」
僕は思っていたのと話の方向が違っていたので、少しほっとしました。
「なんだ。やることやってんだ? 偉いじゃん」
「うーん…そうかな?」
マサキはそこで僕を見ましたが、ホメられたのに嬉しそうな顔じゃありませんでした。
「あんまりうまく言えなくてさ、ふたりきりになったら緊張しちゃって」
「なんて話したん?」
「とりあえず、一緒にサッカーする仲間なんだから、誰とか関係なく挨拶はしたほうがいいんじゃないですかって。そのほうが、みんなと仲良くなれる気がするし、プレーにも影響すると俺は思うんですけど。それに、パス出さないのもよくないと思うんです。相手がミスっても腹を立てないでパスだししなきゃ、いつまでたっても相手が受け取れるようになれないじゃないですか。練習にならないです。サッカーってみんなでするものだから、いくらうまくたって、ひとりじゃ出来ないってことを覚えとかないといけないんじゃないですか」
僕は途中あたりから可笑しくて、ずっと笑うのを堪えていましたが、それでも身体が震えてしまってマサキにバレバレでした。
「笑うなって」
マサキに足を蹴られて、ほっぺたをつねられました。
「気い遣い過ぎだよ、1年に」
「だから得意じゃないんだって」
「マサキはもっと敬語が使えると思ってた」
「悪かったよ」
僕はしばらく笑いが収まりませんでした。
「笑い過ぎだよ」
笑い過ぎて涙目になっている僕を照れくさそうに見て、隣に座っているマサキは身体をドンとぶつけてきました。
「ごめんごめん」
僕はマサキの背中をポンポン叩きながら謝りました。
「でもそんなで、ちゃんと小猿には伝わったのかよ?」
マサキは考え込むみたいに下を向くと、小さく頷いてから首をかしげました。
「…一応『うん、わかった』って」
「そうなんだ」
「『努力してみるよ』って」
「どっちが先輩だっけ?」
「俺」
「大変だな、先輩」
「うん。それで終ればまだ良かったんだけどな…」
マサキはそう言って深いため息を吐くと、机のヘリから立ち上がりました。

「どうかしたのか?」
マサキは僕の正面に向き直って立つと納得いかない顔で言いました。
「…コクられた」
「はい?」
僕は意味が分からなくて聞き返しました。
「好きって言われた。あ、内緒な」
僕は、そう言われても話が理解出来なくて、ぽかんとしてました。
「…冗談だろ?」
「俺もそう思った。いきなりだし、なにふざけてんだよって言ったんだ」
「そしたら?」
「本気だって。ずっと憧れてて、ふたりきりになるチャンスを待ってたんだって。『やっとふたりきりになれた』って言われて、抱きつかれた」
僕は茫然としてしまいました。
「…ウソだろ?」
僕はまだ信じられなくてマサキの表情を窺いました。
「いや、ウソじゃないって」
「僕のこと騙そうとしてない?」
僕は机のヘリから腰を上げてマサキの顔を覗き込みました。
「ほら、鼻の穴が膨らんでんもん。ウソついてんだろ?」
「ついてないよ。俺も、そうやって冗談だろとか言ったんだ。てか、冗談だったら良かったよホント」
マサキは不機嫌そうな顔して言うと、困ったような顔になって僕を見ました。
「いきなりさ、こうやって抱きつかれてさ」
と、マサキはいきなり僕をギュっと抱きしめてきました。
「ちょっ‥おい!」
僕は慌てふためいて、マサキを押して離そうとしましたが、力一杯抱きしめられていて、マサキはびくともしませんでした。
「『好き』って言われてさ」
マサキは僕の首元で構わずにしゃべり続けます。
首すじにマサキの息がかかってゾクゾクしました。
「おいマサキ! 止めろよ、怒るぞ!」
「俺もそう言ったけど『止めない』って言われた」
「分かった。分かったよ。その話信じるから、離してくれよ」
僕は懇願しましたが、抱きしめる力は緩みませんでした。
「やだ、離さない」
僕はドキっとして抵抗する力が抜けました。
「だって、ずっとこうしたかったんだもん」
「…おい、マサキ?」
僕は急に身体中が熱くなるのが分かりました。
心臓がドクンドクンと大きく脈打っていました。
マサキにも伝わってると思うと、それがまた恥ずかしくて顔が火照りました。
「好きなんだ」
マサキのかすれ気味な声でそう言われて、僕はもうなにがなんだか頭の中パニックで、どうしたらいいのかもさっぱり分からず、息だけが荒く、苦しくて立っていられないくらいで、マサキに抱きしめられていなければ倒れてしまいそうでした。
マサキはそれに気付いてか、くすっと笑うと抱きしめる力を緩めて僕の顔を正面から見ました。
「そう言われてさ、俺もようやくコイツ本気なんだと思ってさ。マジでビビったんだ」
マサキの大きな黒い瞳がイタズラそうに、クリクリと動いています。
僕はぽかんと正面にあるマサキの顔を眺めていました。
「…へ?」
マサキの演技に僕はすっかりひとりで勘違いして動揺していたんです。
普通に考えたらマサキが僕に告白するわけがないじゃないかと、僕は自分の間抜けさにがっかりしました。
それでも僕の心臓はバクバクし続けて、少しの間、立ち直れないままでいました。

「だから俺、真剣に『ワルいけど、お前の気持ちには応えられない』って断ったんだ」
マサキは僕の両肩に手を置いて、そんな僕を置き去りにして話を続けました。
「‥そ、そっか。そうだったんだ」
僕は落ち着きを取り戻そうと、努めて明るく言いました。
すると反対にマサキの表情は暗く陰りました。
「それで分かってくれるかなって思ったんだけどな…。アイツなかなか手強くてさ。『先輩が女子大生と付き合ってるのは知ってるけど、諦めない』って言うんだよ…」
マサキは僕から手を解きました。
「俺も知らなかったから、そうなんだ俺、女子大生と付き合ってんのかって思ってたら、アイツ『でも、キスしてくれるんなら、それで諦めつくかも』って言いやがったんだよ」
ようやく落ち着いてきた僕は、それを聞いてまたドキドキしてしまいました。
口を尖らせるマサキに僕は恐る恐るたずねました。
「それで…したの?」
マサキはまた不機嫌そうな顔をしました。
「するわけないだろ? 俺のファーストキスだぜ? あんな小猿にやれるかよ」
それを聞くと何故だか僕はほっとして、ようやくまともにマサキと会話が出来るまでになりました。
「なんだ‥しなかったのか」
「当然だよ。『キスなんてさんざんしてきてるんだから、1回くらいどうってことないでしょ』って言われてギクっとしたけど、好きなヤツとしかしない主義なんだって言ってやったんだ」
「それで小猿は諦めたんだ?」
苦い顔してマサキは首を振りました。
「うんにゃ。それが、やっぱりしつこくってさ、そんなのおかしいとか言うんだよ。『海外のサッカー選手なんか、選手同士で挨拶代わりに抱き合ってキスしてるよね』って」
僕は小猿の必死な様子に呆れつつも感心しそうになりました。
「それってさ、外国人の挨拶の、ほっぺたにさ、触れるか触れないかで音だけチュって出してるアレだろ?」
「そう。だから出来るはずだって」
「アホくさ」
「だろ? だけどさ、もう断る理屈が思いつかなくてさ」
「え!? しちゃったの?」
僕はびっくりして大きな声を出してしまいました。
「しないしない!」
マサキも僕の声に負けないくらいの声で否定しました。
「もう、アイツが目をつぶって口尖らせてる隙にさ、部室から飛び出したよ」
雨の中、僕が呼び止められたのは、その直後だった訳です。
「それで傘も差さないで走って来たわけか」
「そう。あの時、神様は見ていてくれてるんだって思ったよ。試練を乗り越えた先にケイがいたんだ。もう、後光がさして見えたから」
僕はあまりの表現に噴き出しました。
「なんだそれ? バカバカしい」
「それくらい感動的だったんだよ俺にとっては!」
マサキは少し照れくさそうに言いました。
僕は不意に部室で目を閉じて口を尖らせたまま立っている小猿の姿を思って、笑ってしまいました。
「なあ、まだ部室でマサキがキスしてくれるの、じっと待ってたらどうする?」
「んなわけないだろうが。勢いよくドア開けて出てきたから、気付くだろ」
「じゃ、泣いてるかな、かわいそうに」
「どっちの味方だよ?」
「かわいそうな方だよ」
「俺だってかわいそうじゃんか」
マサキはムッとしたみたいでした。
「え、どこが?」
「男に告白されて、キスしろって迫られてさ」
「したの?」
「だから、してないって!」
マサキは面白いくらいにムキになって怒鳴りました。
「だったら振られたヤツの方がかわいそうじゃんか。もうマサキに振られた子の面倒みるの勘弁なんだけどな」

マサキはやっぱり相当モテます。
女子大生と付き合ってるとかデタラメなウワサのせいもあってか、振られるのが怖いみたいで告白してくる女子は少なかったみたいですけど、それでもそれなりに勇気のある女子が玉砕覚悟で告白することが時々あって、振られると何故か僕のところにやってきてグチります。
マサキにコクって、振られたら僕にグチるってのがセットになってるみたいなんです。
僕にしたら迷惑な話でしたけど、それで結構スッキリして吹っ切れるんだそうで、仕方がないから一緒にグチってました。
なのでだいたいマサキがどれくらい告白されて、振ったのかは知っていました。
僕なんて告白されたことないってのに、マサキはヒドいヤツです。
だから、この件に関してはマサキに同情は出来ませんでした。
僕に告白のフリなんかした後だったから(僕が勘違いしただけですけど)なおさらでした。

「明日からどうすんの? 部活で会うだろ?」
僕はにやにやして聞きました。
マサキはギクリと音が聞こえそうなほどギクリとしてました。
「…そうなんだよな。だからさ、それが問題なんだよな…」
マサキは深いため息を吐きました。
「もう、キスしてやったら? そしたら諦めるんだろ?」
「あのなぁ、他人ごとだと思って。そんなら、ケイは出来るのかよ?」
マサキはまた口を尖らせます。
「出来るよ。キスくらい、チュってしてやったらいいじゃん。減るもんじゃないんだし」
マサキの言う通り、僕には他人ごとだったので面白がって言いました。
「ウソだぁ、ホントに出来るか?」
マサキは信用出来ないといった顔で僕を見ました。
「出来るでしょ。簡単だよ。犬とか猫とかにするのと一緒だろ? マサキももったいぶらないで、何も考えないでさ、チュってやっちゃえばいいんだよ」
僕はホントに他人ごとで、気楽なもんでした。
「じゃあさ、してみてよ」
マサキは涼しい顔で言いました。
「は?」
僕はその展開を予想してなくて、ぽかんとマサキを見ました。
「だから、してみせてよ。減るもんじゃないんだろ?」
マサキはニコニコ笑って言いました。
「…だって…誰にするんだよ?」
僕は頭が熱くぼうっとしました。
「え? 他に誰かいるのか? 俺に決まってるじゃんか」
「バ…バカかっ! そんなもん出来るか!」
僕はまたドクンドクンしはじめた心臓を抑えることが出来ませんでした。
「え、出来ないんだ?」
マサキは勝ち誇ったように言いました。
「キスなんて簡単だって言ったじゃん。ほら、してみ」
マサキは目を閉じて、わざとらしく口を尖らせました。
僕は冗談で済ませようと、両手でマサキのほっぺたを挟んで、こねるようにグリグリとしてやりました。
「バ‥バーカ! ふざけんなよな。ほら、マサキのファーストキス奪うわけにいかないだろ? 大事にしまっときな」
マサキの唇を見ているうちに身体が火照ってくるのをじわじわ感じていました。
僕は赤くなった顔を隠すのにうつむきました。
「いや、ケイだってファーストキスなんだろ、犬猫以外には。だったらおあいこだし」
マサキはどこまで本気なのかさっぱりわかりませんでした。
冗談にするなら今なのに、なに考えてるんだよと僕は思いました。
「しないの? しないんだったら俺からしちゃうぞ」
マサキはノリノリで楽しそうに言いました。
「ケイのファーストキス奪っちゃおっかな」
マサキは唇を突き出して迫ってきます。
僕はいまだ赤い顔をまともに上げられないまま、それでも悪ノリするマサキになんとか食い下がりました。
「じ‥冗談だろ? そういうのはさ、やっぱりふざけてするもんじゃないよ」
「じゃあ真面目にしようよ」
マサキはためらいなく、そう言いました。
「‥え」
僕は顔を上げてマサキを見ました。
マサキとばっちり目が合います。
目が合った瞬間に、マサキはニコッと微笑みました。

僕は雨の中を全速力で走り出したい気分でした。
マサキがじっと僕を見ています。
「じゃあ、してみっか」
マサキはまたニコッと笑うと僕に一歩近付きました。
僕は全身に汗が吹き出るのが分かりました。
顔がかーっと熱くなります。
これ以上ないくらいにきっと真っ赤になってると思うと、マサキの顔が見れません。
ホントはすぐに反論しなきゃいけないはずなのに、口がうまく動かない気がして何も言えませんでした。
僕はまたうつむいて、立っていることしか出来ませんでした。
心臓がドキドキしっぱなしで、どうしようもなく胸が締め付けられるように苦しくて仕方ありません。
「なーんて」
そう言って笑うマサキがうつむいた僕の顔を覗き込んできます。
「え‥?」
「こんなんでキスするのもったいないからな、挨拶のキスでよしとしよう。そんなら出来るだろ? ‥ケイ? おい、顔真っ赤だぞ。大丈夫か?」
とうとう僕の顔が赤いことに気付いたマサキの手が、僕の顔に伸びてきます。
僕はその手に触れられたらどうにかなってしまいそうで、マサキの手を払いのけて、あとずさりました。
「大丈夫大丈夫」
全然、大丈夫じゃなかったけど、なんとかそう言いました。

「それにしても顔真っ赤だな、ケイ。ケイってホント俺よか子供だな。そんなに真っ赤になっちゃって」
マサキはケラケラ笑っていました。
「いいから。平気だから。挨拶のキスだろ? やってみようよ」
僕はなんとか気を紛らわせたくて言いました。
「あれ、やじゃないんだ?」
「挨拶だろ? こうやってすればいいんじゃないの?」
僕はマサキの身体に手を回して軽く抱きしめると、顔をマサキの顔の真横に寄せてチュッとキスする振りをしました。
もうとにかく、何も考えないように一気に勢いでやってのけました。
それでもマサキの頬に頬を寄せるのはすごくドキドキで、身体中が震えているのがバレバレだったんじゃないかと心配でした。
マサキは僕が頬を寄せたその瞬間、ビクっとしてましたが、僕が身体を離すと照れたように視線を落として、おでこをポリポリかいてました。
僕は何かを達成し終えた感じになって「じゃ、これで」と帰ってしまいたい気分でした。
だけど、もちろん帰ることはできなくて、少しだけ後ずさってみただけでした。
「こんな感じじゃないかな、うん。上出来でしょ」
僕はテンションを上げていろんなことをごまかしたい気分で、腕組みして頷いてみたりしました。
そんな僕をマサキはゆっくり視線を上げて見ました。
なんだか僕の動揺を見透かしているような目でした。
「うん。…じゃ、今度はお返しな」
「え…?」
そう言われて僕があっけにとられているうちに、マサキはゆっくりと僕に近づいて、ぴったり身体を寄せて立ちました。
マサキの身体からマサキの熱が伝わってきます。
そしてマサキはまた一度視線を下に落とすと、ゆっくりと僕を見つめて抱きしめてきました。
さっきのきつくギュッと抱きつかれたのとは別物で、そっと優しく包み込むようなやわらかい抱擁で、マサキの身体も緊張していたのか僅かに震えていました。
僕の心臓の音はきっとマサキに伝わっています。
でもマサキの心臓の音も僕に伝わってきました。
マサキの心臓も僕のと同じくらいにドキドキしていました。
そしてマサキの顔が僕の真横に寄ってきます。
それだけで僕は全身がゾクゾクしました。
そして、頬にチュッとマサキの唇の少し湿った柔らかい感触が伝わりました。
「え」
僕は思わず声を漏らしました。
マサキはフリじゃなくて本当にキスしてきたんです。
そしてマサキは僕の身体を抱きしめたまま耳元でささやきました。
「…ケイ、勃ってるよ」
僕はもう訳が分からなくて、何を言ってるんだと思って言いました。
「はい? な、なに言ってんの? 立ってるよ。座ってないだろ? なあ、もういい? 熱いし、離せよ」
マサキは全く動こうとしません。
むしろ抱きしめる力を強めて僕を離しませんでした。
そしてマサキは耳元でクックッと笑い声を上げると、またささやきました。
「違うよ、ケイ。あそこが勃ってるだろ? さっきから俺のおへそに当ってるんだけど」

僕はようやく事情が飲み込めました。
ホント舞い上がっていて自分の身体の一部がとんでもないことになっていることに全く気付かないで、別のことばかりを気にしていたんです。
顔が真っ赤だとか心臓の音だとかそんなことより、もっと恥ずかしいことなのに。
…僕は気が遠くなりそうでした。
マサキはそんな僕にはおかまいなしで続けました。

「ヤッバイ…分かる? 俺のも勃っちった」
マサキは恥ずかしそうに僕の目を覗き込んで笑います。
そう言われれば、僕の足の付根、股の内側あたりに硬いものが当っているような感覚がありました。
「え? …あ、えっと…」
僕がうろたえていると、マサキは僕の手を取りギュッと握りました。
「…ヌイちゃおっか? 俺もヌクから、ケイもヌケよ」
「…ヌク? ヌクって?」
僕は頭の中がぐちゃぐちゃしていてマトモに考えることが出来ませんでした。
「よし、ベッドルーム行こ!」
マサキはそう宣言するように言って、僕を引っ張って押入れの前に連れて行きました。
勢い良くふすまを開けると、二段に別れた押入れの下の段には洋服ダンスや本棚が置かれていて、隙間にはごちゃっと色んな物が詰め込まれていました。
そして、上の段にはふとんが敷かれていて、乱れたタオルケットと一緒に、Tシャツやスウェットが脱ぎ散らかしてありました。
マサキは押入れをベッド代わりに使っていたんです。
なんというか、ほんとマンガみたいなヤツです。
枕元にはマンガやサッカーの雑誌が読みかけのまま放り投げられていたり、箱ティッシュとともに、お菓子の空き箱や空のペットボトルが転がっていたりしました。
そして枕の上にはマサキからは想像つかない可愛らしい熊のぬいぐるみが寝ていました。
ずいぶん長いこと愛用してるみたいで、熊のぬいぐるみは少し色あせて、あちこちほころんでいました。

部屋が綺麗なのとは逆で、押入れの中はごちゃごちゃしていて、なんだか僕はマサキの秘密な部分を見ているような気がして胸がドキドキしました。
「ちょっと散らかってるけど、気にしないでな」
マサキは少し恥ずかしそうに言って、枕元の雑誌やゴミをざっと抱えて下の段の隙間にギュウギュウと詰め込むと、枕の上のぬいぐるみを僕に渡してよこしました。
「これ、俺の相棒の熊のボス。こっちはケイ。宜しくな」
「よ、よろしく…」
僕は熊のぬいぐるみに挨拶しました。
マサキが熊のぬいぐるみと寝てるなんて、学校のみんなが知ったらどう思うだろうと僕は思いました。
「あ、学校で言うなよ。ナイショな」
マサキは少し照れくさそうに言いました。
僕もなんだか少し照れくさくなって頷きました。
「う、うん…」
マサキはふとんの上に身軽に上がると、押入れの天井の板を持ち上げてずらしました。
僕はどうしたらいいのか訳も分からず、ただただ立って、その様子を眺めていました。
渡されたぬいぐるみを嗅ぐと、甘ったるいマサキの匂いがしてジーンと身体が熱くなりました。
僕はどうしてもマサキのあそこに目がいってしまいます。
僕もそうでしたけど、マサキの灰色のトランクスは大きくテントを張っていました。
「狭いけど入れよ。どう、俺のベッドルームは? 初公開だぞ。なかなかいいだろ? そうだ、灯りも点くんだぜ」
マサキはあそこを勃たせたままで天井裏をごそごそしていましたが、それを中断して枕元のスイッチを押しました。
押入れの中にクリスマスのイルミネーションみたいな灯りがともりました。

「どうした? 早く上がれよ」
僕はマサキに催促されて、言われるがままにのそのそと押入れに入りました。
立ちはできないけど、座っていれば意外と狭くは感じずに快適な空間です。
僕は収まらないテントが目立たないように押入れの奥の壁に寄りかかって座ると、テントを隠すように熊のボスを股間の上に置きました。
押入れの中にはマサキの匂いが満ちていて、息苦しくもありました。
「なかなか快適だろ?」
マサキはがさごそと何をしていたのかと思ったら、天井裏からHな本を数冊取り出してふとんの上に拡げました。
僕は14歳にして、生まれて初めてエロ本を目の前にしてドキドキしました。
田舎の普通の中学生にエロ本はなかなか手に入るものじゃありませんでしたからビックリです。
マサキがどうやって手に入れたのかはわかりませんが、マサキがエロ本を隠し持ってるってことに僕はまたドキドキしてしまいました。

「ケイはどれにする?」
あまりの緊張と興奮で頭が正常に働かなくて、どれも表紙をじっくりと見ることが出来ませんでしたが、マンガらしいのが3冊に洋モノっぽいのが1冊、日本のグラビアっぽいのが1冊あったと思います。
「え? えっと…」
僕は困り果てて目が泳いで、オロオロするばかりでした。
「…あ、恥ずかしいよな、やっぱり…」
マサキは当然だという感じで言いましたが、少し残念そうでもあって、諦めたみたいな溜め息を短く吐きました。
「うん、ゆっくり選んでいいよ。俺、トイレでしてくるから。じゃ、あとでな」
自分に言いきかせるみたいに言うと適当に一冊Hな本を掴んで、マサキは押入れから飛び降りて行きました。
「ちょ‥ちょっと待って、待てよ!」
僕は慌ててマサキの腕を捕まえて呼び止めました。
「…何? あ、ティッシュは枕元の使っていいから。ふとん汚すなよ」
マサキは僕の方をほとんど見ないで冷たく言うと、ひどく落ち着かない様子でした。
「‥はい?」
「何? なんだよ? 手、放せよ。俺、変になりそうだよ。このままだと俺‥ヤバいんだけど」
マサキはすごく切なそうな声で僕の心はざわざわしました。
「‥いや、その…なんのこと?」
「はあ?」
「…何? するって?」

僕は恥ずかしい話、本当にその手の情報にうとくて、もちろんオナニーという言葉は知ってはいましたし、ヌクっていうのがオナニーのことなのはなんとなく分かりました。
だけど実際に自分でちゃんとしたことがなくて、したことがないなんて誰にも言えなくて、そういう話題も恥ずかしさからずっと避けていました。
僕は大人ぶっていましたが、マサキが言う通り実のところはホント子供だったんです。
オナニーに興味はもちろんあったし、やり方が分からないなりにも自分なりにちんちんを触ったりさすったりして勃たせたこともありました。
だけどいつもすぐに後ろめたいというか怖くなってしまって出来ずにいたんです。
僕はホント臆病なんです。
だから、その時ひとり残されても僕はどうしたらいいか不安で怖くて、マサキに居て欲しかったんです。

「…はい?」
マサキはけげんな顔で僕を見ました。
「…えっと、これは、その…ひとりで‥しろってこと?」
僕はオナニーという言葉がどうしても恥ずかしくて口に出来なくて、そんな言い方になってしまいました。
マサキの腕を掴んだままの手は、震えていたんじゃないかなと思います。
心臓が大きく跳ねるように脈打っているのが分かりました。
同じように僕のあそこがハーフパンツとトランクスの中で大きくドクンドクンと脈打っているのもわかりました。
ハーフパンツとトランクスの中は窮屈で、少し痛くてマサキがいなければ脱いでしまいたい気分でした。

マサキはじっと僕を見てきました。
身を乗り出していた僕とマサキの顔は20センチくらいしが離れていません。
マサキの上気したような少し荒い息が僕の頬にかかります。
きょろきょろしていたマサキの大きな瞳が僕の目をしっかりと見つめました。
その途端、僕は金縛りにでもあったように動けなくなりました。
「…しないの? ケイのここ、こんなにきつそうだよ。それとも、ひとりよりふたりの方がいいってこと?」
マサキは僕のあそこを優しく握って言いました。
僕は突然のことに抵抗も出来なくて、握られた瞬間、全身を電流が走ったみたいな衝撃に震えました。
僕は膝立ちで、片手を支えに身を乗り出してマサキの腕を掴んでいたのですが、力が抜けて支えが効かなくなって、マサキの肩にもたれるように寄りかかってしまいました。
「んんっ…」
マサキが僕のあそこを握っている手に少し力を込めるので、悔しいけど途端に恥ずかしい声が洩れてしまい、僕はマサキの肩に口を押しつけ声が洩れないように堪えました。
マサキは持っていた雑誌を足元に落とすと、僕を支えるように肩に手を回して、僕の顔を覗き込んできました。
もう片方の手はずっと僕のあそこを握ったままです。
力を強めたり弱めたりしてきます。
その度に僕はマサキの肩に顔を埋めて洩れる声を押さえました。
マサキは僕に負けないくらい荒い息を吐きながら楽しそうに言ってきました。
「…ケイ、エッチいな。すっごい濡れてきてるじゃんか。もう1回着替えが必要かもな。そんなに気持ちいいか?」
僕は頭をぷるぷる振ってマサキの顔を見ました。
「なんか…ダメ…ヤバいっ。何この感じ」
マサキはいままでに見たことないような上気した、熱っぽい顔で目を潤ませて僕を見ていました。
「ケイ…そんな目で見たら、俺だってヤバいって」
マサキは困ったような切ない声でそう言うと、僕の身体を押入れの奥の方に押し込むようにして、上がり込んできました。
ふとんの上に残されていたエロ本を足で器用に外に押し出すと、マサキはふすまを閉めました。
途端に押入れの中はイルミネーションのほのかな灯りだけになりました。
コンポから流れる歌も雨の音もずいぶん遠くに感じました。
僕はマサキの身体に押されてふとんに仰向けに倒されていました。
マサキが僕の上で四つ這いになって見下ろしています。
二人共息が荒く、僕の手は汗でしっとり濡れていました。
「ケイはこの先、どうしたい?」
マサキはいつも通りな僕を遊びに誘うような言い方で楽しそうに言いました。
密室になった押入れの中は甘いマサキの匂いがよりいっそう濃くなりました。
マサキの黒目がちな潤んだ目が真上から僕を見つめてきます。
「ど‥どうしたいって、どうすんだよ?」
僕はマサキから目を逸らして顔を横に向けると、僕の頭の横にはマサキの脱ぎ散らかしたままのスウェットがあって、その上に熊のボスがこっちを向いて座っていて目が合いました。
熊のボスも黒目がちで僕は目を逸らしました。

マサキの手から開放された僕のあそこがドクンドクンと激しく脈打っているのを感じます。
パンツが窮屈でしかたありません。
脱ぎたい、脱いで楽になりたいという思いに襲われて、僕は視線を自分の股間に移動しました。
すると、僕の股間の上にあるマサキのトランクスの大きく張ったテントが目に止まりました。
そこはやっぱり窮屈そうにびんびんに張りつめていて、よく見るとテントの頂上あたりにシミが出来ています。
良かった、僕だけじゃないんだという思いになんだかほっとさせられました。
僕は自然とマサキのあそこに手を伸ばしていました。
「あっ」
マサキは驚いたように身体を震わせると、確認するように僕が握ったあそこに視線を移しました。
僕は初めて他の人のものを布越しですが触りました。
マサキのはとても硬くて、熱さがトランクス越しにも伝わってきました。
びくんびくんと脈打っていて今にもトランクスから飛び出してきそうな勢いでした。
洗面所と部屋で見たマサキのものが頭に浮かびます。
僕はマサキがさっき僕にしたみたいにニギニギと強くしたり弱くしたりして触りました。
「ちょっ‥と、ケイ! あはっ…んん…」
マサキも弱いみたいで、大きな声を出すと支えていた手ががくっと崩れて僕の胸に崩れてもたれかかってきました。
トランクスのシミがじわじわと広がるのが手にしっとりと伝わって分かりました。
マサキは顔を歪めて、なるべく声を漏らさないように堪えていましたが、耐えきれずに可愛い喘ぎ声を漏らしながら、僕の首筋に顔を埋めてきました。
マサキの吐く息が首筋にかかります。
さっき食べたサクランボの甘酸っぱい香りがわずかにしました。
「…バカっ…ケイ‥ヤバいって…」
マサキが僕の首筋で言いながら強く抱きしめてきたので、僕は全身がゾクゾク震えてしまいました。
「誰がバカだって? …僕だって、ヤバいよ」
僕もおずおずとマサキを抱きしめました。

マサキの身体は熱くて柔らかくて甘い匂いがして、その全てで僕を刺激しました。
マサキの硬いあそこが僕のお腹に当っていました。
僕のあそこもマサキの太もものあたりに当っていたと思います。
それだけで気持ちがよくてどうかしそうでした。
数分でしょうか、そのまま抱き合っていたのですが、下敷きになって息が苦しくなってきた僕は、マサキの肩をぽんぽん叩いて離れてもらいました。
二人共しっとりと汗をかいていて、はあはあ肩で息をしていました。
お互い目が合うと笑って、マサキが言いました。
「脱ごっ!」
マサキは身体を起こしてタンクトップを勢い良く脱ぎ捨てました。
僕も身体を起こしながらTシャツを脱ぎにかかります。
僕は両手をクロスさせてTシャツのすそを掴むと、バンザイするように脱ごうとしましたが、汗で湿って脱ぎづらくて、頭が抜けずに奮闘していたところでマサキに押し倒されました。

僕は脱ぎかけのTシャツに視界も塞がれ、両腕を中途半端にバンザイしたまま自由がきかない状態で倒されました。
その上にマサキが馬乗りになってきたので身動きが全く取れません。
Tシャツごしにうっすらとしか見えない視界で、マサキの顔が近付いてくるのが光の加減で分かりました。
「ちょっと‥おい! なにすんだよ!!」
温かくてしっとり濡れた柔らかい感触が胸にしました。
慌ててもがく僕の乳首をマサキが何も言わずにペロンと舐めてきたんです。
僕はくすぐったくて、もがきましたが、手の自由が利かなくてじたばたするだけでした。
「ちょっ!‥くすぐったいって!」
僕の抵抗もむなしく、マサキは無言のままで僕の乳首を舐め続けました。
舌先でツンツンつついたり、ペロペロ舐めたり、渦巻きを描くみたいにくるくる舐めたり、腹立つくらいめちゃくちゃ舐められました。
マサキの荒い鼻息が吹きかかると濡れた乳首がスースーして、これまたこそばゆくって悶えていると、今度はマサキのあの柔らかい唇で乳首をチューっと吸われました。
その間、もう片方の乳首はずっと指でなぞったりつついたりされていました。

僕はそのくすぐったさに自由のきかない身をよじって声をあげて笑い続けました。
僕がいくら笑い苦しんでもがいても、マサキは全然止めようとしないで、一心に僕のふたつの乳首を左右交互に舐めたり突ついたり爪で弾いたりしてきました。
僕はそのうちにだんだんとくすぐったいけど気持ちよさも感じてきてしまって、なんだか恥ずかしいけど変な気分になりました。
「おおっ! 乳首勃った! よっしゃー、勃った勃った!」
僕はその勃った乳首を歓声を上げるマサキにぐりぐり突ついて押されました。
「あっ‥」
僕はズキンとしびれるみたいな感覚に襲われて、思わず恥ずかしくも声を漏らしてしまいました。
「ケイの乳首ってさ、ピンク色で綺麗だよな。肌白いし、エッチい!」
マサキは興奮気味な声で息を切らせて言いました。
僕はとにかくTシャツから頭と腕を抜きたくて、そんなことにはかまってられなくて懇願しました。
「ちょっと、シャツ! シャツ脱ぐんだから、やめろよバカっ! いい加減にしないと怒るぞ、バカマサキ!」
懇願というか怒鳴った僕をバカマサキがケラケラ笑うので頭にきたんですが、直後マサキに敏感になってる乳首にキスされて、僕は途端にまた恥ずかしい声を漏らしてしまいました。
「あっ‥」
マサキはその僕の声を聞いて楽しそうに興奮気味で言いました。
「誰がバカだって? 面白いから、もう少しこのままでいいじゃんか。大丈夫、ヒドいことはしないからゼッタイ。俺を信じて。ケイを気持ちよくさせてやるだけだから、な?」

そう言ったマサキが何をしでかすのか分からなくて、僕は身をこわばらせました。
「信じられるかよ! なにが『な?』だよ。さ‥させてやるってなんだよ!?」
それでも僕は精一杯強がってみました。
マサキはまた何も言わなくなってしまって、僕は不安になりました。
「な‥なんか言えよ」
すると僕の腋の下にマサキの息が吹きかかりました。
「ちょ‥ちょっと待て!」
僕の制止もあっさり無視されて、マサキに腋の下を優しくなぞるように舐められました。
「んっ! ちょっ! やめろよ!」
僕はピクンと身体を跳ねさせてしまいました。
なんだか、くすぐったいような気持ちいいような変な感覚にゾクゾクしました。
「ケイの腋、ツルツルだなー」
マサキの感心するような声が聞こえてきました。
「マサキだって、ツルツルだろっ!」
強がってみてもマサキに腋の下を舐められたらピクンと身体が動いてしまうので無意味でした。
マサキの舌は少し熱いくらいで、唾液で濡れてぬるぬるしていて、柔らかい弾力があって、僕の腋の下でチロチロ動いたり、ねっとり動いたりしました。
舐められるたび僕の身体がピクンと跳ねるのが面白いのか、僕はそれから暫くしつこいくらいに、マサキのしっとり濡れた舌先で、ゆっくり丁寧に左右の腋の下を舐められ続けました。

僕は脱げなくて頭と腕に絡まったままのTシャツを恨みました。
どうもがいてみても、中途半端にバンザイしたままの腕が押入れの壁にぶつかって伸ばせないし、寝たままでは汗で貼り付いたTシャツは脱げませんでした。
身体を起こすことさえ出来れば脱げるのに、馬乗りになっているマサキが邪魔してそうさせてくれません。
僕が動けないことをいいことに、マサキは好き勝手し放題に僕を攻め続けました。

僕はマサキに腋の下を舐められるたびにホント悔しいけど何度も喘ぎ声が出てしまい、どうにも止められなくて、身体がピクンと反応してしまいました。
あそこがトランクスの中で痛いくらいに張りつめているのが分かりました。
僕はごそごそと無意識に腰を揺らしていたみたいで、マサキに笑われました。
「ケイ、気持ちいいんだろ? 腰が動いてる」
マサキは僕のあそこをまた掴んできました。
今度はぎゅっと強めで、僕は頭の中が一瞬真っ白になりました。
「んっっ!」
僕は歯を食いしばりました。
「ケイの、すっごいピクピクいってるんだけど! なんか濡れ過ぎじゃない? もしかしてイッちゃった?」
マサキの声は楽しくて嬉しくてしょうがない感じでした。
でも僕は恥ずかしくて悔しくてしょうがない感じで首をぷるぷると振りました。
「精子、もう出ちゃったか?」
耳元でマサキに優しい声で聞かれて、僕は震える声で恐る恐る答えました。
「…分かんない…出ちゃってる?」
「出たかどうか自分で分かるだろ?」
「‥‥だしたことないから…」
僕はものすごく恥ずかしくてどうしょうもありませんでした。
この時ばかりは顔がTシャツで隠れていてホント良かったです。
「マジで!?」
マサキはすっごいびっくりしたみたいで、声が裏返ってました。
と同時に僕のあそこを握る手に力が入ったので、僕はたまったもんじゃありませんでした。
「んんっっ!」
僕は、また歯を食いしばって耐えました。
「え、そうなの!? ケイ、オナニーしたことないの!?」
マサキはすっごいテンション高く、大声でストレートに言ってくれました。
僕はマサキのそのデリカシーのない言い方がホントにムカつきました。
「‥うるさいよ!! だったらなんだよ!? ワルいかよ!? バカにすればいいじゃん! したことないのがそんな可笑しいかよ!」
僕はなんでこんなみじめな思いをしなきゃならないんだよと泣きたくなりました。
最後のほうは涙声で震えてしまって、うまく文句が言えませんでした。
だけどマサキにはちっともその言葉は届かなかったみたいで、身体をガシッと両手で掴まれ、ゆさゆさと力強く揺すられました。
「すごいっ!! すごいよ! 俺、ケイの初めてもらっちゃうんだ!」
「なに言って‥」
「すごいすごい!」
マサキは興奮気味に僕のハーフパンツに手をかけると、乱暴にぐいぐいと脱がし始めました。
「ちょっ‥と!」
「いいから、俺に任せといて」
マサキから、なんかイキイキと張り切ってる感じが伝わってきて、ちょっとイヤな感じがしました。
「ほら、腰あげてみ?」
それでもマサキに明るく優しく言われると反抗出来なくて、僕は言われるまま腰をあげてしまいました。
「お、協力的」
マサキは朗らかに笑いました。
「うるさい!」
僕はハーフパンツを脱がされて、トランクス一枚の格好になりました。
「ケイ、トランクスの染みがすごいことになってるよ? うっわー…すっげー濡れてる」
マサキはまるで子供みたいに楽しそうに言いながら、僕の先端をトランクス越しに指先でくりくりいじってきました。
「ここ先っぽ? ぷにぷにしてる。ヌルヌルだな。お! ピクンって動いた」
「んんっ‥実況しなくて、いいから!」
先端を指で撫でられたと思ったら、指でつつかれ、指でつままれグリグリ押されてと、さんざんいじられました。
ジャージのハーフパンツよりもトランクスのほうが生地が薄いわけで、その刺激は生で触られたらどうなっちゃうんだろって不安になるくらい強烈でした。
悔しいけど僕はマサキに指でいじられるそのたびに、身体だけじゃなくって、あそこもピクンと反応してしまっていました。
それを止める方法が分からなくて、マサキにされるがままに反応してしまう自分が恥ずかしくてしかたありませんでした。
「‥んんっ‥も、なんか息が‥苦しい‥マサキ、苦しって…」
僕は息があがってしまい苦しくて、身体を大きく揺らしてハアハアいってました。
「平気か?」
僕が力なく首を振ると、マサキはTシャツを強引に引っ張りあげて顔だけ出させてくれました。
「ちょっと刺激強すぎたか?」
マサキが心配そうに僕の目を覗き込んできても、僕は恥ずかしくてマサキと目が合わせられませんでした。

顔が出せたので、おかげでだいぶ息が楽になりましたが自由がきかないのは変わりません。
僕は顔が汗だくでヒドい状態だったのを、マサキがさっき脱いだタンクトップで拭いてくれました。
タンクトップはマサキの汗の匂いがして、それでまた少し胸がドキドキしてしまいました。
しかもマサキの拭き方は丁寧なんですけど、なんか微妙にいやらしくて、僕は恥ずかしくてたまりませんでした。
「すごい汗だな」
マサキは顔を拭いてくれたあと、僕の身体も拭き始めたんですが、やっぱり微妙にいやらしい拭き方で、もぞもぞとなんか気持ちワルくて、自分で拭ければなんの問題もないのに、拭いてもらわなきゃならないこの状況が屈辱的に思われました。
「ちゃんとシャツ全部脱がせてくれよ。自分で拭くから」
「ダーメ。ケイはじっとしてなさい」
マサキは僕よりも優位に立ってるからって、嬉しそうに保護者ぶって言いました。
それからマサキは僕の身体を拭く手は休めずに、ちょっとだけ真面目な顔をすると、言いました。
「オナニーしたことないからって、恥ずかしがることないんだぞ? 別に悪いことじゃないし。ちっとも可笑しくないし、バカになんかしないから。むしろなんか、そんけーしちゃうよ」
マサキの言葉に不覚にも、僕は心のすみに突き刺さっていた罪悪感や劣等感、羞恥心みたいなものが抜き取られていくような気がして、ちょっとだけジーンときてしまい、恥ずかしくて顔をまた背けました。
隣にいる熊のボスと目が合いました。
僕は見てるなよって思いました。
マサキは僕の上半身を拭き終わると、そのままそのタンクトップで自分の顔を拭いていました。
「うん‥ケイの汗の匂いする」
タンクトップに顔を押し付けて、くんくん匂いを嗅いでいるマサキが嬉しそうに言うので僕はまた恥ずかしくなりました。
「‥変態」
僕はマサキに毒づいてみましたが、顔はおそらく真っ赤になっていたと思います。
「そうなんだ‥俺、変態かもしんない」
一瞬、深刻な顔してマサキは恥ずかしそうに言うと、照れたように笑いました。
その笑い顔を見て僕はまた胸がドキッとしてしまいました。
マサキは身体も拭くと、ふたりの汗で濡れたタンクトップを、僕の頭の横にある熊のボス目がけて放り投げました。
僕とマサキの汗の匂いを含んだ風が、ふわりと僕の頬に吹きかかりました。
熊のボスは汗で濡れたタンクトップにバサッと覆われて、埋もれてしまいました。
「こっから先はボスには見せられないもんな」
そんなふうにマサキに言われて、僕はこっから先のことを考えると胸がドキドキしてしまって、せっかく拭いてもらったのに全身からまた汗が噴き出してしまい、唾をごくりと飲み込みました。

マサキはニッと僕に笑いかけると、僕の腹筋の割れ目を指でそっとなぞってきました。
「ホントきれいな肌だなー、ケイは。陸上部のくせして、白くてすべすべしてんのな」
僕が気にしてることをずけずけとよく言ってくれますマサキってヤツは。
僕はマサキの指先に身体をゾクゾク震えさせながらもマサキを睨みました。
「悪かったな!」
「いや、だから悪くないって。その逆だよ逆。この白い肌がエッチいんだって」
マサキはそう言って、僕の腹筋やおへそや胸や乳首や腋の下に何回もチュッチュッと音をたてて優しくキスしてきました。
それがまたくすぐったくて、身体をピクンピクン跳ねさせてしまいました。
僕はなんとか声を漏らすまいと必死に歯を食いしばって耐えていましたが、どうしょうもなく甘い吐息が洩れてしまいました。
そして最後に、マサキは鎖骨のあたりにチューッと強く吸い付きました。
僕の顔のすぐ下にマサキの頭があって、髪の毛が鼻をくすぐり、トリートメントのいい香りがしました。
痛いくらいにキツく吸い付かれている鎖骨のあたりがジンジンして身体がこわばりました。
「な‥なあ、なにしてんだよ?」
僕が不安になって聞いてもマサキは一心に鎖骨を吸い続けていました。
僕が困惑してそわそわし始めるとようやくマサキは、ぷはーっと息を吐いて唇を離してキラキラした目で僕を見ました。
マサキは満足げにニッコリ笑って、自分が吸い付いていた鎖骨の部分を指でなぞりました。
「な‥なに?」
「ううん、ナイショ」
マサキはニッコニコでそう言うと、いよいよトランクスに手をかけてきました。

「ケイ、ほら腰あげて。心配いらないから。俺がちゃーんと気持ちよくさせてやるんだから、安心していいんだぞ」
マサキの大きな瞳にじっと見つめられて優しい声で言われた僕は、胸がキュンと締め付けられるような苦しさを感じました。
心臓がバクンバクン激しく鳴って、窮屈なトランクスの中でピクンピクン僕のが脈打ちました。
僕は恐る恐るですが、腰を浮かせていました。
「大丈夫。この俺が、しっかりマスターベーションをケイにマスターさせてやるから。いやぁ、ケイに教えてやれることがあるってなんか嬉しいな」
黙ってればカッコいいのに、ニターッと笑うマサキはなんだかエロオヤジっぽくて、僕は少し不安というか、幻滅というか、呆れました。
「いつでもイッちゃっていいからな」
マサキがサッカーしてる時みたいな真剣な男らしい眼差しで僕を見ると、ゆっくり優しくトランクスをずり下げていきました。
緊張してるのか興奮してるのか、トランクスをずらすマサキの手は震えていました。
僕の身体も緊張と恥ずかしさで震えていました。
トランクスがゆっくりずらされるのにあわせて、僕のあそこが少しずつ顔を覗かせました。
ようやく窮屈な所から開放されて、僕のは頭をぐんと持ち上げます。
濡れた先端が外の空気に触れてスーッとしました。
「うっわぁ…ケイのちんちん、かわいいな。すっげえ元気…まだ触ってないのにピクンピクンしてるよ!」
マサキは僕のがぴょこんと飛び出したあとは、はぎ取るように勢い良くトランクスを脱がしてしまって、息が吹きかかるくらいに顔を近づけ僕のを眺めました。
濡れている先端に喋るマサキの息が吹きかかると、くすぐったくて僕は身体をよじりました。
「‥そんなにジロジロ見んなってばっ!」
顔が出せて助かった反面、全てが見える状況に僕は困ってしまいました。
顔を真っ赤にした僕は、恥ずかしくて足をもじもじさせて隠せるものなら隠したかったのですが、がっちりと両ももの上に乗られてしまい、マサキに全てを見られることになりました。
「…なんかピンク色の先だけちょっと覗いてて、ぬるぬる濡れてるのがエロい‥」
上気した顔でとろんとした目をしたマサキは、興奮したように荒い息をしながら甘い声で言うと、そっと僕のあそこに手を伸ばしてきました。

当たり前ですが、こんな勃起したのを他人に見られるのもジカに触られるのも初めてのことで、僕は息をのみ、身体を硬直させました。
マサキはまず、親指を僕の根元に当てると人差し指を先まで伸ばして、僕の長さを計ろうとしました。
僕が息をのんでじっと見守る中、マサキは真剣な顔でごくりと唾を飲み込むと、そーっと人差し指を伸ばしていきました。
人差し指の先が先端に触れると、僕のは恥ずかしいくらいに大きくピクンと動いてしまいました。
しかもピクンと動いたはずみに先端からは、トロリとした透明な液が糸をひいて僕のお腹に垂れました。
それを直視してしまった僕は、もう恥ずかしすぎて絶叫したい気分でした。

「こらっ動くなよ、やんちゃだなー」
マサキはそんな僕の気持ちになど全く気付かない様子で愉快そうに笑って言いました。
「‥仕方ないだろ!? 勝手に動いちゃうんだから! ‥止め方わかんないよ」
僕は顔を真っ赤にして抗議しました。
「ああ、じゃ‥こうすればいいか」
マサキは目を輝かせると、僕のを動かないように、もう片方の人差し指と親指を使って根元を掴んで押さえました。
しかも僕に見せつけるように、わざわざ僕のを先端が天井を向くようにクイッと立ち上がらせました。
「んんっ!」
僕は洩れる声を抑えるのが大変でした。
歯を食いしばってその衝撃に耐えました。
やっぱり生で掴まれるのは、その感覚が今までとはゼンゼン違いました。
マサキは歯を食いしばってる僕の顔をちらりと見るとニッと笑って、改めて僕の長さを計るのに、わざわざ人差し指の指先を僕の根元から先端までツーッとなでるようにすべらせました。
僕は悔しいけどそのマサキの指の動きにガマンがきかなくて、喘ぎ声を漏らして腰を浮かせてしまいました。
「12‥13センチくらいか? よしよし、俺のが少しデカイかな」
マサキは、のけ反って喘ぎ声を漏らした僕を見て、むふふと嬉しそうに笑って言うと、今度は指で輪っかを作って僕の太さを計ろうとするみたいでした。
僕はごくりと唾を飲み込みました。
マサキは目をキラキラ輝かせ興奮気味に甘い息を吐きながら、僕の勃起したあそこを食い入るように見つめていました。
親指と人差し指で作った輪っかは、僕のに触れるか触れないかの大きさで、マサキはその指の輪っかを僕のあそこの真上からゆっくり下ろしていきました。
その触れるか触れないかの感触に、僕はゾクゾクっと身体が震えました。
マサキはそろりそろりと輪っかを下ろしていって、真ん中あたりで止めると、そのまま親指と人差し指とで僕のをそっと握りました。
その途端、また僕は喘ぎ声を漏らして腰を浮かせてしまいました。
しかも根元を押さえられてるっていうのに、そんなのお構いなしにピクンとあそこが跳ねるように動いてしまい、その振動で、気付かないうちにまた先端に溜まっていた透明な液が包皮のふちからあふれて、たらりと垂れて僕のを伝い、マサキの指にかかってしまいました。
僕はまた絶叫したいくらい恥ずかしくなりました。
「太さはおんなしくらいか」
マサキはまた僕の喘ぐ姿を見て、むふふと嬉しそうに笑うと、僕のから指をほどいて、透明な液のついた指先を僕に見せてきました。
マサキが指を離した時に、僕のとマサキの指の間に透明な液が糸をひくのが見えてしまって、僕はその恥ずかしさにめまいがしました。

「‥先ばしり、すごいんだな…ケイ。どんどん漏れてくる。そりゃパンツがあんなに濡れちゃうわけだよな」
マサキは納得したように頷くと、指先に付いた透明な液を上気した目でじっと見つめて、そっと舌先を伸ばしてペロンと舐めました。
僕はビックリして目を見開いてしまいました。
「ええーっ!?」
本当はそう叫びたいところでしたけど、口をぱくぱくさせただけで、僕はあまりの衝撃に声が出ませんでした。
「んー‥ケイの味。少ししょっぱい」
マサキは僕の驚きなど気にもしないで、ニコーっと笑うと、しょっぱそうな顔をしてみせました。
「ケイも舐めてみる?」
マサキは僕の先端からこぼれてお腹に溜まっていた透明な液を、すくうように指先に付けると僕の顔の方に差し出してきました。
「いい! いい! バカやめろっ!」
僕は激しく首を振って拒否しました。
どうしてそんなマネが出来るのか僕にはさっぱりわかりませんでした。
「そんな拒否んなくたっていいじゃんか。自分のなんだから。汗や涙と一緒だろ?」
「ゼンッゼン違うよ! ふざけんなっ!」
マサキは可笑しそうに笑っていましたが、僕には同じには思えなかったし、じゃあ、自分のじゃないマサキはどうして平気で舐められるんだよって思いました。
「よく平気だな!」
「平気だよ。そりゃあ、これが他のヤツのだったら頼まれたって、ゼーッタイいやだけどさ、ケイのならゼンゼンOKだよ、俺はね」
マサキは平然とそう言ってニッと笑うと、指先に付いてる僕の液をまた舌先でペロンと舐めて、そのまま指をパクっとくわえてチューっと吸いました。
僕はそれを見てたら、なんだか身体がむずむずしてきて身体がまた火照ってしまいました。
「‥バ‥バカかっ! 変態!」
また僕は顔を真っ赤にしてマサキから逸らしました。
「うーん‥ケイといるとさ、なんだか変態になっちゃうんだよなぁ‥マジ困った」
マサキは困ったように照れて笑って、開き直ってました。
僕はそれを聞いてまたカーっと身体が熱くるのが分かりました。
「バカっ、人のせいにすんなっ! 元からだろ!?」
僕はそう言うのがホント精一杯でした。

「ヒドい言い方だなぁ‥」
マサキは不満そうな顔で口を尖らせて僕を見てましたが、そのうちに、ぷーっと噴き出して笑いました。
「な‥なに? なんだよ?」
「‥いや、だってさ…ケイだって、こんなにトロトロな液、いっぱい垂らして感じてんじゃんか? ガマン汁がゼンゼン我慢出来てないぞ? れっきとした変態仲間じゃん!」
「わーわー!! 言うなっ!」
僕は耳を塞ぎたくても塞げませんでした。
代わりに大声を出してマサキの言葉をかき消そうとしましたが、ほんのちょっとの気休めにしかなりませんでした。
「いいじゃん。変態どうし仲良くしよ」
マサキはニコニコ笑って、透明な液を垂らしたままの僕のをつんと指でつつくと、そこに握手するみたいに指をからませてきました。
「‥んっ」
僕は途端に恥ずかしい声を漏らしてしまいました。
「…どして、こんなこと出来るんだよ? …フツー‥触るのとか‥いやじゃないのか?」
僕はハアハア息を切らしながら、どうしても聞きたくて尋ねてしまいました。
マサキはじっと僕の目を見ると柔らかく微笑んで、首を優しく横に振りました。
「いやじゃないよ、ケイのなら。ケイのだったらゼンゼンOKだって、いまさっきも言っただろ? ケイだって、さっき俺の…その、パンツ越しだけど‥握ったけど、いやだったか?」
マサキの目はすごく真剣で、少し不安そうにチラチラ動きました。
僕は途端に答えに詰まってしまいました。
「…あ‥あれは、なんていうか…たまたまで‥」
僕は汗が全身から噴き出して、心臓がドクンドクンと高鳴ると喉が渇いて、うまく喋れませんでした。
「たまたま? たまたまタマタマ握ったのか?」
マサキは茶化すみたいに言って笑いました。
僕はあまりの恥ずかしさで泣きそうになりました。
「‥冗談、ゴメン」
マサキはそこで少し黙ってから息を吐くと、僕をまた困ったような顔してじっと見つめて言いました。
「…ケイの気持ちはなんとなく分かるよ。正直、俺もどうしてケイにこんなことしちゃうのか、よく分かんない。本当はすっげーケイに嫌われたくないのに‥嫌われてもおかしくないようなことしちゃってるし。…本当に俺‥変態なのかもしんない。ケイのこと見てるとドキドキするし…その‥ちんちん勃っちゃうし…」
マサキは少し震える声でそう言うと、自分のトランクスのふくらみに目を落として、勃起してるのを確認するみたいにギュッと握って、僕に見せるように腰を突き出しました。
「ほら、俺だってずっとこんな。さっきからゼンゼン勃起がおさまんないでやんの。ケイのこと言えないや」
マサキは照れたように笑いました。
僕はそう言われても何も言ってやれなくて、ただマサキのトランクスのシミの広がりを眺めていました。
僕は息が苦しくてしかたありませんでした。
口を半開きにしてハアハア息をしながら、喉が乾いてしょうがなく、何度も唾を飲み込みました。
マサキはそんな僕を、今までに見たことのないような目で見つめてきました。
じーっと僕の奥底を見つめるような、僕の身体を温かく包み込んでくれるような、そんな眼差しでした。
「でもさ、俺さ‥変なんだ。自分のをどうにかしたいとかって気にゼンゼンなんなくてさ、代わりにケイのこと、すっげえ気持ちよくさせてやりたくてたまんないんだ」
マサキはさっき吸い付いた鎖骨の部分に指を這わせて優しく撫でました。
僕は撫でられるとその部分がじんじんしびれて変な気分になりました。
「ケイが感じてる姿見ると嬉しくて、聞いたことないケイの可愛い喘ぎ声もっと聞きたくって、ついケイが恥ずかしがって嫌がるようなことしちゃうんだ。‥でもさ、ゼッタイ俺ヒドいことはやんないから! だから…なあ‥俺がめちゃくちゃ気持ちよくさせるから、ケイはさ‥なんも考えないでさ、いっぱい感じて、いっぱい出しちゃえよ。‥それに‥ケイの‥トロトロな液漏らして、こんなんなってるの目の前にしたら、ほっとけないっていうか‥イカせてやりたくて俺、我慢出来ないよ」
僕はマサキに見つめられていると、身体がどんどん熱くなっていくようでした。
マサキの目はうっとりと熱っぽく、潤んでいて、僕は見とれてしまって息をするのも忘れてしまいそうでした。

僕は自分のことで精一杯で、マサキのことを考える余裕なんてゼンゼンありませんでした。
だからマサキにそう告白された時、僕は自分のことしか考えていないことが少し恥ずかしくて、自分よりも僕のことを気持ちよくさせてやりたいってマサキの気持ちが、くすぐったい感じで照れましたが、なんかすごいなと思えて、そんなふうに思ってもらえたことを素直に嬉しく思いました。

マサキは僕の上に覆い被さるように馬乗りになって、荒い呼吸を繰り返して僕のことをじっと見つめていました。
僕だってマサキを見るとドキドキしちゃうし、一瞬でしたがマサキの感じてる姿が見れて嬉しかったし、マサキにしてもらうのは恥ずかしいけど気持ちよかったし、不安だし怖かったけど、もっと気持ちよくなって出しちゃいたかったし、出来ることなら僕もマサキに気持ちよくなってもらいたかったのですが、その気持ちをマサキにちゃんと伝えなきゃと思うと、頭の中で思いだけがぐるぐる回って、言葉がうまく出てきませんでした。

「僕‥僕…」
僕が一生懸命言葉にしようと格闘していると、マサキはそっと僕の唇に親指を押し当ててきました。
それからマサキは、ニッと笑ってみせると僕のおでこに優しく長いキスをしました。
僕はマサキが唇を離すまでの間、ドキドキして固まったまま、目の前に迫るマサキののどぼとけをじっと見つめていました。
時々ごくりと動くのどぼとけを眺めているうちに、僕はだんだんとマサキに身をゆだねてもいいのかなって気持ちになっていきました。
マサキは僕からゆっくり離れると、僕の頭をくしゃくしゃっと撫でました。
「…ケイは可愛いな。そんなに緊張すんなよ、心配いらないから」
でもマサキにそう言われて、やっぱり途端に恥ずかしくなってしまって、僕はついついまた文句を言ってしまいました。
「‥子供扱いすんなっ」
マサキはただ笑って、僕の唇を今度は人差し指でそっと押さえました。
僕はその仕草にまたドキっとしてしまい、その後に続ける言葉を失いました。

マサキは僕の唇に押し当てた指をそのまま唇の隙間に差し込んで唾液でしめらせると、ゆっくりと唇から順に下へ下へ唾液で線を描くように僕の身体に指を這わせていきました。
僕は何も出来ずにじっと身体を硬くしたまま、そのマサキの指の動きにゾワゾワと身体を震わせて感じていました。
マサキの指は、そろりそろりとあごからのどを通って、鎖骨の間、胸の間をゆっくり進み、腹筋の真ん中の割れ目をなぞると、おへそをそっとつついて、その先の恥ずかしい液をすくいとるようにして小さな茂みにもぐって、ずっと硬いままの僕のあそこにたどり着きました。
その途端、僕のあそこはピクンと跳ねて、また透明な液を垂らしてしまいました。
そこは皮を被って子供のまんまで、僕はマサキに「子供だろ?」って言われてるような気がして恥ずかしくなってしまいました。

「なあ…ケイ、これムケる?」
マサキは物欲しそうな熱い眼差しで、僕のをじっと見つめると、根元からスーッとなぞるように指先をすべらせていき、少しだけ覗いているピンク色の先端にそっと触れました。
「んんっっ!」
僕は首を横にふることしか出来ませんでした。
身体の芯がビリビリしびれて、そのあまりの衝撃に声も出ませんでした。
「‥なんか、血管が浮き上がって‥すごいな、ケイの熱くて‥ガッチガチ‥」
「言うな…」
僕は恥ずかしくって目をぎゅっとつぶりましたが、マサキにキュッと先端部分を握られると、その衝撃にすぐに目を開いてしまいました。
「‥なあ、少し痛いかもしんないけどさ、ちょっとずつムイてってみるから我慢しろな?」
僕は息がまともに出来なくて苦しかったんですが、マサキにゆだねることにしたんだと覚悟を決めて、コクっと小さく首を縦に振りました。
それを確認したマサキは、ニコッと微笑んで頷くと、ゆっくり僕の包皮を押し下げてムイていきました。
少しムイては戻して、また少しムイては戻してと、マサキは真剣な眼差しで唇を噛み締めて、少し強めに握った手を優しく上下に動かして、僕の包皮をムイていきました。
そのたびに、だんだんと皮に包まれていたピンク色の先端が、あらわになっていきました。
僕は包茎で、完全に皮を被ったままだったので、ムクことに慣れていなくて、その痛みと触られている快感に喘ぎながら首を振って耐えました。
「‥大丈夫か? 先っちょ、半分くらい見えてきたぞ。ほら、めっちゃきれいなピンク。ここを乗り越えればプルンってムケるから」
「‥痛い‥ん‥んっ‥ムリっ‥んっ‥も‥う‥ヤバいっ‥」
僕は途切れ途切れにしか言葉が言えず、ハアハア喘いで、身体はピリピリ震えていました。

いつの間にかコンポから流れていたスピッツの曲も終っていて、押入れの中は雨の音も遠く、僕の喘ぎ声とマサキの吐く息、身体のこすれる音がとても大きくいやらしく聞こえてしかたありませんでした。
他人に、しかもマサキに触られてこんなに感じてる自分が恥ずかしすぎて、身をゆだねる覚悟は出来たはずなのに、もういっそ記憶喪失になりたいくらいでした。
それでもマサキは僕のこと軽蔑するわけじゃなくて、すごく優しい眼差しで僕のことを見ると、ゆっくりと手を動かして、ガチガチに勃起した僕のをこすり続けました。

「そっか‥初めてだもんな。イッテいいよ。イカせてやる」
マサキは片手で上下するように僕のをこすりながら、もう片手で根元とタマのあたりを優しく揉んできました。
マサキが手を動かす度にくちゅくちゅとか、しゅこしゅことか僕のこすれる音がします。
「‥んんっ‥イカせて、やるって‥んっ‥なんだよ、偉そうな‥んん‥んんっ‥」
僕は思い出すのも恥ずかしいくらいに、我慢できなくて喘ぎ声をいっぱいあげながら身体を跳ねさせて感じてしまいました。
「ケイ、すっごいエロい。またどんどん濡れてきてトロトロだよ。見て」
マサキは目を輝かせて僕のでべとべとになった手を広げてかざします。
指と指の間を粘っこい透明な液が糸をひいていました。
「‥見せ‥んなっ!‥んはぁ!」
僕はもう我慢の限界にきていました。
ずいぶん長い時間に思えましたが、それでもきっと数分のことだったんだと思います。
僕はタマの付根あたりからツーンと突き上げて来るような刺激に、いままでにない焦燥感を感じました。
「も、ヤバ‥い‥なんかっ‥なんかっ‥すごい‥マサキ!‥漏れそっ‥バカ!‥漏れそう!」
それでもマサキは僕をみながら、手を上下にだんだんと速く動かしていきました。
くちゅくちゅって音がイヤラシく耳に響きました。
「いいよ! 出しちゃえ!」
「だって…ええ!?…このまま? ヤバい‥って! バカ! もう‥ああ!‥マサキ! ダメ! バカっ! 出ちゃう出ちゃう出ちゃう! んんっ! あああっ! マサキバカ! バカ! ‥イクっ!!」

マサキは最後の最後に僕の皮をくいっと引き下げてムキました。
その衝撃に、いままで堪えてきたものが一気に解放させられて、僕は腰を突き上げるように身体をのけ反らせ、恥ずかしいくらいの大きな声をあげてイってしまいました。
プルンとムケた先からは、びっくりするほどいっぱい精液が噴き出して、ぴゅくっぴゅくっと音をたてて僕のお腹や胸、首にまで降りかかりました。
僕はもう放心状態で、はぁはぁ息をしながら、快感が収まらない身体が勝手にピクンピクン跳ねているのをしばらく止められないままでいました。
「いっぱい出たなぁ…すっげえ…まだピクピクしてる」
マサキは興奮した顔で、僕のあそこを眺めていました。
僕のはまだ硬いままで、粘っこい少し黄色がかった白い液を垂らしながらピクピク震えていました。
ムキあげられたピンクの先端が露出されて、なんだか自分のものじゃないみたいに見えました。

「どうだった? 気持ちよかったか?」
マサキは嬉しそうにニッコニコで笑いかけてきました。
「…おまえなぁ‥」
「なに? 気持ちよかっただろ?」
満面の笑みを浮かべるマサキの手は僕の出した精液でねばねばと汚れていました。
僕は一気に恥ずかしさがこみ上げてきて顔を背けましたが、それでも気持ちよかったのは確かだったので、小さくコクっと頷きました。
「そっかぁ、良かったー! 約束だったからな。ちょっと待ってな、今拭いてやるから」
マサキはテキパキと手際よく箱ティッシュを手に取ると、僕の身体にいくつもの小さな水溜まりを作っている精液を拭き取ってくれました。
僕はなかなか息が整わなくて、ぜーはー息を吐きながら、ぐったりと身体の力が抜けてしまい、されるがままでぼんやりしていました。
「‥ごめん。ありがと、汚いのに…」
「汚くなんかねえよ」
マサキは怒るような口調で言いました。
「ケイのだったら汚くなんかゼンゼンないよ」
マサキは照れたように困った顔で僕を見て言いました。
押入れの中は僕の出した精液の匂いが充満してきて息がつまりそうでした。
マサキは指先で僕の胸に溜まった精液をすくって僕に見せてきました。
「まだあったかいよ。トロトロしてる。すごいよな、いっぱい出たんだぜ」
「いちいち言わなくていいよ、もう‥」
僕は恥ずかしくてまた顔を背けました。
マサキはニコニコ笑って僕を見ていました。
「ケイの匂いがいっぱいするな」
マサキはくんくん鼻をならして匂いを嗅いでいました。
「バカ‥変態」
マサキは、へへへと笑いました。
ホントそういう恥ずかしくなるようなことを平気で言えるマサキは変態だと心底思いました。

だんだんと息が整ってくると、それにあわせるように僕の勃起したものが小さくなっていきました。
マサキが拭きながらそれに気がついて、手を休めて眺めていました。
「ケイの、しぼんでいってる…あーあ‥皮戻っちゃった。ケイも仮性か」
「‥だから、わざわざ実況しなくてもいいってば」
僕のは元どおりに皮を被った状態に戻ってしまいました。
マサキは力の抜けている僕の両足を持ち上げて膝を立てるとM字に開いて、開いた股の間に身体を入れ、タマの裏側からおしりの穴に向かって垂れた精液を撫でるように拭くと、僕の縮んだのをそっと握って、皮をムイてやさしく丁寧に汚れを拭いてくれました。
僕はその体勢の恥ずかしさも含めて、そんなところをそんなふうに拭かれたらゾクゾクとまた感じてしまって「あっ」という声とともに、むくむくとあそこが大きくなりはじめてしまいました。
鎮まれ鎮まれと念じても僕のあそこは言うことを聴いてくれません。
むしろ反抗するように大きくなっていきました。
「また大きくなったな。ケイ、もう一回出すか?」
マサキが嬉しそうに固くなった僕のをこすり始めます。
その途端に僕のは恥ずかしいほど、あっという間にビンビンに勃ち上がりました。
「も‥もういいよ!」
僕は恥ずかしくて首を横に振りました。
もうこれ以上マサキの思うままにされるのは耐えられそうにありませんでした。
「もう、いいってば! 次はマサキの番だよ」
僕は腰を左右に揺らして離すように促しました。
でもマサキは僕のを離そうとはしないで握ったままだったので、自分で腰を動かせば動かすだけ刺激になって、僕は一方的にされるのとは違う気持ち良さに襲われました。
「俺はいいんだよ、あとでいくらでもひとりでするから。今はケイをすっげー気持ちよくさせてやりたいんだ。約束しただろ?」
気持ちよくさせてやるって言ったのはマサキで、僕は約束した覚えはありませんでしたが、マサキは律儀にそれを守ろうとしていました。
「もう‥充分だから!…そう何回も耐えられないよ」
僕はそう言いながらも気持ち良さに逆らえなくて、自分から腰を左右に揺するのを止められずにいました。
「でも、腰が動いてる。な? 気持ちいいだろ?」
マサキはニコニコ笑って、僕のをゆっくりとこすって先端の皮をムイたり被せたりしました。
「んんっ! それは‥んっ‥もう‥イヤだ!」
僕はあまりの快感に身体をピクンピクン跳ねさせて、また声が大きくなってしまいました。
「いいんだからな、俺にだったら素直に気持ちよかったら気持ちいいって言って。気持ちよくなることはゼンゼン恥ずかしいことじゃないんだから。俺なんか1回じゃ物足りなくて、2回なんてしょっちゅうだよ。あんなにいっぱい溜まってたんだから、まだまだ出るよ。ほら、気持ちいいだろ? ケイ、もっと自分で腰動かしてみ?」
マサキはニコっと笑うと皮をムイたところで手を動かすのを止めました。
僕は息が切れてハアハアしながら首を左右に振りました。
そんなふうに言われて自分から腰を動かすことなんて恥ずかしすぎて僕には出来そうもありませんでした。
「あ、見てみて、先っちょからまた先ばしりが出てきた」
そう言われて思わず見てしまいました。
僕の先端の割れ目から、ぷっくりふくらんで溢れ出た透明な液が光っていました。
マサキはそれを指先でこすりつけるように、ムケたばかりで敏感な先端に塗り広げました。

僕は悔しくもまた恥ずかしい声を上げて、あまりの刺激にのけ反って身体を跳ねさせてしまいました。
「やせ我慢すんなよ…気持ちいんだろ? もっとケイの声、聞かせてよ」
マサキが耳元まで顔を寄せてささやきます。
「…んんっ…僕ばっかり…さ…されるのはイヤなんだよ!…あ…んんっ…もう、恥ずかしんだよ、バカ!」
僕は、涙目でなんとかそう言って、僕のを握るマサキの手を離させようと、バカの一つ覚えで腰を大きく左右に振りました。
マサキはもちろん手を離さなくて、僕はただ気持ちよくなるだけでした。
「俺はケイにオナニーの気持ちよさをちゃんと感じて欲しいんだ。ひとりでする時も、ただたんに手だけ動かしてしごくのもいいけど、こうやって手で握っておいて腰を振ると気持ちいいんだ。ケイ、もっと腰振ってみ?」
僕はそれを聞いて、思わずマサキがひとりでそんなことしてる姿を想像してしまいました。
きっとこの押入れでマサキはいつもオナニーしてるんだろうなあ…マサキはどんな風にオナニーしてるんだろうとかってバカなことを考えてしまいました。
「おい、分かってるか? 横にじゃなくってさ、縦に腰振んだぞ?」
得意げになって言うマサキに対して、僕は分かっていても出来ないで、ジリジリともどかしい気持ちのまま腰を少しだけ浮かせて、マサキの顔をじっと見つめていました。
「なに?…どしたよ?」
僕はしんどくて、たぶん今にも泣きそうな顔だったんじゃないかと思います。
それくらい自分ではどうしたらいいか分からないでいました。
僕は気持ちよくなりたいくせに、自分から腰を振る勇気も、マサキに手を動かしてこすってくれと言う勇気もありませんでした。
ただマサキに握られたあそこをピクピクさせたままマサキのことをじっと見つめて、マサキがしてくれるのをぐっと堪えて待っていました。
僕は荒い息をはぁはぁ吐きながら、そのうちに頭がぼーっとしてきて、だんだんと何も考えられなくなっていくのを感じました。
マサキが僕のことをじっと見つめているのは分かりました。
マサキの吐く息も荒く、顔は高揚した様子で、瞳が潤んでキラキラして見えました。
「‥ほら、自分でやんなきゃ気持ちよくなんないんだぞ? 恥ずかしがんなよ。ケイが恥ずかしがると、俺だって恥ずかしくなるだろ?」
「そんなこと言ったってな…」
「…ほら、少しでいいから腰振ってみ?」
マサキは僕のおしりをそっと撫でるように片手を添えると、下からおしりを持ち上げるように押しました。
僕が自分で腰を動かすのを促すように、マサキの手は僕のおしりをそっとしか押しません。
何度もマサキは僕のおしりをそっと押すのですが、気持ちよくなるためには押しあげる力が全然足りなくて、僕はじれったくなりました。
まったくマサキの思うつぼでしたが、それをきっかけにして結局僕は、自分から腰をゆっくり押し上げていきました。
「ああ…」
僕は腰を上げることでマサキの手にこすられる気持ちよさに、甘い吐息を漏らしてしまいました。
マサキはそれを聞いてクスクスと笑っていました。
「ほら、気持ちいいだろ?」
マサキは僕のおしりに添えた手をそっと下ろしていきました。
それに併せて僕も腰を落としていきます。
そうすると、また僕のがマサキの手でこすられて、クチュッと音を立ててムケた皮が被されていきました。
「んん…はあ…」
自分でも自分の声がいやらしく聞こえて恥ずかしくてなりません。
僕は必死に我慢したんですが、また恥ずかしい声を漏らしてしまいました。
「こらっ、我慢すんなって」
マサキはトロンとした目で僕を見ながら、またそっとおしりを押し上げます。
僕は今度は少しためらって腰を上げるのを我慢しようとしたのですが、するとマサキの手に少し力がこもって、ぐっと僕のおしりを押した拍子に汗で滑ったのか、おしりの割れ目に指がツルンと滑り込んできて、僕のおしりの穴にクニっと触れました。
マサキの指がおしりの穴に触れた瞬間、ゾゾゾっと背筋が震えて、僕は「んああっ」と大きな声を上げて、身体をビクンと撥ね上げてしまいました。
その途端にマサキの手で僕のはこすられて、被さった皮がまたプルンとムケてピンク色の先端があらわになりました。
僕は身体をよじらせて、その快感に耐えました。
もう、気持ちよすぎて気が変になりそうでした。
僕は撥ね上げた腰をガクガク震わせながらゆっくり下ろしていくと、またマサキに握られた僕のがこすれて皮が戻って被さりました。
「‥どこ触ってんだよっ!」
僕は相変わらず息を切らせながらも抗議しました。
あまりの刺激の強さに耐えきれなくて涙が溢れてこぼれそうでしたけれど、マサキはきょとんとした顔で僕を見返すと、ニコっと笑って僕のおしりの穴をそっとなでるように指先で触れました。
「どこってここ?」
その途端に僕はまた変な声を出してビクンと腰を撥ね上げてしまいました。
もちろんまた僕のがこすられて皮がムケます。
「んんっ‥やめろっボケ! 変なとこ触んなって!」
僕は涙目でマサキを睨みました。
「変なとこって、おしりの穴だろ?」
マサキは可笑しそうに笑いながらそう言って、また僕のおしりの穴を指先でトントンと優しくタッチしてきました。
僕は精一杯歯を食いしばって声が出るのを我慢しましたが、身体の方は言うことがきかなくて、腰が大きく跳ねました。
腹筋にぎゅうっと力がこもって身体がぷるぷる震えました。
おしりにも力が入って、マサキの指を挟んだままでキュッと締まりました。
「‥わかってんだったら止めろボケっ! バカ! 汚いって! そこがどんなとこか分かんだろう!」
僕は必死になってマサキに言いました。
もう腰が勝手にガクガクしちゃって、そのたびにマサキの手で僕のがこすられて皮がムケたり被されたりしてクチュクチュ音をたてていました。
その気持ちよさも加わって、僕はもう腰を激しく振りたくなってしまって、その衝動を必死になって抑えました。
「そうだな‥触るとケイがすげえ気持ち良さそうな声だすとこだってことが分かったよ。…うんこするだけだと思ってたけど、意外だった。でもそっか、ちんちんも小便するだけだと思ってたけど違うもんな」
マサキは楽しそうに興奮して、すげえなって感心しながら、僕のおしりの穴をそっと指先でなぞったり、優しくつんつんつついたり、クニクニ押したりしてきました。

自分でもショックでした。
そんなところをマサキに触られていじられて、それで感じるなんて、まさか思いもよらなかったし、恥ずかしくて最低だと思いました。
それにホント汚い話ですけど、朝トイレ行ったし汚いから、とにかくマサキに止めろって言いましたが、あいつはバカだから止めませんでした。
でも僕もバカだからマサキにおしりの穴を触られるたびに、もう我慢が出来なくて、何度も大きな声を上げながら腰を上下に動かしてしまいました。
僕のはマサキの手の中でぐちゅぐちゅになってこすられていました。
マサキの手で皮がムケたり被ったりするたびにものすごい快感が僕をおかしくしていって、あんなに恥ずかしかったはずなのに、上下する腰はもう止められませんでした。
「‥イヤだ…やめ…やめろって…ヤバい、腰止まんない‥止まんないよ‥」
僕はもう恥ずかしさも吹き飛ぶくらいに快感を求めていたみたいです。
「もう俺なんもしてないよ? ケイめっちゃエッチくて‥なんか‥すげえ‥俺もヤバい」
マサキは興奮気味に息を吐きながら、ぽーっとした顔でただ僕を見ていました。
いつの間にかマサキは僕のおしりの穴をいじるのを止めていたのに、僕はもう自分から腰を振り続けていたんです。
腰を振るたびに僕はあまりにも気持ちよくて、もう自分の理性では止められませんでした。
こんなことしてちゃダメだと思ってみても、腰は勝手に動いちゃっていました。
僕は息が苦しくて、恥ずかしいのも気にならなくなってきて、身体を揺らして声をいっぱいあげて悶えました。
手が不自由なのがたまらず、僕はマサキをじっと見つめて懇願しました。
「頼む‥頼むからさ、Tシャツ脱がせて…なあ‥マサキお願い」
マサキを見ると、マサキは僕に負けないくらいに荒い息をハアハア吐きながら、いつの間にか立ち膝になって、自分でトランクスの上からあそこを握って腰を振っていました。
マサキのトランクスはさっきよりもシミがじわじわと範囲を広げていて、おしっこを漏らしたみたいになっていました。
マサキだって僕のこと言えないんじゃんか!って思いました。
「…マサキ?」
「…ああ‥ヤバい‥わりぃ…俺、我慢できんくなっちゃった…」
マサキはのぼせたみたいな上気した顔をして僕のほうを見ながら、腰と手を動かし続けて言いました。
肩を揺らして息をハアハアしながら、時々エッチな声で「あんっ」とか「んんっ」とかこぼしながら、すごく気持ち良さそうでした。
「マサキ‥おまえ、パンツがおもらししたみたいになってるぞ」
僕が指摘すると、マサキは確認するみたいにトランクスを見てから手を中に滑り込ませて、クチュクチュ音を立てて自分のをいじりはじめると、僕のほうをまたじっと見て言いました。
「‥だってさ、ケイがあんまりエッチいからさ…こっちだってこうなっちゃうよ‥」
当然だろみたいに僕のせいだと言われて、ちょっと納得いかなかったんですが、なんだかマサキを感じさせられたっていうのが少し嬉しくもあって優越感も感じたので、文句を言うのは止めてその代わりに僕は腰の振り過ぎでガクガクする足を頑張って片方持ち上げると、マサキのトランクスのおしり側のゴムに足の指をひっかけてずり下ろそうとこころみました。
自分でも腰を振りながら、片足だけでずり下ろそうとしてもうまいこといかなくて、ゴムをパチンとはじくだけでした。
「‥なにやってんだよ?」
マサキに笑われて僕は本気になって、腰を振るのはいったん止めて、両足でマサキのトランクスをずり下ろしにかかりました。
「脱がすんだ。マサキも脱げよ。僕ひとりこんな格好なのはおかしい」
僕は両足の指をかなり無茶な体勢でマサキのトランクスのゴムにひっかけることに成功すると、ずりずりと下ろしました。
「‥おい、ちょい待った! パンツのゴムが伸びるから止めろって! これ勝負パンツなんだからダメだって!」
ただの灰色のトランクスのどこが勝負パンツなのか分かりませんでしたけどマサキは慌ててました。
僕はマサキの抗議なんか無視して、足をつりそうになりながらも、強引にぐいぐいとトランクスをずり下げていきました。
マサキは笑いながら、おしりが丸出しになったあたりでトランクスを押さえました。
「分かった、分かったって! 自分で脱ぐから、もう止めろって!」
マサキはそう言うと、そのままなんのためらいもなくトランクスをずるっと下ろして脱ぎました。
マサキのが勢いよくプルンと飛び出して、パチンとお腹にぶつかりました。
マサキは自分のほうがデカイって言っていましたが、しょうじき勃起したマサキのは、僕のとほとんど同じくらいの大きさで、マサキのほうが身長が低いのでバランス的に大きく感じるってだけのことだと思いました。
それとマサキのは僕のと同じように皮が半分被っていて、そこからきれいなピンク色の先端が顔を覗かせている感じでした。
洗面所で見たとおりマサキの身体はきれいな小麦色なのに、股間のあたりだけは白くって、そのギャップがなんか子供みたいで可愛らしく思えました。
だけどマサキのは全体的に先端からトロトロと溢れ出た透明な液でテカテカ光っていて、お腹との間にもとろーっとした糸をひいてるし、それから、根元に少し生えてる茂みもしっとり濡れて黒々と光っていて、そのどれもが可愛らしいなんてものじゃなくて、なんだかすっごくいやらしい感じでした。
マサキのは、僕のと同じように血管を浮きあがらせて、元気に勢い良くピクンピクンと弾むように脈打っていました。
やっぱり僕のみたいにマサキのも先端の割れ目からにじみ出たとろりとした液が、皮のふちに溜まっていて、ピクンピクンと動くたびに今にもあふれてこぼれそうになっていました。
僕は初めてみるマサキの勃起したちんちんにすごく興奮して見とれてしまいました。
「‥なあ、マサキも仮性?」
「‥うん」
なんだかマサキは恥ずかしそうに僕から顔を背けて答えると、手で半分被った皮をそっとムキました。
皮をムクと皮のふちに溜まっていた液がたらーっと垂れて、ちょうど真下にあった僕のにかかりました。
僕のはピクンと反応してしまい、またマサキに何か言われるんじゃないかと思いましたが、マサキを見ると、マサキはそれに気付いていない様子で、プルンと剥き出しになったピンク色の先端部分を隠すみたいに手で握って、もじもじしていました。
「なに恥ずかしがってんだよ?」
僕は可笑しくなって、マサキが僕に散々言ってきた言葉を、今度は僕が笑ってマサキに言ってやりました。
「だってさ、こんなの誰にも見せたことねえんだもん! そりゃ恥ずかしいよ‥ケイにだから見せんだかんな」
マサキは口を尖らせながらも、少しずつ腰を揺らして、手で自分のをクニクニいじり始めていました。
僕はそれを見て、噴き出してしまいました。
「恥ずかしいって奴が、そんな腰揺すったりいじったりするか?」
「だってさ‥もう我慢の限界なんだよ俺。もうマジでヤバいんだから、イジワル言うなよ。ケイだって恥ずかしいって言いながら、さっきさんざん腰振ってたじゃんか。わかんだろ?」
マサキはそう反論すると、僕のも握ってきました。
「ほら、ケイもさっきみたいに腰振れよ。一緒に気持ちよくなろ? な?」
マサキはホントに我慢出来ないみたいで、どんどん腰の振り方が激しくなっていました。
マサキのは皮が被ったりムケたりしながらクチュクチュ、しゅこしゅこっていやらしいくらいに大きな音を出していました。
「んんっ‥あはぁっ‥んんっ‥」
僕の目の前でマサキはどんどんいやらしい声を漏らしながら腰を振り続けていました。
ハアハア息をしながら身体を揺らして、マサキの顔は切なそうな気持ち良さそうな、なんともいえないエッチな表情をしていました。
僕もそんなマサキを見ていたら胸がドキドキしてきて、まただんだんとエッチな気分になりました。
僕はすっかり恥ずかしいなんて思いは無くなって、マサキの手で握られている僕のを揺らしながら腰を振りました。
腰を振り始めるとすぐに、僕のからもクチュクチュ、しゅこしゅこって音がマサキの手でこすられて鳴り始めました。
マサキは僕が腰を振り始めたのを見て嬉しそうに笑うと、自分のも僕のも手でゆっくりこすり始めました。
僕は思わず大きな声で悶えてしまいました。
腰を振るだけでも気持ちよすぎるのに、それに手で刺激されたらもうすぐにでもイッちゃいそうでした。
マサキもすごく大きな声で悶えて、身体を揺すっていました。
マサキの先端からは溢れた透明な液がとろりと僕の上に何度も垂れました。
僕のはマサキのと僕のでびちょびちょでした。
僕はどんどん息が苦しくなると、やっぱりシャツを脱がして欲しくなって、身体と頭を大きく左右に振り乱して暴れてしまいました。
「‥なあ、やっぱりお願い! 頼むから‥Tシャツ脱がせて! ‥マサキお願いだから!  もうイヤだよ! こんなのイヤだ!」
マサキは半狂乱な僕の姿を見て、さすがにちょっとヒイたみたいで、涙をいっぱい溜めた僕の目を見ると途端に心配そうな顔になって腰を振るのも手を動かすのも止めて、僕の暴れる身体を両手でギュッと押さえました。
「ケイ! 分かったから! 分かったから落ち着いて、な? 今脱がしてやるから」
マサキは僕の顔を両手でそっと挟んで、僕の目をじっと見つめました。
「ごめん‥悪かった」
マサキはそう謝ると、僕の身体をそっと抱き寄せて起き上がらせると、ずっと僕の腕に絡まっていたTシャツを優しく丁寧に脱がしてくれました。
僕はようやく自由になれたことと、マサキに優しくされたことでほっとして、思わず涙がこぼれそうになりました。
「バカ、泣くなよ」
マサキは心配そうな顔して僕の顔を覗きこんでそう言うと、脱がしたTシャツを顔に押し付けてきました。
「バカ、泣くかよっ! ふざけんなっ!」
僕は強がってそう言うと、バレないように涙を拭いたTシャツを突き返して、マサキの胸を軽くパンチしました。
マサキは大げさに痛がるフリをすると、まだ少し心配そうな顔で笑って、それから僕の身体をギュッと抱きしめてきました。
「‥ホントごめんな」
僕の耳元でマサキは震える声でまた謝りました。
僕のことを抱きしめるマサキの身体も少し震えていました。
僕は心臓がドキドキしました。
汗で濡れたお互いの肌が触れ合って、マサキの熱が伝わってきます。
マサキの心臓のドキドキも僕のドキドキと同じくらいに激しくて、混ざりあってどちらの心臓の音なのか分からなくなりました。
マサキの熱い息が首もとに吹きかかります。
僕はなんて言っていいのか分からなくて、ただそっと、恐る恐る両手をマサキの背中に回しました。
マサキの背中も熱くて汗でびっしょり濡れていました。
マサキは僕が背中に手を回すと、抱きしめる力を加えて身体をもっと密着させました。
「…ごめんな」
マサキの身体はめちゃくちゃ熱くて、特に、その、マサキのあそこはすごく熱くて、僕のお腹に当ってピクンピクン脈打っているのが感じられました。
僕のもマサキのお腹に当ってピクンピクンしているのが分かります。
マサキの抱きしめる力はギュウっと強くて苦しいくらいで、僕の吐く息もマサキの吐く息に合わせるようにどんどん荒くなっていきました。
「…マサキ…ちょい苦しい…」
僕はマサキの背中に回していた手をマサキの肩に掛けて、身体を離すように促しました。
「…ごめん」
けれどマサキは、さらに抱きしめる力を強くして、僕の身体を離すまいと必死にしがみついてきました。
「‥俺のこと…嫌いになんないで…」
マサキの声はぶるぶる震えて消え入りそうな弱さで、いつもの明るいマサキとはまるで違っていました。
僕は胸がざわざわして不安になりました。
マサキの身体はかちんかちんに固まって、依然ぶるぶる震えていました。
僕は肩にポタポタと滴り落ちるものを感じて、まさかマサキ泣いてんのか?と驚きました。
「…お願いします…嫌いになんないで下さい…」
僕が不安と驚きと動揺で何も答えられずにいると、マサキはまた小さな声を震わせながら僕の耳元でそう言って、しゃくり上げて、鼻水をすする音も聞こえてきました。
僕の肩はポタポタ止めどなくしたたり落ちてくる雫に濡れています。
マサキが泣いてる!と確信した僕は、急に胸がムギューっと鷲掴みにされたみたいに痛くなって、なぜだか僕まで涙があふれそうになりました。
いつも陽気で明るくてバカ元気なマサキが泣いてる姿なんて見たことが一度もなかったし、想像もできなくて、僕はマサキが泣いてるだけでこんなに心細くなるなんて思いもしませんでした。
僕にはマサキがどうして泣いているのかがよく分かりませんでしたが、とにかくマサキに泣き止んで欲しくて、笑顔を見せて欲しくて、ただマサキの力になってやりたいって気持ちで強くマサキのことを抱きしめました。
マサキはキツかったらしくて「うっ」って呻き声を漏らしていましたが、僕にしがみつく力を少し弱めました。
「…だいじょぶ…だいじょぶだよ」
僕はなるべく声が震えちゃわないように、ゆっくりとマサキにしゃべりかけました。
「…別に、いまさら嫌いになんかなんないよ」
それからしばらく黙ったまま抱き合っていると、マサキの震える身体も少しずつ収まってきて、固くなっていた筋肉も柔らかさを戻し、しゃくり上げる回数も少なくなっていきました。
マサキにさんざんもてあそばれて、恥ずかしい姿もいっぱい見られて、イカされて‥泣きたいのはむしろ僕のほうなのに、どうしてこうなっちゃうんだ?と不思議に思いながらも、僕は家で飼ってる犬にしてやるみたいに、マサキの頭をよしよしと撫でながら、震える背中を優しくさすってあげました。
マサキのニコニコ顔にも負けるけど、こうしてマサキに泣かれると、とてもじゃないけどかなわないと思いました。
マサキは僕の両ももの上にまたがるように乗っかって座り、身体を密着させたまま肩にあごを乗せて、僕の首に腕を巻き付けるようにして抱きついたままでいました。
泣いたりしてるってのに、マサキのが熱く硬いままなのが密着しているとよく分かりました。
僕のもマサキのことは言えません。
マサキのお腹に当ってずっと硬いままでした。
「…おい、ばかちん‥落ち着いたか?」
マサキの頭を優しくポンと叩いて僕が聞くと、マサキは鼻をすすりながら肩に乗っけたあごをこくんと小さく動かしました。
一緒に僕の肩も揺れると、肩胛骨のくぼみに溜まっていたマサキの涙がつつーっと僕の肌を伝ってこぼれ落ちていきました。
「‥ゴメン、ちょっと取り乱し過ぎたよ…。びっくりしたよな?」
僕はマサキの頭をゆっくり撫でながら、勇気を出して話しかけました。
「‥あれはさ、マサキがイヤだったんじゃなくてさ‥その‥あんまり気持ちよすぎるから、気が変になりそうで‥。なんか‥あのまま一方的にまたイカされるのがイヤで‥とにかく手を自由にして欲しくって…その‥そしたらさ、自分でも出来るし…その…なんつーか…」
僕は胸がドキドキして声が震えそうなのを必死になって堪えながら続けました。
「‥僕だって‥されるだけじゃなくて…マサキの‥その‥少しは気持ちよくさせたいってゆーか…。‥バカっ‥マサキが、一緒に気持ちよくなろって言ったんじゃんか…ちゃんと一緒がよかったんだよ‥」
僕は途中から、言葉が詰まってしまって、うまく喋れませんでした。
ただもう恥ずかしくって、顔が熱くて、しばらく黙って顔の火照りが冷めるのを待ちました。
マサキも何も言わないで、まだ時々涙をこぼしながら鼻をすすって、ただギュッと僕に抱きついていました。

マサキが子供みたいに、ぐすんぐすんと鼻をすするのを聞いているうちに、僕はマサキの顔がどうしょうもなく見たくなってきて、首を向けようとしたんですが、マサキにがっちりガードされて首を向けられませんでした。
「…あの‥マサキの顔が見たいんだけど」
僕は恥ずかしいのを堪えて勇気を出して言ったのに、マサキに首を振って拒否されました。
「え…なあ、顔見してよ?」
「…ダメ」
マサキは僕の首すじに口を押し付けるようにして言いました。
首すじに触れるマサキの唇と、マサキの鼻声に、僕はなんだか胸がキュンとなりました。
「なんだよいいじゃん。見せろよ、ケチだな」
「…ケチじゃないよ。言いがかりはよせよ」
僕はどこかで聞いたそのやりとりに思わず笑いそうになりながら、次に続ける言葉を思い返して言いました。
「いいや、マサキはけちんぼだ。あ、ムケチンポだっけ?」
僕は自分で言っておいて、その下ネタに「最低だな‥」と溜め息をついてしまいました。
そんな僕の肩にマサキの噴き出す息が勢い良く吹きかかりました。
僕の首に巻きついた腕に力がこもり、マサキの肩が小刻みに上下しています。
「半ムケだけどな」
マサキはそう言って身体を揺らして笑いました。
マサキが笑うと僕まで嬉しくなってきて、ホントバカみたいなサイテーな下ネタだったけど、言ってみてよかったなと思いました。
「僕もだよ」
僕もなんだか可笑しくなって一緒になって笑いました。
ようやくマサキのガードも緩んで、僕は首をよじってすごく久し振りな気持ちでマサキの顔を覗き込みました。
「見んなよっ」
だけどマサキはやっぱり嫌がって、すぐに僕の顔をぐいと手で押しのけました。
「いてて‥なにすんだよ」
僕はその手を掴んで押さえましたが、またもう片方の手が伸びてきて、僕の顔を押しのけました。
「見んなって!」
僕はその手も捕まえて押さえつけました。
「いや、見るって! 僕は見たいんだ。僕にだったら何でも見せられんじゃないのかよ?」
僕はマサキの両手を捕まえて、ようやく顔をちゃんと見ようとしましたが、それでもマサキは身体をよじって、首を右に左に振って見せようとしませんでした。
「ダメだよ、こんなみっともない顔見せらんないって! 見んなっ!」
マサキは往生際悪くじたばた暴れましたが、僕は負けじとマサキの暴れる身体を叱りつけて抱き寄せると、力一杯抱きしめて押さえつけました。
「こらっ! マサキっ!」
抱きしめると僕の顔のほんのちょっと先にマサキの泣き腫らした顔がありました。
「んんーっ!」
マサキはうめき声をあげて精一杯首をよじって、僕から顔を背けていました。
「マサキ‥いいからこっち向きな?」
僕はマサキをじっと見つめて優しく言いました。
「‥マサキの顔、ちゃんと見せてよ」
マサキはしばらく抵抗していましたが、次第に諦めたのか、力が緩んでいって、僕のほうを向きました。
鼻と鼻が触れあうくらいの距離で僕とマサキは向き合いました。
うつむくマサキの大きな目は、涙で潤んで赤くなっていました。
頬には流した涙の跡が、筋になって何本も残っています。
鼻からは少し透明な鼻水が垂れていました。
その泣き顔がなんだか子供みたいで、マサキのことがたまらなく可愛らしく思えました。
マサキは唇をぎゅっときつく結んで、上目遣いに僕を見ていました。
僕はニコっと笑って、おでこをごつんとマサキのおでこにぶつけました。
「いてっ」
マサキが小さく痛がりました。
「‥おまえって、ほんとに見た目にこだわるんだな」
僕はおでこをぶつけたままマサキの目を覗き込むように見つめて、呆れてくすくすと笑いました。
「‥うるさい」
マサキは僕から目を逸らして、涙をこぼします。
「確かに、かっこいい顔が台無しだな」
「‥みっともないだろ? …俺‥滅多に泣かないんだけどさ‥その代わり泣いちゃう時はハンパないんだ。‥もう涙が止まんなくなっちゃって、ひっでえの‥こんなのケイに見せたくねーよ‥」
そう言うマサキの目からは、まつげを震わせてまた涙がこぼれました。
「マサキって面白いよな…平気で僕の前で腰振って見せたのに、泣き顔はダメなんてさ」
「‥ほっとけよ‥もう見んなよぉ‥バカァ‥」
マサキは鼻水をずるずるすすりながら、顔をくしゃくしゃにして泣きました。
「バーカ。誰がバカだ誰が」
僕は笑って、ポロポロこぼれてくるマサキの涙を指で拭いてあげました。
「別にいんじゃん? …別にさ、みっともないマサキも僕は良いと思うよ?」
僕は正直に思ったままのことを言いました。
別にみっともなくても、かっこわるくても、それはそれでマサキに違いなくて、それでマサキのことを軽蔑したり嫌いになったりすることはないんじゃないかなって思えました。
マサキは目を大きくして僕をじっと見つめると、また大粒の涙をこぼしました。
「泣く子は、いねか~」
僕はにっこり笑いかけて、マサキの顔を両手で挟んで、もみくちゃに揉みました。
「おまえはかっこよすぎるからな、少しはみっともないほうがいいよ」
僕はマサキの頭を力を込めてガシガシ撫でてやりました。
マサキの涙はようやく涸れたみたいで、マサキは小さくうなずくと、ぎこちないけどニッコリ柔らかい笑顔を作って見せてくれました。
やっぱり僕はその笑顔に負けそうでした。
「そこ笑うとこじゃないぞ。そんなかっこよくないよとかって、少しは謙遜しろよ」
そう言いながらも僕は、マサキの笑顔を見れて、ほっとして笑いました。
マサキも照れたみたいに笑いました。
僕は両手でマサキの顔を挟んで、親指で撫でるように涙の流れた痕をなぞると、マサキの大きな目に溜まった涙を絞り出すように、閉じたまぶたの上からきゅうっと撫でました。
それから僕はマサキの涙に濡れた親指にそっと口をつけました。
ぺろっと少しだけ舌を出して舐めてみると、マサキの涙の味がしょっぱくて、顔をちょっと歪めました。
「んー‥マサキの味。少ししょっぱい」
ぽかんと口を開けて驚いているマサキに、僕はニッと笑ってやりました。
「バ‥バカか!? よせよっ!」
マサキは面白いくらいに動揺して、僕なんかよりももっと恥ずかしがって目をきょろきょろさせて、僕の胸元に顔を埋めました。
勢いよくガツンとぶつかってきて少し痛かったんですが、僕はマサキを抱きとめて笑いました。
「‥ちくしょー、ケイにはかなわないよ‥こうなると思ったんだ。‥やっぱりTシャツ脱がすんじゃなかった」
「こらっどういう意味だよ?」
マサキは僕の胸元に顔を埋めたまま、ぐすんぐすん鼻をすすっていましたが、それでも垂れてくる鼻水を、ぐりぐり顔を押し付けて、僕の胸にこすりつけてきました。
「こらこら、鼻水を拭くな」
「ごめんな‥」
マサキは顔を胸に埋めたまま、また急に謝りました。
「謝るんだったら、すんな」
「‥ごめん」
マサキは、へへへっと笑ってから、また謝りました。
「何度も謝んなよ」
「ううん、違うんだ」
マサキは僕の胸にこすりつけるように頭を振って言いました。
「なにが?」
「たぶんまた、ケイにヒドいことしちゃうかもしんないから。先に謝っとこうと思って」
「‥おい、それはやめろよ?」
「…」
「…おい?」
マサキからはなんの返事もなく、僕は不安になりました。
「ありがとな」
マサキは僕の背中に腕を回すと、ギュッと抱きついて身体を密着させてきました。
「…おい、なに? 今度はなんだよ?」
「…なんでもないよ、バカ」
マサキは僕の胸に顔をギュウっと押し付けるようにさらに密着して僕に抱きついてきました。
ぎゅうぎゅうとマサキの身体が僕の身体を押してきます。
少し元気がなくなっていたマサキのあそこも、また硬さを戻して僕のお腹でピクンピクン激しく脈打っています。
呼応するみたいに僕のもピクンピクンと脈打ち始めました。
「…なあ、ひとつ聞いてもいい?」
「…うん?」
僕はずっと気になっていたことをマサキに切り出しました。
「洗面所でさ‥見たマサキのはムケてたけど…あれは、僕に見られると思って‥ていうか見せるためにムイてたの?」
「…」
マサキから返事はありませんでした。
「なあ? どうなんだよ?」
突然、僕の胸に痛みが走りました。
「いって!」
図星だったみたいで、マサキは僕の胸にかじりついたんです。
「ケイには俺の一番いい状態を見て欲しかったんだよ!」
口を尖らせたマサキが、顔を上げて僕を見上げました。
僕はマサキのおでこを叩いて、噛み付かれた胸を撫でました。
胸には綺麗にマサキの歯型がついていました。
「あーっ! 歯型ついてるし。どうすんだよ、これ。部活で着替える時に見られたら、なんて言えばいいんだよ?」
マサキは楽しそうにケラケラ笑いました。
「俺に噛まれたって言えばいいじゃん」
「そんなこと言えるか!」
マサキは面白がってさらに僕の肩に噛み付いてきました。
「いって! こらっ、噛み付き禁止! 保健所連れてくぞ?」
僕はマサキの頭をパコンッとめいっぱい叩きました。
「いてっ、俺は犬か!?」
噛み付くのを止めたマサキは頭をさすって口を尖らせました。
「あれ、違うの?」
僕がそう言うと、マサキは「うーっわんっ」と犬の鳴きまねをして、噛み付いた痕をぺろぺろ舐めました。
「あんっ‥止めろよ、ホント犬みたいだな」
僕はマサキに肩から首にかけて舐められて、気持ち良さにゾゾゾと鳥肌を立てて感じてしまいました。
マサキはホントに犬みたいにぺろぺろと舐め続けて、僕の首もとから耳へと攻めてきました。
「ケイは犬とこんなことしてんの?」
僕の耳たぶを舐めたマサキは、ささやくように言って、耳の穴に舌を差し込んで更にチロチロと舐めました。
僕はそのこそばゆさに身体をくねらせ、マサキの腕をギュッと掴んで、たまらずにまた喘いでしまいました。
「あ‥んんっ…するわけ‥ないだろっ‥」
マサキは汗で濡れた身体を滑らせるように僕の身体に密着させると、腰を揺すってカチカチに勃起してるマサキのを僕のお腹にこすりつけてきました。
気持ちイイみたいでマサキの口からは、いやらしい吐息が漏れて僕の耳に吹きかかりました。
僕のお腹では、くちゅくちゅとマサキの先端からこぼれた液で濡れた肌がこすりつけられるたびにエッチな音をたてています。
そのマサキの姿に、僕はほんとに家で飼ってる犬を思い出してしまいました。
家の犬は、誰にでも構わず足に飛びついては腰をカクカク振ってしまうので去勢されてしまったんですが、それでも今なお足に飛びついてきて腰を振っているような犬なんです。

「マサキは家のバカ犬みたいだな」
「まだ言うか?」
腰を押し付けながらマサキは僕の顔を見てふくれました。
「トマって言うんだけどさ、一度会いに来いよ、ホントそっくりだからさ。おまえら仲良くなれるよきっと」
僕は家の犬を思い出しながら、マサキのふくれた顔を見て笑ってしまいました。
マサキの目はトロンとして気持ち良さそうで、腰振ってる時のトマの目にもそっくりでした。

トマは雑種ですが愛嬌があって、誰からも貰い手がなくってたらい回しにされた挙げ句に家にやって来た時、テンションあがっちゃって、勢い良く走り過ぎて止まれなくなり、田んぼに落っこちたトンマな犬で、トンマから運がついてないからンを取ってトマになりました。

「あんまり人のことバカにして笑うと、また襲っちゃうぞ!」
マサキは鼻息荒くさっきとは反対側の僕の首にガブっとかじりつくと、痛がる僕を無視してちゅうちゅう吸いついて、ぺろぺろ耳まで舐めあげると、耳たぶを優しく噛んできました。
「あんっ‥バカっ! よせよ!」
僕はまた身体をゾクゾクと震わせて吐息を吐いて感じてしまいました。
気持ちイイけど悔しくもあって、僕はされてばっかりじゃダメだと思って反撃に出ることにしました。
「あんまりワルさばっかりしてるとな、去勢されちゃうんだぞ?」
僕は、さっきからお腹にぐりぐり押し付けられているマサキの硬くてヌルヌルのあそこに手を伸ばして「えいっ」と勢い良く握ってやりました。
マサキは途端に「んんんっ!」と声にならないうめき声を出して驚いて僕の顔を見ました。
僕は僕で、初めてジカに触る他人のちんちんにドキドキしていました。
マサキのは硬くて、ドクンドクンしていて、とにかく熱くて、それにヌルヌルでした。
勃起したちんちんって、こんな感触なんだとすごく興奮して、僕はなんの抵抗もなくマサキのをぎゅっぎゅっと握りました。
マサキが僕のを握ってきた時のことを思い出しました。
僕はマサキもこんなふうに感じてたのかもしれないなと思うと、あんなふうに僕のをしたことも仕方ないかもしれないなとまで思えました。
僕が力を入れて握るたびにマサキは大きな目をさらに大きく開いて僕を見ると「あっ‥あっ」と声を出しました。
それで僕もなんだか嬉しいというかさらに興奮して、マサキが僕にしたように、マサキのをゆっくりと上下にこすってみました。
僕が手を動かすたびに、僕のと同じようにマサキのからも、くちゅっくちゅっ、しゅこっしゅこっとこすれる音がしました。
マサキは僕の肩におでこを強く押し当てて、唇を噛み締め、ぎゅっと目をつぶって気持ち良さに耐えている様子でした。
「…気持ちいい?」
僕が顔を覗いて確かめると、マサキはうんうん何度も頷いて「はぁぁ‥」と甘い息を吐きました。
僕は、してあげることの喜びというか、マサキを気持ちよがらせる愉しみみたいなものを感じていました。
きっとマサキもそうだったんだろうと思うと、僕はまたマサキが僕にしてきた数々のエッチなことを思い出して「くっそー、愉しみやがってー!」と頭にきました。
されるのはそりゃ気持ちイイけど、するのもすごくイイってことに気付いた僕は、腰を振り始めたマサキのあそこをシコシコしごいてあげながら、マサキが僕にしたみたいに首筋を耳までぺろっと舐めあげてみました。
「んんんっ‥」
マサキの喘ぎ声が僕の耳元で漏れました。
握っているマサキのが大きく弾むように手の中で跳ねます。
マサキはぷるぷると身体を震わせて、腰を振るのを止めると僕の首にギュウッとしがみついてきました。
マサキの身体は熱く火照って汗を流し、息は荒く、激しい鼓動が伝わってきます。
「‥ヤバ…もうイキそ‥」
頭を振るマサキの声が苦しそうに震えていました。
「‥そか…どうする? …どうして欲し?」
僕は自分のことのようにドキドキしながら、マサキの顔に掛かる前髪を手でそっと払いのけて、潤んだ瞳を覗き込みました。
マサキは今にもこぼれそうな涙を目に溢れさせて、小刻みに震えるアヒル口をパクパクさせて僕を見ました。
「…もっと…もっと…いっぱい…気持ちよくなりたい…一緒に…ケイと…すげー気持ちよくなりたい…まだイッちゃいたくないよ…」
とマサキは涙をこぼしました。
僕には、いいからイッちゃえって言ったくせに、ずいぶん違うなと思って、少し笑ってしまいました。
「…じゃ、なんもしないよ? イッちゃいそうなんだろ?」
僕は握っていたマサキのからそっと手を離してマサキを見ました。
マサキは首を横に振って嫌がりました。
それから、すごく恥ずかしそうに涙に濡れた目を伏せて小さい声で言いました。
「…いいから…して欲しい…」
「なに?」
「触ってて…いいから…またギュッて…して欲しい…」
マサキは震える手で僕の手をそっと掴んで、ピクンピクンしているマサキのものを触らせました。
僕はそっと、あまり刺激してイッちゃわないように気を遣いながら、マサキのに手をかけました。
マサキは気持ち良さそうに「んっ」と声をこぼすと、深く息を吐きました。
僕はなんだかマサキが可笑しくて小さく笑うと、マサキの身体を片方の手でギュッと強く抱きしめました。
マサキも顔を僕の首もとに埋めると両手を回して強く抱きしめてきました。
僕はすぐ真横にあるマサキの顔を眺めました。
マサキは目を閉じて、薄く開いた唇の隙間から静かに息をしています。
さっき溢れた涙がまだ、まつげのふちに雫になって残っていました。
僕はそっと顔を横に倒してマサキの目元にキスすると、涙を舌先でチロッと吸い取りました。
マサキはくすぐったそうに顔を小さく振って、僕のほうに顔を向けました。
マサキの前髪が僕の頬をかすめて、お互いの鼻と鼻がぶつかりました。
見つめ合うと、マサキの大きな潤んだ瞳に吸い込まれそうになります。
マサキも僕もじっと見つめあったまま、深く長い呼吸を何回も繰り返していました。
心臓が痛いくらいにドキドキしていて、頭に血が上ってきているのか、どんどん熱くぼーっとしていきました。
あと数センチのところにマサキのアヒル口が少し開いたり閉じたりしながら息をしています。
キスしちゃうのかな‥? してもいいのかな‥? と僕は戸惑っていました。

キスってホントに好きな人とするものだと思っていたし、マサキだってそう言っていたから、ここでキスしたら好きだって言ってるようなもので、それって友達とか親友とかじゃなく、恋人ってことになるんじゃないのかって、僕はまた余計なことを、のぼせてきて働かない頭の中でぐるぐると考え始めていたんです。

それでも、マサキとだったら‥と思って、実際にしようとすると、やっぱりもうめちゃくちゃ恥ずかしいし、照れくさくなって、僕はほんの数センチ先にあるマサキの唇にキスすることが出来ませんでした。
マサキもそうだったのかも知れません。
どちらからともなく、照れて笑いだしてしまいました。
そして、キスする代わりにマサキは鼻を僕の鼻にぐりぐりと押し付けてきたんです。
やっぱりマサキは犬みたいだなと可笑しく思いながら、僕も負けじと鼻をこすりつけるようにしてマサキの鼻を押し返しました。
二人してバカみたいにそんなことをふざけて繰り返し、笑いました。
鼻を押し付けあうたびに、何度もお互いの唇が触れあいそうになりましたが、そのたびに恥ずかしくなって照れて笑って、なんだかホントバカみたいでした。

それでも僕には十分刺激的で、興奮してだんだんと息が荒くなって、目の前のマサキの目もトロンとしてきていて、いつの間にかお互いに笑わなくなっていました。
マサキは僕の背中に回していた手をゆっくりといやらしく動かして、僕の背中や脇腹を撫で始めていました。
僕もマサキの背中を撫でながら、握っていたマサキのをゆっくりと指で撫でてやりました。
皮をムイた先端から根元まで指を絡めるように撫でて、タマも撫でたり揉んだりしました。
マサキはびくびくっと身体を震わせると、僕の肩に爪をたててギュッと掴んで背中をのけ反らせ、大きな声で喘ぎました。
よっぽど気持ちよかったみたいで、それからマサキは僕の頭を抱え込むように抱きついてきました。

僕の顔はマサキの胸に押しつけられました。
すぐそこにはピコンと立ったマサキの乳首があって、僕は恐る恐るそこに舌を伸ばしてみました。
ツンと舌先でつつくように舐めると、マサキは「はんんっ‥」と喘いで、ぎゅうっと僕の頭を強く抱え込みました。
僕はさらに顔を胸に押し付けられるかたちになって息苦しかったけれど、これはもっと舐めて欲しいのかなと思って、ぐいぐいと顔を胸にこすりつけるようにして隙間をつくると、マサキの乳首をぺろぺろと舐めました。
マサキはハアハア激しく息をしながら、また腰をくねらせ始めました。
マサキの乳首は汗で少ししょっぱくて、コリッとした硬さがありました。
その感触が面白くてぺろぺろっと何回も舐めていると、マサキは「あっ‥あっ‥」と気持ち良さそうな声を出して、両手で僕の髪をもみくちゃにしました。
僕はマサキの激しい感じっぷりに刺激されて、なんだか舐めるだけじゃもの足りなくなってきて、マサキのピンと立った乳首をカリっとかじってみました。
その途端、マサキは「うああっ!」と声を張り上げ、両手でギュウッと僕の頭を締め付けてきました。
全身を小刻みに震わせて、ハアハア息をしながらマサキは僕の頭におでこを押し当てました。
見上げると、マサキの吐く熱い息と、汗なのか涙なのか、垂れてきたものが僕の頬にかかりました。
「‥もうダメ…スゴい…ケイのエッチ…ヤバすぎだよ…」
「どっちがだよ。マサキのスケベ」
ダメとか言いながらも、されるのをちっとも嫌がってないし‥どちらかっていうともっとして欲しそうな顔してるじゃんか‥マサキの顔のほうがエッチでヤバいよ!と僕は思いました。
「そ‥そっか? これでも‥けっこう抑えてるんだぜ? …ホントの俺はもっとエロいよ」
しがみつきながら息をぜえはぁして言われても、ちっともエロくないし、サマになっていなくて、僕は笑ってしまいました。
「やせ我慢すんなよ、見栄張っちゃって。限界のくせに」
マサキも笑って、さらに息が苦しそうでした。
「わ‥わかる? …俺、もう限界かも‥マジで‥。こんなに‥してもらうのが気持ちイイなんて知らなかった」
確かにマサキのは、さっきからドクンドクンと、いつイッちゃっても不思議じゃないくらいに激しく脈動していてヤバそうでした。
マサキのを見ると、先っぽからは透明な液がトロトロと溢れ続けていて、ヌルヌルに僕の手を濡らしていました。
なんでか僕のも、さっきから触ってないっていうのに先っぽから同じように透明な液を漏らしていて、いつイッちゃってもおかしくないくらいに激しく脈動していました。
マサキのが僕の手の中でピクンと動けば、僕のもピクンと同じように動いて、見た目も含めて僕らのは双子みたいにそっくりでした。
「‥なあ、ひとつ聞いてもいい?」
「‥なんだよ?‥ケイは質問好きだな」
「…マサキさ、さっきマサキのほうが大きいって言ったけどさ…これ、僕のとかわんなくない?」
僕はそう言ってぐりぐりとマサキのを揺さぶりました。
マサキは切なそうに眉毛を寄せて、僕を見ました。
それから僕のあそこに目を落とすと、じーっと見つめて自分のと見比べていました。
「…じゃあ…くらべてみる?」
はぁはぁ喘ぐマサキはごくりと唾を飲み込むと、僕のに手を伸ばしてそっと握りました。
それから浮かせていた腰を落とすと、マサキのものが並ぶように腰を寄せて付根と付根がくっつくように密着させました。
そしてお互いの反り返っている先端をくっつけるように指でそっと押さえました。
マサキの熱く硬い感触が僕のに触れて、なんだかすごくドキドキしました。
二本くっつけて並べてみると、色も形も長さも太さもそっくりなのがよく分かりました。
「ほら‥かわんなくない? こうするとどっちがどっちのかわかんないよ」
僕は片手でそっとふたりのものを優しく握りました。
僕のもマサキのも握ると熱くてドクンドクンしていました。
「‥んん‥だけど、ほら‥やっぱり少しだけ俺のが長いって」
マサキはふたりの高さを比べるために、先端を指先でこすって、その微妙な違いを主張しました。
確かにマサキのほうが、ほんのちょっとだけ僕のより長くて、こする指が引っかかるように動きました。
何度も先端をこすられると、どっちが長いとかそんなのどうでもいい気分になって、快感に僕はマサキと一緒に喘ぎ声を漏らしました。
ヌルヌルの液がお互いの先端から溢れてきます。
「‥こんなの‥どんぐりの背比べだよ」
「‥でも俺の勝ちだろ?」
マサキは嬉しそうに勝ち誇った顔でニッと笑うと、僕の手の上から手を重ねて包み込むようにふたりのものを握って、ゆっくりと上下に動かしました。
くちゅくちゅとふたりのものがこすりあって、いやらしい音が響きました。
一緒に握られてこすられると、マサキの熱や硬さがジカにビンビン伝わってきて、ものすごい快感に襲われました。
マサキの温かくてヌルヌルしている指が、僕の指と絡まるようにして、ぐにぐにとふたりのものを巻き付けるように動きます。
僕の手もすでにヌルヌルで、マサキが手を動かすたびに一緒に動いて僕のとマサキのを刺激してしまいます。
気持ちよすぎて、僕もマサキもはぁはぁと熱い息を吐きながら大きな声で喘いでいました。
僕のとマサキのは、ふたりの手の中でぐりぐりとねじりあうようにこすりあわされると、ほんとにどっちがどっちのなのかわかりませんでした。
「‥んん‥なんか‥双子みたいだ‥」
「ああ…ん…ソーセージみたいって言いたいの?」
マサキがバカみたいにまた下ネタを言うので、僕はマサキの乳首をキュっとつねってやりました。
「イっ!‥んんっ‥」
マサキは身体をよじって痛そうな気持ち良さそうな声を出しました。
「‥なんだよそれ?」
「なんか‥イタ気持ちイイ…。ケイってSだよな…」
「アホ」
僕はなんだかそう言われて恥ずかしくなって、照れてまた乳首をグリグリつねりました。
「イっ…はぁん…」
マサキは今度も身体をよじって、聞いてるこっちが恥ずかしくなっちゃうような声を出しました。
「やめろって」
「仕方ないだろ出ちゃうんだから…ケイにこんなことされて感じないでいられるかって…ケイももっと声出せよ」
目つきが変わったと思ったら、マサキはすぐに僕の乳首を指でグリっと押すように突ついてきました。
「はんっ…よせって…」
僕はピクンと身体を弾ませて声を出してしまいました。
マサキは嬉しそうに笑って、さらにしつこく突ついてきました。
僕も負けずにマサキに突つかれないようにガードしながら、マサキの乳首を突つきました。
「んっ…ケイのその声…俺好きだな…もっと聞かせてよ」
僕は恥ずかしくてなるべく堪えましたが、それでも乳首を突つかれると喘いでしまいました。
「んっんっ…やっ…やめろっ」
気持ち良くなって身体に力が入らなくなった僕は、諦めてマサキにされるがままに乳首をいじられると、喘ぎ声も堪えられなくて、その快感に身体を任せてマサキにもたれかかりました。
「…ケイの声ってエッチだよな‥乳首気持ちイイ?」
返事をする代わりに首を振って、力の入らない手をそろそろと伸ばすと、僕の乳首をつねったり、ぐりぐり押したり、撫でたりしているマサキのマネをして、僕もマサキの乳首を弱々しくいじくりました。
僕とマサキはお互いの乳首をいじりながら、ふたりのものを握ったまま、その気持ち良さにどっぷりと浸っていました。
マサキも次第に喘ぎだして、僕にもたれるように寄りかかってきました。
マサキを見ると、気持ち良さそうに開いた口元からよだれが垂れそうになっていました。
マサキはそのよだれをじゅるじゅるっとすすると改まった声で言いました。
「‥なあ‥俺も‥ひとつ聞いていいかな?」
「‥なんだよ?」
お互いもう気持ちよすぎで、声にも力が入らなくて、まったりトローンとした喋り方になっていました。
喋りながらも、僕とマサキは寄りかかりあうようにして抱き合い、頭と頭を寄り添わせて支え合いながら、お互い触り続けていました。
マサキは、はぁはぁしながらゆっくり唾を飲み込んで、それから一呼吸置いてゆっくりと言いました。
「…ケイはさ…俺が‥その…キスしたら‥怒るか?」
「怒るよ」
「……だよなぁ…」
僕が即答するとマサキはものすごくがっかりした様子で言いました。
あんまりマサキが真っ直ぐに言ってくるものだから、照れくさくってキョヒったけれど、でもホントは僕もキスがしたくてたまらない気分でした。
だから、やっぱりそう言ったらマサキはキスしてくれないよなぁ…とバカみたいに僕もがっかりしていました。
それで、もんもんとした僕は、恥ずかしかったけれどマサキに言いました。
「…でも…マサキは怒られるの得意だろ?」
「…え」
マサキがゆっくり頭を持ち上げて、困惑した顔で僕の顔を覗き込んできました。
「…マサキは僕に怒られるのヤだ?」
僕は恥ずかしくてマサキの目を見れませんでした。
それなのにマサキはまだキスしてくれなくて、見るとぽわんとした顔で僕の言ったことを理解できないで悩んでいる様子でした。
もう僕はじれったくて、我慢出来なくなって、恥ずかしいのをすっごく堪えて自分からマサキの少し開いた間抜けなアヒル口に唇を押し付けました。
ほんの少し、たぶん1秒ないくらいだったと思います。
それなのにあんなに興奮して、あんなにドキドキしたことってなかったんじゃないかと思います。
マサキの唇はぷにっと柔らかくって、温かくって、離れる時にチュッとかわいい音がしました。
マサキはびっくりして目を大きく開いて、ぽかんと僕を見ていました。
僕は知らずに息を止めていたみたいで、急に息苦しくなってハアハア息をしながら、照れくさくて顔を横に逸らしました。
「…そんなに僕に怒られるのがイヤか?…意気地なし!」
僕はなんだか腹が立って、マサキに文句を言いました。
すると僕の乳首を触っていたマサキの手が、ゆっくりと僕の頬に触れて、優しく撫でました。
「…なんだよ‥キスして欲しいんなら‥そう言えばいいのに…耳まで真っ赤にして…」
「…別にそんなんじゃ…」
「ケイはズルいな…俺がファーストキスもらおうと思ってたのに…逆に奪われちった…」
マサキはふてくされたように口を尖らせて僕の言葉をさえぎると、頬を撫でていた手で僕の顔を押さえて、ゆっくりと顔を近づけてきました。
「こっち見て…」
僕が照れくさくてうつむくと、マサキはそう言って僕の顔を持ち上げてキスをしました。
マサキのキスは僕の時よりももっと長くて、5秒くらいだったと思います。
でも、もしかしたらそんなことなくて、もっと短かったのかもしれません。
僕は目を開けたままで、マサキとバッチシ見つめあったままだったので、長く感じただけなのかもしれません。
マサキはそっと唇を離して照れたように目をパチパチまたたかせて、僕を見ました。
「目、閉じろよ…ハズい」
そう言われても、目を閉じるのだって恥ずかしいし、タイミングが分からなかったんです。
「…うっさい!…マサキのバカっ! だったらマサキが閉じればいいだろっ!」
僕はやっぱり息を止めてしまっていて、ハアハアしながら文句を言いました。
「なんだよ…やっぱり怒るんだな…」
マサキは困ったような顔で微笑むと、目を閉じてあごを突き出しました。
「…じゃあ、はい。目‥閉じるよ」
そんなふうにされても、それはそれで恥ずかしくて僕はドギマギしてしまいました。
「早く‥ケイ、してよ」
ゲームの順番を待ってる時みたいな言い方で、マサキはなんのためらいもなく、無邪気に催促してきました。
「そんな‥言うなら…してやるよ」
僕はマサキの綺麗な顔を見つめながら、ごくりと唾を飲み込んで、恐る恐る顔を近づけました。
そしてまたそっとキスをしました。
今度は僕も5秒くらいしていたと思います。
マサキの柔らかい唇の感触が気持ち良くって離れるのが難しかったんですが、また息を止めてしまっていたので苦しくて離れました。
僕は、はぁはぁ息をしてマサキが目を開けるのを見ていました。
マサキも少しはぁはぁしながら、はにかんで僕を見ると、舌を少しだけ出して唇を舐めました。
それを見て僕はものすごくドキッとしました。
「怒られないキスもいいな‥困った」と笑うマサキは、すぐにまた僕に顔を寄せてきてキスをしました。
唇が触れる瞬間、マサキは目を閉じました。
その顔はとても穏やかで、僕も安心して目を閉じてキスを受け入れられました。
今度も5秒くらいだったんじゃないかと思います。
唇が離れる時、別れを惜しむみたいにマサキの唇が僕の下唇を噛むように挟んでから離れました。
僕はその感触がなんだか気持ち良くって思わず「あ…」と声を出してしまいました。
見るとマサキはにこっと笑ってまた目を閉じます。
いつ交互にキスするキマリになったのか分かりませんが、そのつもりで待っているマサキに僕は、唇の感触が忘れられなくて、またキスをしました。
三回目にもなると少し余裕もできて、僕は息を止めないでキスをすることが出来るようになっていました。
しっかりとマサキの唇の感触を味わって、僕はまた5秒くらいして唇を離すと、マサキが追いかけるように顔を近づけてきてキスをしました。
不意をつかれた僕は心の準備が出来てなくてドキっとしてしまいました。
「ん…」
マサキのキスはさっきよりも強く押し付けるようなキスで、マサキが興奮しているのが分かりました。
僕がびっくりして身を引いたのが分かって自制したのか、一度唇を離すと、もう一度今度はゆっくりと優しく唇を付けてきました。
そして唇を離す時にちょっとだけ舌で僕の唇を撫でるように舐めました。
僕はまた感じて声を漏らしてしまいました。
マサキは、はぁはぁしながらトロンとした目で僕を見て、へへへと照れたように笑いました。
「…怒んなくていいの?」
「…怒られたいのか?」
僕を挑発するような目で見るマサキにそう言って、今度は僕からキスをしました。
さっきよりも強めに、マサキの唇に噛み付くようにチュウっと吸い付いてやりました。
するとマサキもそれに応えるように僕の唇に吸い付いてきて、僕の頭を手で押さえて離れないようにすると、唇の隙間から舌を差し込んできました。
僕は驚いて口を離そうとしましたが、頭を手で押さえられていて逃げられませんでした。
それに見るとマサキはすっごく気持ちよさそうに目を閉じて、一生懸命な様子で僕にキスしています。
僕はなんだかマサキのそんな顔を見ているうちにだんだんと落ち着いてきて、マサキの舌を受け入れていました。
マサキの舌はぎこちなく僕の口の中で動き回りました。
くちゅくちゅと口の中で溢れてくる唾液が鳴ります。
僕の唾液なのか、マサキの唾液なのか、二人の唾液が混ざってるのかなとか、僕は酸欠でぼーっとしてきた頭で考えながらマサキのキスに感じて喘ぎ声を漏らしました。
キスがこんなに気持ちよくて感じるものだったなんて思わなくて、されてるだけじゃ我慢出来なくなってきて、僕からも舌をマサキの唇の隙間に差し込みました。
お互いに欲しがるように舌を絡ませて口の中を舐めあいました。
どちらのか分からない唾液を飲み込みながら、それでも溢れてくる唾液を口元からこぼして、息が続く限り僕とマサキはキスをし続けました。
どれくらいしていたのか分かりませんが、息が苦しくて僕は唇を離しました。
マサキはまだキスしていたかったみたいに、少し追いかけてきましたが、それでも一度唇を離してくれました。
お互いの唇の間を唾液が糸をひいて繋いでいました。
僕は身体を大きく揺らしながら息をして、やっぱり身体を揺らして息をしているマサキを見ると、マサキの開いた唇の隙間からトロトロの舌先が僕を求めるように伸びていました。
僕はそれを見るとたまらなくなって、息も整わないのにまたマサキの唇に吸い付きました。
マサキは待っていたように舌をすぐに絡ませて片手で僕の身体を抱きしめました。
僕はマサキの頭を押さえつけるように手を回して髪をぐしゃぐしゃとかき乱すと、マサキがもっと欲しくって、舌を伸ばして唾液を全部吸い尽くす勢いでマサキの口の中を舐め回しました。
マサキも僕もキスをしながら喘ぎ声を漏らしてお互いのことを求めあうように激しく抱きしめあいました。
次第にマサキの手が、ふたりのものをまたゆっくりと揉み始めました。
僕はもうすぐにでもイッちゃいそうでした。
マサキもそうだったんだと思います。
息がハアハア荒くなって、キスしていられなくなりました。
それでもお互いに唇と舌を求めて何度もキスをしました。
「…ああんっ! もう我慢出来ないっ! ケイ! ケイ!」
興奮した声で叫んだマサキは僕を抱きしめてキスをしたまま押し倒してきました。
倒れた衝撃でお互いの歯がカチンと当って少しびっくりしましたが、それでも興奮は収まらなくて、マサキは腰を振って僕のと一緒に握ったマサキのを僕の身体に押し付けてきました。
僕は両手をマサキの背中に回してぎゅっと抱き付くと、歯を食いしばってイッちゃいそうなのを堪えていました。
マサキはキスをするのを止めて息をプハーッと吐き出すと、顔を僕の首もとに埋めて「あっあっあっ」と喘ぎながら腰を振ったり横に揺らしたりして僕の身体にマサキのをこすりつけ続けました。
ぬちょぬちょといやらしい音が二人の身体の間から響いていました。
マサキが腰を振ったり揺するたびに僕のもマサキの身体に押し付けられて一緒にこすられるので、僕も気持ちよくって喘ぎ声が止まりませんでした。
僕はもっと身体を密着させて気持ちよくなるために両手でマサキのおしりを掴んで自分の身体の方へと引き寄せました。
マサキのぷるんとしたおしりはすべすべしていて、力が入ると急に硬くなります。
僕はマサキのおしりを撫でるようにしながら、マサキの腰の動きに合わせておしりを押さえました。
マサキは僕の耳元で「ケイ‥ケイ‥」と僕の名前を何度も呼びます。
僕も「…マサキ…ヤバい…めちゃ気持ちイイ…」と言いながら腰をマサキに押し付けるように動かし始めてしまいました。
僕はマサキのおしりを両手で揉むように掴むと、マサキが僕にしたことを思い出して、指を割れ目に滑らせて、マサキのおしりの穴にそっと触れてみました。
「はあんっ!」
マサキのおしりに力が入って硬くなり、マサキは背中を弓なりに反らせて叫びました。
僕はびっくりして一旦指を引っ込めましたが、マサキがまた腰を僕に押し付けて動かし出すと、じれったそうにおしりをもち上げて揺らして、目に涙を浮かべながら「触って…」と言ってきました。
それで僕はもう一度そっと撫でるようにマサキのおしりの穴に指をはわせました。
マサキはまたビクッと身体をのけ反らせて大きな声をあげました。
「…んああっ! ‥なにこれ!? ヤバい…すごいんっ‥はぁん‥」
マサキはものすごい興奮した様子で歯を食いしばって快感に顔を歪めていました。
マサキの顔を見ていると僕まで興奮してきて、僕はマサキのおしりの穴をチロチロと指先で撫でながらも、もう我慢出来ずにマサキと一緒に腰を振って喘ぎました。
「…もうヤバい…んっ‥マサキ…イッちゃいそ…」
僕が息をきらしながらそう言うと、マサキは身体をビクンビクン跳ねさせながら髪を振り乱して、熱に浮かされたように目を潤ませて僕にキスしました。
荒っぽいキスで、舌を絡ませるとすぐに息が苦しくなって唇を離しました。
二人の唾液が唇をいやらしく濡らしていました。
マサキも息をきらしながら僕の耳元に顔を埋めて、切羽詰まった声を出しました。
「イッちゃって‥いいよ‥俺ももう‥イキそ‥すごい…ケイ…ああ‥ケイ‥好きだ…好き…めっちゃ好き…」
僕はマサキのその切なそうな掠れた声をすぐそばで聞いて、照れくさいような嬉しいような、息が詰まりそうで胸が張り裂けそうな気持ちになりました。
「‥僕も…んんっ…」
マサキがむさぼるように僕の首すじや耳たぶを激しく舐めたり噛み付いたりしてくるので、僕はもう快感に耐え切れなくって、僕のをマサキのにこすりつけるように大きく振って、シャクだけどマサキよりも先にイってしまいました。
「‥ああっ‥マサキのバカっ! ‥出ちゃう! ああっ! くそっ! イく! イッちゃう! ‥ううっ!」
僕の精液はどぴゅどぴゅとまた勢い良く噴き出して、僕とマサキの身体を濡らしました。
僕はイった瞬間にマサキのおしりを思い切り掴んで、身体をビクつかせてしまいました。
その勢いでマサキのおしりの穴を撫でていた指が、ぐにっとおしりの穴の中にめり込みました。
マサキは「はあんっ!」と声を張り上げて、僕にしがみつくようにキツく抱きつくと、身体をぶるぶる震わせて、腰を激しく振り始めました。
僕の出した精液が温かくヌルヌルしていて、ねちゃねちゃと音をたてて二人の身体の間に糸をひいていました。
僕はイッたばかりで、まだその快感が続いていて、全身が性感帯になったみたいに敏感で、マサキの触れている全てが気持ちよすぎて脳がびりびり痺れるような衝撃に襲われていました。
僕は喘ぎ声を止められず、身体をビクンビクン震わせながら首を振り、マサキのおしりを掴んでいる手に更にぐっと力を込めて、マサキのおしりの穴にめり込んだ指先もぐりぐりと突き動かしてその快感に耐えると、ひくひく動くマサキのおしりの穴から、指をひっかくようにしてグリッと抜きました。
その途端、マサキははじかれたみたいに身体を大きく反らして絶叫しました。
「ああんっ! イク! もうダメっ! ああっ! ケイっ! ああああっ! ケイっ! イクっ! イクっ! イッちゃうっ! ああんんっ!」

ホント、家に誰も居なくて良かったです。
隣の家とも離れていたし、雨だから外にも人がいなかったと思うし、良かったです。
それほど心配になるくらい、とにかくマサキの声はでかくて、すごかったんです。
確かにサッカー部でも声がでかくてグラウンドではいつも目立っていました。
身体が小さい分を声のでかさでカバーしてるんだってマサキは言っていましたが、僕はいつもこんな大声だしてオナニーしてるのかと心配になりました。
聞いてるこっちが恥ずかしくなっちゃうような大声を上げてイッたマサキは、ばたりと僕の身体の上に倒れてきました。
僕の身体は出したばかりの僕のとマサキの精液でぐちょぐちょでしたが、そこにマサキは身体を倒したので、にゅるっとお互いの身体に精液がさらに塗り広がりました。
それにしてもマサキの射精はすごい勢いで、量もすごくて、ピューッピューッとおしっこのようでした。
僕のに比べるとマサキの精液のほうが水っぽいみたいで、粘っこくない分、飛距離があったのか、僕の顔にまで見事に掛けてくれました。
口とか目に入らなくてホント助かりました。
頬を伝って流れ落ちるマサキの精液を感じながら、僕は息をハアハアしてマサキの重みに耐えました。
力の抜けたマサキの身体は重くて、熱いし、身体中汗と精液でべたべたぬるぬるで気持ちワルいし、僕にマサキの身体を持ち上げるだけの力が残っていればすぐにでも投げ飛ばしてやるところでしたが、マサキに「‥も少しこのままでもいい?」と言われて柔らかく抱きつかれたら、なんだかこそばゆい気持ちになって、僕はただ黙って頷いてしまいました。
「‥イッちゃった…」
それからマサキは全身を揺らしてゼエハア息をしながら照れたように笑って言うと、僕の首すじを伝う精液に顔を汚して動かずにぐったりしていました。
僕もそのままぐったりです。
だけど、そんな状況のくせにマサキのと僕のは、まだ興奮覚めやらないといった感じで、熱く硬いまま重なり合ってビクンビクンと脈うっていました。

僕はこうしてマサキに色々なことをされて、性に目覚めてしまいました。
この日のことは初めて味わうことばかりで、そのすべてが強烈で、僕には忘れられません。
あの日の全部が僕には特別だったので、あれもこれもと思って書いていたら、部室長屋を出たところでマサキに出会ってから、たった4、5時間の出来事なのに、書くのに3ヶ月近くかかってしまいました。
その間、書き込みや感想をたくさん頂いてとても感謝しています。
勇気づけられたし、自分の気持ちに改めて気付かされたりしました。
いままで書き込みして下さった皆さん、本当にありがとうございました。
読んで下さった皆さん、だらだらと長い文にお付き合い下さって本当にありがとうございました。

圭人。