愉悦

薄く残した照明だけの部屋。
ベットの中で裸にされた高志の背中に、裸になった弓倉がくっつく。
「せ・・先生・・・」
「なんだ、少年」
「そ・・そろそ1時間ぐらい・・こう・・・してるんですけど・・・あぅ・・・・」
「1時間と5分だ、時計を見ていたから正確だぞ」
「分かってるなら・・・もう・・あん・・・はあ・・」
潤みきった、淵に涙さえたまっている高志の顔が弓倉を見た。
両手は胸の前であわされて縛られている。
もちろん縛ったのは弓倉で、
弓倉は高志のペニスをやわやわとゆっくり過ぎるほどゆっくり弄り続けていた。
いかせないように、
いかせないように、
ベットに入ってからずっと1時間。
「先生・・本当にもう・・あんっ・・・許してください・・ひっ・・」
すっかり張り詰めたペニスを軽微なタッチでくすぐる弓倉の手は、
高志を悶えさせ、何度も降参の言葉を口にさせていた。
「そんなに気持ちいいか?少年」
弓倉は意地悪い笑みを浮かべる。
高志を昇らせも降りさせもせずペニスをしごき続け、
自分よりひとまわり小さな少年の身体が腕の中でもがく様を愉しんでいる。
「時間は、まだまだあるぞ。好きなだけ感じていろ」
「あ・・あ・・先生の・・意地悪・・・ばかぁ・・あうっ」
「そうだな、今日の私は酷く意地悪い」
弓倉は先走る液を指の腹ですくい、ペニスの裏側へ細かく擦り付けた。
「ふわああっ」
高志は喘ぎ声をあげ、身体をくねらせた。
行き所のない快楽に身を縮めて丸まると、弓倉に顎に手をかけられ真直ぐに引き伸ばされる。
「あああ・・弓倉先生ぇ・・」
今度こそしっかりと抱き固定されて高志は弓倉を呼んだ。
縛られた手がわたわたと震えて、
もぞもぞと脚がシーツを蹴る。
「あああ・・・あん・・・先生・・先生・・・助けて・・・あう・・・」
「・・・・・・・・・」
「先生ぇ・・先生ってば・・あう・・・はあ・・・あっ・・・」
「・・・・・・・・・」
弓倉はもう何も答えない。
抱いた高志が鳴き声と、助けを求める顔を見つめながら、責め続ける。
高志が脚を閉じようとすればそれを開け、
縛った手を下ろそうとすればそれを引き上げた。
「イかせて・・イかせてください・・先生・・何でも言うこと聞きますから・・・」
音をあげる高志をさらに嬲りものに。
腕の中からけして逃がさない。
これが今日の弓倉、最高の愉悦。
「先生のばか・・意地悪・・・うう・・・」
すすり泣く高志の頬に弓倉が無言で唇をつける。
高志の涙いっぱいの目がきろっと弓倉を睨むが、むろん迫力などない。
むしろ、
「・・・・ふふ」
と弓倉の笑みを誘い、責めの続きを招くだけだ。
「そんな可愛い目をされると、ますます嫌われることをしてしまうぞ」
高志に囁く、弓倉。
ごろっと高志の身体を自分の方へひっくり返し、
縛られた手を万歳の型で押さえつけて同じに正面から覆い被さった。
ペニスへの愛撫を止め、首筋から胸へ這う弓倉の舌。
乳首の周りで一周し、ぴんっと頂きを舌先で弾いた。
「はんっ」
弓倉を乗せたまま大きく跳ねる高志。
弓倉が手のひらと唇で身体中を撫でまわし始めると、あちこちに身を揺すって喉を鳴らした。
「ああ・・・先生・・・だめえ・・・あんっ・・・」
「うむ、かなり過敏になっているぞ少年」
「せ、先生が・・・苛めるから・・ですうっ・・ひ・・・」
「そうか、やはり時間をかけて苛めた方が嬉しいか」
言って、
弓倉はすうっと高志の内腿をさすった。
「あ、あんっ」
あがる、高志の甲高い声。
涙声も幾分まじった、湿のある鳴声。
弓倉は脚の間で勃起しきった高志のペニスがさらに固まり、
先走りの透明の液だけを雫にして零すのをゆっくりと眺めた。
「ふふ」
そして弓倉は下へと身体をずらし、
勃ちあがるペニスを手に取るとその裏筋へ軽く舌を流した。
「ひあんっ」
高志の感じる様子を見て、さらに弓倉は舌を使う。
あくまでも微細なタッチで高志の弱いところを続けてくすぐった。
「あ・・あん・・・先生・・もうだめえっ」
「・・・・・・・・・」
そしてまた無言になる弓倉。
高志が伸ばしてく手を払って薄い愛撫を繰返した。
「ひ・・あ・・あ・・ああ・・あああっ」
えび反りになる高志の背。
鳴声が悲鳴に近づく。
「・・・少年」
再び弓倉の手に渡されるペニス、弓倉はしごきを加えながら高志の身体を抱え起こした。
互いにベットの上で座った姿勢で、弓倉の方から唇を重ねていく。
「・・・・・・・・」
悲鳴から変わる、一時の静寂。
それでも弓倉の手は動いており、高志はびくびくと震えて身悶えしている。
唇を離すと、
高志はふわっと息を吐き出し、くたんとなって弓倉の胸へ持たれかかった。
弓倉は高志の両手の縛めを解いた。
浅い縛り跡が残る高志の手首。
弓倉はその手首を持ち上げ縛り跡に唇をあてる。
「少しきつかったか?」
「こんなに・・・苛めてから・・・訊くことじゃないです・・・」
「うむ」
掴んだ両手を大きく左右に広げる弓倉。
高志の無防備な少年の身体がさらされ、
解放を求めるペニスが限界まで膨張しているのがよく見える。
そのまま、高志の股間へ顔を近づける弓倉。
ペニスの先にキスをして、
ペニスの裏側に舌をくぐらせる。
「あんっ」
反射的に戻ってこようとする高志の手を、ぎゅっと引っ張り返して弓倉は口を使う。
「まだ出すなよ、少年」
「あん、先生、ああ・・・」
高志は身を捩り、脚をばたつかせながら弓倉の命令に従って射精を耐える。
弓倉が見上げると、
弓倉に許しを求めて鳴く高志の顔が舌を動かすごとに悶え歪み、
ぎゅっと目を閉じてふるふると揺れる。
「先生・・先生・・ああ・・先生・・」
繰返す口。
弓倉は再び顔を上げその唇を塞ぎ、両手を広げさせたまま高志に覆いかぶさって押し倒した。
捕まえた両手をシーツに磔にして騎乗位の体勢をとる。
濡れたペニスが弓倉の入口に当たる。
「欲しいか?少年」
弓倉が上から訊く。
「欲しいです・・ああん・・・先生・・欲しい・・」
高志は待ちきれない声で弓倉に答えた。
「ふふ、私も欲しいぞ、少年」
弓倉も答え、
そして腰を降ろした。
性器はすんなりと奥まで繋がった。
「ああ」
「はう」
2人に同時に出す喘ぎ。
「熱いぞ、それに硬い」
言いながら、弓倉が上から動く。
「先生・・もう出ちゃう・・ああっ」
膣の中でペニスが揉まれ、高志は直ぐに訴えた。
押さえられた両手の内側で肩と首が浮く。
「いいぞ、中で出せ」
当然、今日は問題のない日だ。
弓倉がぐんっと下腹部を打ちつけた。
「先生っ、出るううっ」
高志の腰が浮き、弓倉の身体を持ち上げてペニスが爆ぜた。
ビュク、ビュクンッ。
高志の溜まりきった精液が熱を持って弓倉の中へ放出される。
「ああっ」
高志の快感は弓倉にも伝わり、弓倉は精を受けながらさらに腰を揺すった。
「少年、続けるぞ」
「先生、直ぐにはだめえ」
弓倉は訴える高志を見下ろして動く。
咥えるペニスは射精後も衰えていない。
もがいていた高志も、やがて快感の声に戻り始め下から弓倉の身体を求めて動き始めた。
弓倉は高志から手を放し、繋がったまま高志の上に被さって身を抱く。
頭を胸に誘い乳房を吸わせて、もう片方を手で揉ませる。
「くぅ」
高志の唇と指、同時に両方側の乳首を愛撫されて弓倉は声をもらす。
苛めちらした後に高志から受ける愛撫もまた心地いい。
快楽の中、弓倉も高志背に手を回し尻を撫で割れ目の中の窄まりを指で弄る。
「そこ・・だめ・・」
高志が何かいいかけたようだが、それを胸で黙らせて弓倉は指を埋め込んだ。
「んんんっ」
くぐもる、高志の悲鳴。
「どうした、もっと私の胸を舐めてくれ。そうだ・・上手い・・気持ちいいぞ」
そんな高志に弓倉はなおも命じ、
さらに一本指を埋め、繋がった性器を絞めて揺すった。
「んん、ぐぅ、むう、あああっ」
びゅっ。
少量。
また膣の中に放たれる精。
だがペニスから力が抜けるにはまだまだだ。
「少年、しばらくは眠らせないぞ」
弓倉はもう一度、高志に抱きついた。

弓倉は疲れ気味だった。
服を脱いで高志と絡まってしばらく、
いつもなら押さえきれない性癖に従って、あんなことやこんなことをし始める頃合。
だが今日は気だるそうに転がっているだけで、
添い寝以上のことをしようとしない。
「先生、どうしたんですか?元気ないですよ」
心配になって訊いてみる、高志。
「うむ、昨日、職員室で資料整理があってな。
 目いっぱい廃棄書類が詰まったダンボールをいくつも人力で運ばされたのだ」
弓倉は、やはり重そうな口調で答える。
「運んでいるときは平気だったのだが、
 こういうものはやはり後になってくるものらしい」
「大丈夫ですか?
 そんなに疲れてるんだったら、最初に言ってくれればいのに」
高志は弓倉を気遣って言う。
弓倉は目だけを面白そうに傾けて笑った。
「ふふ、言えばどうした?今日のコレをキャンセルしても良かったのか?」
「・・僕だって、先生の体調が悪いなら我慢できます」
「そうか?それは紳士だな」
弓倉はくつくつと笑って、高志の頭を寝たまま撫でた。
その手で高志の顔を引き寄せ、ご褒美だという雰囲気で唇を重ねる。
とても優しいキス。
「先生・・・」
「なんだ」
「えっと・・・」
高志は、普段とは違い力の抜けている弓倉に対しどうやって対応しようか戸惑い、
はっと思い付いたことを口にした。
「僕がマッサージしてあげましょうか?」
「マッサージ?」
「はい」
高志は置き上がり、弓倉の横を抜け出した。
弓倉にうつ伏せに寝てもらい、上には乗らずに横から肩と背中を揉みはじめた。
ふにふにと動く高志の両手。
「どうです?」
「なるほど、いい感じだ」
弓倉は両目を閉じて答えた。
全くの素人によるマッサージであるが、高志の手によるそれは心地よく、
弓倉の疲れた身体をたしかに癒していた。
ときおり弓倉の口からふうっと息が抜ける。
やがて弓倉はリラックスさせた身体をシーツに沈ませ、
完全に高志の手に身をゆだねるようになった。
・・・今日の先生って、すごく・・・。
初めはマッサージで弓倉を楽にすることだけを考えていた高志だが、
すっかり無防備になった弓倉に内心驚く。
これだけ自分の好きなように身体を触らせてくれるのは、初めてのことだ。
そう考えると、
高志は徐々にマッサージ以外のことへと手を動かしたくなってきた。
今まで意識していなかった、弓倉の尻や胸の膨らみが目に入る。
・・・こんなことしたら・・・。
理性では思いつつ、
高志の手はマッサージの範囲から少しだけ外れて弓倉の脇腹を撫でた。
くっ。
弓倉の身体が微かに反応する。
高志はドキっと手を止めて弓倉が何と言うか待った。
が、弓倉はそれ以上は動かず、目を閉じたまま何も言わない。

・・・これ以上は、まずいよ・・・。
そう思いつつも、高志は触れる範囲を広げて行く。
脇腹から腰の外側。
腿の外側に下りて、そーっと内腿に指をつけてみる。
弓倉はそれでも何も言わない。
目も閉じたまま。
息使いだけが、高志の手の動きに合わせて微かに乱れる。
「先生・・・」
高志は呟き、ついに弓倉の尻に手を乗せた。
両方の手のひらで2つの山をやわらかく撫でた。
・・・先生のお尻・・・。
息を殺す、高志。
徐々に手の動きは『撫でる』から『撫でまわす』になる。
「ああ・・先生・・・」
無抵抗の弓倉に高志の頭が熱くなってきた。
片手で尻を撫でながら、片手を弓倉の脇に向かって伸ばし、
うつ伏せでシーツに潰れている乳房の下へ横からすべり込ませた。
すぐに指の先に乳首があたり、高志は2つの指でそれを捏ねた。
「んっ」
声を出したのは、弓倉。
高志がもう一度捏ねると、今度は声を押さえ、短く喘ぐ吐息を吐き出した。
「ふぁっ」
高志をかろうじて押さえていた最後の理性が、それで完全に弾ける。
高志は夢中で弓倉の胸を揉み、
尻の間からその前へ手をずらし入れた。
胸と濡れた弓倉の女性器。
高志はリーチ的にきついその2箇所を、弓倉の背中側から懸命に両腕を伸ばして愛撫する。
「はぅ・・ん・・あ・・ふぅ・・」
高志に聞こえてくる、弓倉の喘ぐ声。
高志が挿し伸ばす指先が女性器の突起に触れると、
「・・んんっ・・」
弓倉は身をくねらせて反応した。
「はあ、はあ、はあ、先生・・・」
そして、弓倉以上に熱い高志の息。
自分の愛撫で弓倉が悦んでいるのが嬉しく、腕をぎりぎりまで伸ばした。
乳首と突起を同時に抓んで、弓倉を責める。
「あふっ」
瞬間、快感で突っ張る弓倉の身体。
「あっ」
それが弓倉が背伸びをするような姿勢につながり、
無常にも高志の手は引き離されてしまった。
「むう・・・」
と、目を開いた弓倉が恨めしそうに高志を見た。
「絶頂そこなったぞ・・少年・・」
「ご・・ごめんさい」
高志はすごく悪いことをした気になり、しゅんとなって謝った。
「謝らなくてもいい、ただ、続きを要求するぞ」
のそっと、弓倉は高志に迫る。
高志の手を掴んで自分の下に引き込んだ。
弓倉は高志の上で四つん這いになって被さり、高志の手を自分の股間へと導く。
「私が感じる場所は知っているな」
頷く、高志。
「では、頼む。あ、胸の方はいいぞ、そっちだけでいい」
弓倉は高志に告げる。
高志はさっきの失敗をとり返そうと、
弓倉のクリトリスに指をあて、ゆっくりと上下に揺する愛撫を再開した。
「ああ・・そうだ・・・うまいぞ・・少年・・」
弓倉の声が震えた。
快感に興じる表情をそのまま出し、
膝立ちは残したまま、腕の支えを無くして上体を高志に預けきた。
のたっ。
弓倉の重みの半分が高志に乗る。
「先生・・ちょっと・・おも・・」
「我慢しろ」
弓倉は高志の抗議を遮り、口を高志の耳に当ててささやいた。
「・・・・ほら、手を休めるな、動けない私を気持よくさせてくれ」
言われて、高志は指を動かす。
「・・んはっ・・そう・・・・・」
高志の耳に挿し込まれた弓倉の舌が、いつにない激しい喘ぎを伝えて来る。
そして、上体に次いで降りて来る下半身。
「挿れるぞ。そうだ自分で持って、んんっ、そこだ」
高志自身に位置を合わさせて、勃起したペニスを受け入れる。
「いいぞ・・少年・・クリトリスから手を離すな・・・挿れたまま擦れ・・・・そう・・・ふぅっ」
挿入したまま、突起を弄らせて弓倉は完全に高志の上に身体を落とした。
感じて悶える以外の力を抜いて、遠慮なしに高志に自重を乗せる。
「先生・・重いです・・・少し・・ずれて」
「拒否だ・・今日はこのまま感じさせてもらうぞ・・・ぁぅ・・ぁぁっ・・」
弓倉は高志にさらに責めさせ、
口をつけた高志の耳に感じるままに声を聞かせた。
「先生・・潰れますう・・」
「そうか、私はもう動きたくないからな、気にせずつぶれてくれ。
 ただし愛撫はやめずに、抜くのも禁止だ」
「そ、そんな、先生・・・」
「ふふ、少年、君の身体の上はとても心地いいぞ・・・」
それきり、弓倉は何を言っても答えなくなった。
眠るように瞳をとじて、喘ぐ息だけを心地よさげに吐いて、
それから、本当に眠ってしまった。

翌日の学校には、
すっかり回復した弓倉と、ぐったりした高志の姿があったという。

「・・・先生、これなんですか?」
「見て分からんか?」
「・・・見たところ、首輪なんですけど」
「うむ、首輪だからな」
「・・・それがどうして僕の首に?」
「君が寝ている隙に私が着けたからだが」
「・・・どうしてこんなことするんです?」
「説明すると長いぞ」
「・・・いいですよ、聞きます。どうぞ」
「うむ、着けてみたかったからだ」
「・・・すごく短いじゃないですか」
「そうだな、自分でも驚きだ」
「・・・先生の・・」
「うむ」
「先生のバカーーーーーっ」
ベッドの上。
裸の高志が、やはり裸の弓倉の前で怒る。
その首に着いているのは首輪。
赤い色の皮製で、正面に小型の南京錠がぶら下がっていた。
「もしかして嫌だったか?」
真顔で尋ねる弓倉。
高志は南京錠をガチャガチャと引っ張って叫ぶ。
「嫌に決まってますっ、早く外してくださいっ。僕は犬じゃないです」
「安心しろ少年。それは人間用の製品だ」
「そういう事じゃないですっ!!」
「いや、重要なことだぞ、少年。
 ペット用の首輪にはノミやダニ退治用の薬が塗られているものが多いのだ。
 よって量販店で売られているモノをファッションに流用すると、肌荒れやかぶれを引き起こす。
 ・・・ことがあるらしいぞ。注意しろ」
授業よろしく、高志に教える弓倉。
学校の教室での授業ではありえない、身近で親切で丁寧な指導。
もちろん、今の高志がそれを喜ぶはずもない。
「いいから、鍵はどこですっ!?
 だいたい、こんなのどこで買ってくるんですっ!!」
「うむ、このごろ誤配が多くてな、こういうものが度々とどくのだ」
「嘘です、絶対嘘でしょ、それっ」
「少年、嘘と分かる嘘は見過ごして欲しいというサインだ。
 そこのところを感じとってくれると、私は楽ができていい」
言いつつ、
弓倉は高志に巻いた首輪を指で撫でる。
「いい訳する気もないんですね」
そして泣く、高志。
「うむ、たいした動機がないというのも事実だしな」
「さっき、説明したら長いと言ったくせに・・」
「うむ、長いぞ、では、ゆっくり聞かせてやろう」
そして、高志は弓倉に抱き寄せられる。
「・・・もう聞かなくていいですから、外してくださいよ」
「そう言うな、今考えるから、しばらくこうして待て」
「ばかーーーーっ」

「・・・という過程で私も人間用の輪っかがあることを知ってな、
 気がつくと現物が手元にあったのだ」
「僕はその“知ってから”、気がつくまでの間の出来事について教えて欲しいです」
「これ以上の装飾を求めるのか?
 考えてもいいが、これから付け加えると話全体のバランスが崩れる可能性が生じるぞ。
 つまり信憑性に問題がでるということだ。
 君を納得させる為の話としては無視できないところだと思うが、
 その場合は伏線部分を最初から練りなおすことにするか、君が目をつぶるかどちらかだな」
変わらずベットの上で会話する高志と弓倉。
2人は向かい合って座り、
高志は拗ね顔で、
弓倉は機嫌良く、互いを見上げ見下ろしている。
「先生、真面目に話すつもり全然ありませんね」
「うむ、真実は闇の中だ」
「これを外してくれるつもりはもっとないですね」
「うむ」
「でも、鍵はありますよね?もしかしてなくしたとか、初めから無いなんていいませんよね」
「そうだと面白い展開なのだが、残念なことに鍵は鞄の中にある」
「あの鞄ですか?」
「あの鞄だ」
2人は、ベットの脇に置かれた鞄を見る。
弓倉の鞄だ。
高志は横目で弓倉の方を覗う。
それにあわせて、高志と視線をあわせる弓倉。
高志はじっと弓倉の目を見つめ、鞄と反対側の方へ視線をふった。
弓倉の目がそちらへつられるのを確かめ、鞄へと飛び込む。
「うむ」
と、同時に弓倉が高志をシーツの上に押し倒した。
鞄へとのばされる高志の手を上から柔らかく捕まえ、高志の上でふうっと落ち付いた息を吐く。
「女の鞄は魔法の鞄だ。許可なく触れると呪われるぞ」
「呪われてるのは今ですっ、鍵を取らせてくださいっ」
弓倉の下でもがもがする高志。
だが、弓倉の慣れた仕草で簡単に押さえ込まれる。
「そうか、ではこれが君を呪っている感触というわけだな。うむ、悪くない」
弓倉は高志の胸に自分の胸を重ねて、全身ですり乗る。
「また、そうやって体重かけて・・・おも・・・」
「まず口を呪っておこうか」

かぶさり、
弓倉は高志に深く唇を重ねた。
唇で唇を開け、隙間に舌を挿れる。
文句を言うために使われていた高志の舌にすぐにぶつかり、表面をくるくるとくすぐる。
間近、高志を見下ろす弓倉。
高志は不満顔で弓倉を見つめ返す。
押さえる者と押さえられる者の間に流れる空気。
そして、
弓倉の瞳がそのまま閉じられ、高志も続けて目を閉じた。
2人、キスを続ける。
高志の中で弓倉の舌が動き、
それが引くと、変わって高志が舌を伸ばす。
閉じた闇の中で互いを吸いあう。
高志を押さえていた弓倉の手が緩み、高志が自由になった腕で弓倉の背を抱く。
弓倉は高志の細腰に手をまわし、
そこからゆっくり少年の身を抱きしめた。
「・・は・・」
「・・ふ・・」
それぞれの口から吐息が漏れる。
息継ぎをし、まだキスを続け、そのキスがようやく浅くなって、
弓倉と高志はそろって目を開いた。
「この口はもう文句を言わんのか少年」
唇の先どうしをかすめさせて、弓倉が話し掛ける。
「先生のキス、避けてもいいなら言いますよ」
同じく、答える高志。
弓倉は目の中で笑い、高志はやはり不満顔をする。
「そうか」
「そうですよ」
話すたびに触れ合う唇。
腕は相手を抱いたまま。
「いいんですか?」
「いいわけないだろう」
そして、また閉じる瞳。
「・・・後で、いっぱい言いますからね」
「・・・うむ、後でな」
お互いを腕の中に入れて、口づけが再び深くなった。

弓倉は上体を持ち上げ、高志の身体もおこす。
2人でベットの上に座った状態になって、高志に自分の胸を吸わせた。
右か左か、
高志に自身に選ばされると、
高志はやや迷ってから右の乳房に口をつけた。
ぱくっと口を開け、乳首の上から優しく包む。
「ふ・・」
小さな喘ぎを漏らす、弓倉。
高志はそれを聞いて丁寧に舌をつかった。
口の中にある弓倉の乳首を、下側から先端に向けて繰返し舐める。
「・・ぁ・・ぅ・・・」
弓倉は高志の頭を抱いて、やはり小さく喘ぐ。
高志と抱き合う弓倉は、
大きな声あげて身悶えるようなことはないが、
感じていることや、自然に出てくる吐息を隠すようなこともしない。
そして、
高志の愛撫に満足している合図で、抱いた手で頭をなでる。
そして、
その手が高志の身体をなぞっておりる
高志の脚の間まで下がり、膨らんだペニスをそっと握った。
逆手にもった指で、
自分が感じている分だけのお返しでしごく。
「あうん・・」
今度は高志が喘ぎ声を漏らした。
胸を舐める舌の動きが乱れ、
乱れて不規則になったのがまた弓倉に心地よさを与える。
弓倉はもう一つの指を口に含んだ。
唾液で濡らす。
そして、その手を高志の背中にそって降ろしていった。
「指を挿れさせてくれ」
弓倉は囁いた。
尻の間に指を這わせ、
見ずとも分かる高志の窄まりの位置までくると、
高志の目を見て、ゆっくりと根元まで埋没させた。
「あんんんっ・・・」
弓倉の見つめる下で高志の目が閉じ、表情が変わる。
高志がもつ少年の秘肉は、
弓倉の指を咥えて包みつつ、
弓倉の侵入を圧されて受け入れる。
弓倉は高志が痛がらないように注意し、高志が喜ぶやり方で指を動かした。
くんっ。
高志の背が反れて、乳首から口が離れた。
あわせてぺニスをしごくと口が開き、
弓倉によく聞こえる声で、高志は喘ぎ声を発した。
「ああんっ・・先生ぇ・・・」
「感じるか?」
弓倉はそういう時の高志にこう訊くのが好きだった。
自分が訊かれるのは嫌いだが、
高志が答えるのは聞きたい。
「あん・・感じます・・先生・・・ゆっくりしてください・・・」
「ああ」
弓倉は高志の要望どおり、
じわじわと高志を両側から責めた。

弓倉に性器と肛門を弄られ、高志は喘いでいる。
尻に挿れられる、
という行為自体は好きでない高志だが、
弓倉が、本心から弄りたがっているのが分かるので身を貸している。
そして貸しているうちに、
優しくされれば感じるようになってしまった。
「それを開発されたというのだな、少年」
そのことを、
弓倉はわざと恥ずかしい言葉を使って表現する。
ともかく感じるのは本当であり、
高志は弓倉の胸に吸い付いて、弓倉を見上げた。
「先生・・そろそろ・・僕が挿れたいです・・・」
小さく揺らされながら告げる。
頷く、弓倉。
高志のペニスにゴムをつけさせ、
座って向かい合ったまま、ゆっくりと自分の中にとり込んでいく。
「あんっ」
「ふっ・・ぅ・・」
同時に挿入の感想を短い喘ぎにして2人は吐く。
それから2人は、
お互いに身を小さくゆすり合って結合部の快感を高めていく。
弓倉は高志の尻に指を入れたままで、
高志は口にしていた乳首を放し、弓倉の乳房の谷間に顔を埋める。
「んん・・・ん・・・ん・・」
「ぁ・・・ぁ・・・・んっ・・・は・・」
どちらがどちらとも分からない声。
高志と弓倉は時間をかけて、この快感を愉しむことにした。

弓倉が後ろの指を使うと高志は喘いだ。
弓倉の胸の間で顔を振り、自分も腰を進めて弓倉を突く。
弓倉の中を高志のペニスが動く。
「・・ぁ・・・」
高志を抱いて弓倉はそれに応え、
突かれた性器を高志に向かって押し返した。
「あんっ」
高志の顔が跳ねる。
弓倉は自分も十分に感じながら、
高志の小柄な身体を前後から細かく揺すった。
「あん、あ、あ・・あん、あっ、先生、あん、
 あんまり早くしたら・・あんっ・・僕・・・んんんっ・・・」
高志は跳ねた顔を左右にくねらせ、弓倉の乳房に擦りつく。
「これだと、もたないか?」
「これくらいだったら大丈夫です・・・けど・・あんっ・・あっ」
言って、高志は顔を振った。
高志と弓倉が五分に抱き合えば、先にイくのは必ず高志。
今も、
すぐにはイきはしないものの、弓倉より絶頂に近いところにいる。
弓倉はそんな高志の身体を愉しみ、
指と下腹部とで、
高志の快楽の度合いを調整して今の状態を保たせる。
「ゆっくりだ、ゆっくりだぞ少年。
 その感じている顔を私に見せろ。
 前に言っただろう、鳴き声をあげるのは私の顔をみながらだと」
「あん・・先生ぃ・・・」 
高志は顔を上げた。
潤んだ目を開いて弓倉の顔を見上げ、
絶頂の手前の快楽でもがいている様を提供する。
「・・・いい顔だ」
弓倉は自分の性癖を呪いつつも、
自分の腕のなかでもがく高志の表情に酔いしれた。
首に巻いた輪が、
さらに弓倉の普段隠した人格にほの暗い火を入れる。
「そうだ、いい顔だ少年。首輪もやはり似合っている」
「先生の・・変態・・ばかぁ・・」
「すまんな、自覚している。
 ・・・ほら、もっと愉しめ、先はまだまだ長いぞ」

高志につけた首輪。
弓倉が高志を抱き寄せて喘がせると、
真ん中の錠前が揺れて、弓倉の胸にあたる。
「あん・・・先生、そんな淫やらしい顔で見ないでください・・・」
「淫やらしいことをしているのだから、問題ない」
「でも、今・・・僕じゃなくて・・首輪を見て喜んでたでしょう?」
「首輪だけみても愉しいわけないだろう。
 私が見ているのは君が着けた首輪で、
 悦んでいるのは、首輪をつけて淫やらしく鳴いている君の顔だ。
 ほら、声をもっと聞かせてくれ」
弓倉は高志を揺さぶった。
「あんっ、ああっ、先生、その顔、本当に・・んんっ」
気を入れた弓倉に責められると、
高志は弓倉に抱きついて喘ぐことしかできなくなる。
弓倉の中に挿れた部分で快感が溜まり、高志は懸命に射精を耐えて言った。
「先生っ、ああっ、だめっ、出そうっ、ああんっ」
「その顔と声だ。可愛いぞ、少年」
「だめえっ、出ちゃいますうっ、あんっ、先生っ、とめてっ、あんっ」
「そろそろイってもいいぞ。あまり我慢してると辛いだろう」
「でも、でも、んんっ、まだ、先生が、はうううっ」
高志は弓倉にしがみついて懸命に耐える。
高志本人がまだイきたがってないことを見取り、弓倉は揺さぶりをとめた。
一時停止する結合部の擦り合い。
「はうううぅぅ・・」
高志は繋がったまま、イきそうになっていた自分を引き戻した。
ふるふると目をとじた顔が振られ、
目が開くと、その縁に我慢し過ぎで出た涙が薄くただよっていた。
弓倉は言う。
「少年、そんなに無理しなくてもいいのだぞ。そろそろ辛いだろう」
「でもぉ・・」
高志は弓倉を見上げて言った。
弓倉は顔を近づけて訊く。
「なんだ、何か要望があるのか?」
弓倉の耳に顔をよせる高志。
「僕も、先生の声・・・、もっと訊きたいです」

「ほう」
弓倉の目が細まった。
そして、予告なしで激しく身を揺さぶった。
「ああっ、先生っ、だめえっ、そんなにしたらっ、ああんっ」
高志が叫ぶ。
いやいやと首をふったが、弓倉はとまらない。
「ほら、イってしまえ少年。私の声など聞いても、私は嬉しくないからな」
「ああんっ、出ます、出しますううっ、んんんっ」
高志の身が縮まった。
弓倉は高志の身を離し、中に入っていたペニスを外に出した。
「あんんっ」
それを待ってイく、高志。
ペニスに被せられたゴムの中で白く若い液を放出した。
「あんっ、あんんっ」
放出は大きく2度起こり、ゴムの液溜めに精子が落ちた。
弓倉はその様子をじっくりと眺めて、うむうむと笑った。
すごーく満足そうで、すごーく愉快そうな笑い方。
「・・・先生、僕のこういうとこ見て、そういう笑いかたしないでください」
まだ細かな射精の残りに喘ぎながら、高志は弓倉にうらめしそうに言った。
「それに僕だけイかせて・・・・、せっかく我慢してたのに」
弓倉はやはり笑う。
「その気遣いだけで十分、その気持ちが心地いいぞ少年。
 性交で長持ちするだけが女を悦ばせる手段ではないからな」
言いつつ、弓倉は高志のペニスからゴムを外す。
「あ、先生、自分でやりますから」
「言っただろう、君の悦びは私の悦びだと。少年、君が悦んだ証拠を見せてくれ」
「だ、だめです、先生、あっ、だめって言ってるのに、
 ああっ、そんなふうに透かしてみないで、恥ずかしいです、捨ててくださいっ」
弓倉が無理やり外して取りあげたコンドームを、取り返して捨て様とする高志。
弓倉はそれをかわして、うむうむと観察して高志を苛める。
はたから見れば、使用済みのコンドームをめぐってじゃれあうバカップル。
そして、まあ適当なところでバカ遊びは終わり、古いゴムを捨てて高志と弓倉は見つめ合う。
どちらからでもなくキスをして、言う
「先生、もう一度してもいいですか?」
「うむ、良いに決まっているだろう」

そして、弓倉は当然のように高志の上に乗った。
僕も上になりたいのにっ、という高志の顔を手で包み高志の上に倒れ込む。
高志の耳に唇をつけ、それから高志と繋がった。
「んっ・・」
高志のリクエストどおり、弓倉の声が直接届く。
「こうすれば、私の声が聞けるだろう・・」
弓倉は囁いた。
そして相変わらず、この体勢で小さな高志に遠慮なく体重を預けてきた。
「さあ、動いてくれ・・・、それとも私にして欲しいか?
 ならば、マグロでいてくれても構わんぞ」
弓倉の囁きに、高志は腰を突き上げて答えた。
「んんっ」
弓倉のひかえめな喘ぎがまた漏れた。
高志は間近で聞こえる弓倉の声に耳をすまし、弓倉の下で下腹部を揺らす。
同時に背中と脇腹に手を回し、いつも自分がされる手つきを真似てくすぐる。
「ふふ、いろいろ覚えたではないか、少年・・・」
弓倉の心地よさそうな声。
高志にかかる重みがますます深くなり、高志の顔を撫でていた手がシーツに落ちた。
軽いこぶしをつくって、シーツの表面を握っている。
「いきますよ・・先生・・・」
「ああ・・・」
高志は弓倉の腰に手をまわした。
下から自分の方へ引きよせ、強く自分の下腹部を打ちつけた。
「はふっ」
高志の耳に響く、弓倉の喜びの声。
高志はしっかりと弓倉を抱き寄せ、下から突き上げた。
「んっ・・あっ・・ふっ・・んっ、んっ、んっ、んふっ」
包み隠さぬ弓倉の感じている声が連続して響く。
「先生・・・、僕、今、先生としてるんですね?」
「ああ、してるぞ、とても悪いことだ」
「でも、先生、悦んでますね?」
「ああ、悦んでる、ほら、もっと私の女の声を聞け」
弓倉は高志の耳の中に舌を伸ばした。
ひたひたと舐めながら、喘ぐ声を奥深く伝える。
「はあ、はあ、ああ、んんっ・・・」
弓倉は片手で握ったシーツを捻り、片手で高志の首輪についた錠前を弄る。

「んんっ・・」
弓倉の手が錠前をきつく握った。
「んっ」
弓倉の息が一瞬とまり、それから、
「・・ふう」
静かに息を吐いた。
弓倉の全身から力が抜け、さきほどまでとは違う、無意識の重みが高志の身体に加わる。
「あの〜、先生、もしかして、イっちゃいました?
訊ねる、高志。
「女にそういうことを訊くな、大減点だ。抱いておいてわからないのか?」
「先生のイくときっていつも静かだから訊かないと・・・、で、あの〜、先生?」
高志は弓倉に呼びかける。
弓倉は高志の上で目を閉じ、そのまま眠りかけていた。
「先生、寝るなら僕の上からどいてください」
「ん・・むう・・・」
さきほどまでの熱はどこへいったのか?
弓倉はめんどくさそうに高志の上から横へごろっと転がり、
高志の腕をとると、それを枕にして横顔を乗せた。
傍若無人。
性的に満足して、今は寝る以外のことはしたくないという、
たしかに弓倉が絶頂に達したあと特有のぞんざいさだった。
「あの〜、先生」
高志は弓倉を呼ぶ。
弓倉が離れたので、当然繋がっていたペニスは放り出されていた。
ひとり寂しく勃ったままだ。
「・・・僕は、まだなんですけど」
「起きたら、めちゃくちゃに苛めてやる。それまで溜めておけ」
弓倉は軽く言って、高志の腕に頬を擦り付けた。
肘の内側のお気に入りの部分に収まると、もうそれっきりなにも答えてこない。
ただ完全には寝ておらず、
かちゃかちゃと高志の首輪を指でなぞって遊んでいた。
「先生、終わったら、これは外してくださいよ」
高志は、まだ起きている弓倉の寝顔へ全部を諦めて言った。
弓倉は口元だけで薄く笑い、何もやはり何も答えなかった。
高志は弓倉が遊ぶ手の上から、自分の手を重ねる。
それから弓倉の顔をじっと見つめて、
それが本当の寝顔に変わるまで、
見守っていた。

そして、高志も目を閉じる。
首輪と、首輪をつかむ弓倉の手にどうしても感じてしまう安心を自覚して、
どうか僕と先生にへんな癖がつきませんように、
願いながら眠りについた。