夕闇迫る河川敷

夕闇迫る河川敷で、俺はその少年を見つけた。あっくんを手にかけて以来、俺は幾度もその時の感覚を思い出しながら、独り楽しみにふけっていた。もちろん、再び少年をこの手にかけたいという欲望を持ち続けていた。しかしながら、その少年を見かけたのは本当に偶然だったのである。
 彼は自転車のそばにしゃがみ、寂しげに川面に視線を投げかけていた。背格好から、やっと中一ぐらいだろうかと見当をつけた。自転車のそばに肩掛けかばんが無造作に放り出されている。学校帰りだろうか。俺は何気なく彼のそばを横切り、正面にまわって表情を確かめる。夕焼けに朱に染められたサラサラとした髪、思わず触れてみたくなる頬の微妙な曲線、涙をためたような不思議な悲しげな瞳・・・俺はこの子を獲物にする事に決めると、車に戻って小道具を手にして、また少年のそばに引き返してきた。
 少年は先ほどと同じ姿勢で、憂わしげな視線を川面に投げかけている。彼にこのような表情をさせるのはどのような悲しみなのだろうか。俺はそれを知りたいと思った。
 「ぼく・・・」
 弾かれたように少年は顔を上げる。しかしすぐにうつむいてしまう。俺はやにわに彼に覆い被さり、ガーゼで彼の顔を覆い、覆ったその手に力を込めて鼻と口を押さえつける。少年の激しい抵抗は一瞬のことに過ぎない。すぐにぐったりと動かなくなってしまう。俺はかれを背中におぶると、車に向かって歩き始めた。
郊外の自宅の納屋に、少年を連れ込んだ。古びた椅子に後ろ手に拘束したが、目を覚まさない。頭からやかんで水をかけてやった。うめき声を漏らして、意識を取り戻したが、まだ朦朧としているらしい。視線が定まらず、言葉にならない声で何かぶつぶつと言っているようだ。
 俺は少年の髪をつかみ、仮借無く平手打ちを食らわせた。しだいに少年の体に力が戻ってくることがわかる。しだいに舌のもつれが解け、「痛い」とか「やめて」とつぶやいているのがわかる。俺は力をこめて拳を振るい、少年のあごに一撃を加えた。激しい音とともに、椅子ごと少年が倒れる。
 少年が苦痛の叫びをあげるのに構わず、俺は椅子を乱暴に起こした。椅子を離れて、少年を見下ろす。少年はようやく意識がはっきりしてきたらしく、怯えた目で、俺の顔を見つめている。
 「ここは・・・」
 俺はにやけて、答えてやる。
 「ここは俺の家だ。ようこそいらっしゃいませ、ってところだな」
 少年の瞳に恐れと共に険しい敵意が宿った。自分が後ろ手に縛られ、椅子に拘束されていること。薄暗い部屋に目の前にいる得体の知れない男と二人きりであることなどが、ようやく理解されてきたようである。少年は両手の拘束を解こうとしばしもがいたが、すぐにそれをやめると、再び俺をにらみつけた。
 「俺をどうしようっていうんだ。何でこんなことを!」
 かわいい顔に似合わない、野卑で反抗的な態度は、俺を狂喜させたが、少年はそのことを知る由もない。
 「言っとくけど、俺なんか誘拐しても一銭にもならないからな」
 常識的な考えである。
 「金なんか、いらないさ。間に合っている」
 「じゃあ・・・」
 「ちょっと遊び相手が欲しくてね。しばらく俺につきあってくれないかな」
 持って回った言い回しが、彼を戸惑わせるようである。
 「・・・なんだよそれ! わけのわかんないこと言ってないでこれをほどけよ!」
 いきり立つ少年の様子、怯えを隠そうとする少年の必死の抵抗が俺を喜ばせるのだ。
 「これからいくつか質問をするから、素直にそれに答えてくれないかなあ。そうすれば、早く楽になれるよ」
 「畜生、ほどけったら!」
 「まず、君の名前は」
 「何でお前なんかにそんなこと・・・」
 俺は用意していた皮のベルトを振るって、いきなり彼の顔面を打ち据えた。少年は悲鳴を上げ、言葉を失って動揺した目で俺を見ている。
 「もっと殴って欲しいか?」
 俺は声色を変える。
 「う・・・」
 頬をひきつらせ、泣きそうな表情になって、彼は黙って首を振った。
 「名前は?」
 「・・・×× 聡・・・」
「サトシ君か・・・君はいい子だから、僕と遊んでくれる気になったかい?」
 目に涙を浮かべて、黙って俺を見る、聡。その表情が、俺の嗜虐心をたまらなくくすぐるのだ。
 「君は、どうしてあんな所で、一人ですわっていたんだい。僕に教えてくれないか」
 聡は、答えない。反抗的な光が、彼の目にかすか戻りつつある。
 「君はうちに帰りたくなかったんだろう? その理由を聞かせてくれないか?」
 聡の目をのぞき見て、俺は自分の読みが正しかったことを確信した。聡はなおも答えない。これも読み通りだ。
 俺はやにわに彼の襟首をつかむと、椅子ごと床に投げ出し、ベルトで闇雲に打ち据えた。聡は悲鳴を上げ、とうとう泣き出した。俺は興奮を抑えて椅子と彼の体を元に戻し、登山ナイフを取り出すと、彼に歩み寄っていった。
 「いやだ。やめて。許して!」
 聡は顔を涙で濡らして懇願する。
 俺はナイフで彼の着衣を切り裂き始めた。彼の体が小鳥のように震えているのがわかる。
 「やめて、何でも言うから、言うこと聞くから、お願いだから・・・」
 俺が時間をかけて彼の着衣を切り裂いている間、彼は震える声で、繰り返していた。靴下を除く全ての着衣を俺はこまぎれに切り裂き、彼の体からはがしてやった。薄暗い納屋に、少年のなめらかな肢体が映える。性器は未成熟で皮をかぶり、周囲は無毛であった。きめ細かな肌の感触がたまらない。
 「さあ、話してくれるね」
 「うちに、帰して・・・」
 「もっと痛い目に合いたいのかな?」
 俺は聡の頬をなでさすりながら、白々しい甘い声で言う。
 「俺・・・・・・」
 聡は、訥々と語り始めた。話しているうちに、次第に恐怖を忘れていくようで、俺がそれほどうながさなくとも、長い物語を聞かせてくれたのである。
 聡の家は、母子家庭であった。小さなアパートに暮らしていた。彼が六歳の時までは、父親がいたのだが、突然姿を消してしまったのだという。聡は、母親よりも父親の方が好きだった。なのに置き去りにされたことに、かなりショックを受けたらしい。
 「お父さん、俺を置いてどこかに行っちゃった。いつまで待っても帰ってこないんだ」
 その頃から、彼は家に帰らなくなった。友達とできるだけ遅くまで遊んで、どこかで時間をつぶして、真っ暗になってから帰る。時には、どこかで夜明かししてしまう。母親と一緒にいる時間が、耐えられないのだという。
 なぜ、母親と一緒にいたくないのか、俺は、それを聞きたかった。俺の想像と合致しているかどうか。それはさすがに、なかなか言わなかったが、俺の顔色が変わったのを見ると、あきらめたように、話し始めた。
 「お父さんがいる時からあいつ・・・いろんな男を家に連れてくるんだ・・・嫌なやつばっかりだ・・・俺のこと、馬鹿にしたように見るんだ・・・お前みたいな若いやつ・・・俺のことを馬鹿にしたように見るんだ・・・俺がいても平気で、裸で抱き合っていやらしいことするんだ・・・俺、それを見るのが大嫌いなんだ!」
 聡は、恐怖とは別の理由で泣き始める。
 「大人なんて、信用できないやつばっかりだ・・・嘘つきで、自分のことしか考えていないんだ・・・」
 俺もその、信用できないクズ人間の一人さ。最低のクズ人間さ。俺は唇をかみしめるこの少年を見ながら、はらわたをかきむしられるような言葉にできない感動を味わっていた。この少年に、母親と同じ血が流れていることを教えてやるのは、どうだろう。肉欲の淵に沈むこの少年の理性と崇高さを弔ってやりたいものだ。その瞬間、俺は彼の処刑方法を決定した。
 俺は悄然とする少年を残して、母屋に戻り、引き出しをかき回して数本のアンプルと注射器を探し出し、納屋へ引き返した。扉を乱暴に開ける俺を、疲れた様子で見上げる聡がいる。傷だらけの全裸の少年が。
 俺は少年の前に立ち、アンプルをポキリと折って薬液を吸い上げた。針を上にして注射器を持ち、少年の前にしゃがみ込むと、戸惑いと怯えの入り交じった声で、聡は聞く。
 「僕をどうするの・・・?」
 「天国に連れて行ってあげる。ひょっとしたら、少しはお母さんのことがわかるようになるかもしれないよ」
 「あんな奴・・・」
 俺の言葉は意味不明だろうが、聡は「お母さん」という言葉だけには厳しく反応した。怒りや反発を感じられるだけ、彼の精神レベルはまだ下がっていないと言える。そうでなければ、甲斐がない。
「オナニーは知ってるかい?」
 俺は聡のくるぶしをさすり、静脈を探しながら、唐突な問いを投げた。
 「何でそんなこと・・・」
 「言葉を知っているところを見ると、やったことあるんだろ?」
 「・・・あるよ。別に悪いことじゃないでしょう?」
 「もちろん、悪いことじゃないさ」
 注射針をぷつりと刺すと、聡の体がピクリと反応する。薬液を少し押し込むと、ピストンを戻し、血を吸い上げる。煙のように、注射器に血液が入り込む。ゆっくりとピストン運動を繰り返しながら、俺は薬液を聡の体内に流し込んでいった。
 わずか数分で、効果は現れる。聡の顔が紅潮してきて、視線が宙を漂い始める。
 これは、残酷な薬物である。アンフェタミン(覚醒剤)の一種と、自白剤に近い成分、それに強力な催淫薬の合剤である。暴力団員に関係の深いモグリ医者が作り出したものを買い取ったのだが、実用性皆無な薬物である。この薬の効果は不可逆だからだ。強度の精神分裂症を引き起こし、精神を破壊する。この薬を一定量以上投与されれば、確実に廃人となる。趣味のセックスに使える代物ではない。
 「なにこれ・・・」
 すでにろれつの回らなくなった舌で、よだれをこぼしながら聡はつぶやく。
 「オナニーしたい?」
 聡は首を振る。
 「したいんだろ、ちんちん触りたい?」
 「縄ほどいて・・・」
 「触りたいの?」
 聡は体をよじる。だだっ子のように。
 「ほどいてぇ!」
 「触りたいんでしょ?」
 「・・・触りたい。我慢できないよう! ほどいてぇ」
 「ダメ。俺がかわりに触ってやるならいいけど?」
 「そんなの・・・」
 「じゃあ、我慢だ」
 「いやだぁ。お願い・・・」
 「おちんちん触って下さいって、お願いできたらしてあげる」
 「うう、あああ。触って、おちんちん触って下さいィ」
 聡は自分の手首が痛めつけられるのも構わず激しく体を揺する。
 「触って、触ってェ! 早くゥ」
 俺は聡の体にピッタリと寄り添い、まずは性器の鈴口をまさぐる。とうに激しく勃起しているそれは、彼の体の動きに合わせて激しく揺れる。優しく愛撫ししては時々動きを止めると、聡は激しく求めて腰を突き出す。
 「あぶ、うぶ・・・」
 すでにほとんどろれつが回らなくなり、赤子のような言葉にならない言葉で快感を訴える聡。涙と鼻水とよだれに汚れ、紅潮した顔。俺は右手の動きに激しさを増した。ほどなく、聡は激しく射精する。俺の右手と、彼の太股、床を汚して精液が飛び散る。
 船を漕ぐように体を揺する聡を後目に、俺は聡の精液の付いた右手を舐め、自らの着衣をはぎ取っていった。俺は俺のペニスをしごきながら、例えようもない多幸感にひたる聡に呼びかける。
 「もっとして欲しいか。聡」
 聡が何度もうなずいて意思表示をする。
 俺は聡に歩み寄り、自らをしごきながら、聡のものを口に含む。それを感じているのかいないのか、聡のいびきのような息づかいが聞こえる。
 俺は口の中にあの独特の香りと舌触りを感じると、立ち上がって俺の精を聡の体に振りかけた。
 俺の呼吸が整い、聡に再び視線を合わせたときには、彼は眠るように目を閉じ、息絶えていた。鼻からは、血が流れ、吐瀉物が口から流れ出していた。後ろ手に縛られ椅子に腰掛け、あらゆる汚濁と傷を体にまとってあわれな死を迎えた少年を見下ろすと、俺は説明できない感情の高ぶりを感じ、獣のような雄叫びをあげた。
夜のゲームセンターで、俺は和哉と再会した。彼に前に出会ったのも同じ店、同じ時間ごろだったような気がする。
 一見すると小学生のように見える小柄な少年であるが、中学二年と聞いて少し驚いたことを覚えている。学生ズボンにアロハシャツのような派手なシャツを着ており、ポケットにはタバコが入っていた。俺は彼のテーブルの向かいに座ると、上目遣いに俺を見る少年に向かってタバコを差し出した。彼がタバコをくわえると、俺はライターで火をつけてやった。彼の顔つきは全く子どもで、目鼻立ちがやや南洋系ではっきりしており、色も浅黒く、ちょっとエキゾチックなかわいらしさだった。すさんだ目つきが、そのかわいらしい顔つきに不似合いで、俺の嗜好を微妙にくすぐった。
 彼は人なつっこい方ではなかったが、俺は巧みに彼に近づいた。こういう少年は、少し大人扱いをしてやることで、うまく取り入れるだろうと俺は読んでいた。
 たわいのないタバコの銘柄の話、女の話をした。背伸びして彼はついてこようとする。ドライな和哉は、金のためなら何でもやるという感性をすでに持ち合わせているようであった。朝まで俺につきあったら一本出すぜ、と言ったら、ほとんど抵抗なくOKを出した。
 ホテルの一室で俺は彼に言った。「一晩つき合うっていう言葉の意味は当然わかっているよな」と。彼にはセックスの経験はない。もちろん男性との経験はましてないだろうと踏んでいた。このハードルを越えさせるために俺は彼の自尊心をくすぐったのだ。「裸にさえなれば、後は俺に任せればいいさ」逡巡する彼に助け船を出すのも忘れない。たわいもなく俺は小柄でしなやかな美しい肉体を手に入れた。
 目の前にいる和哉は、あの時よりも一層少年期の危うさが香気を漂わせているようであった。そのことはつまり、彼がもうすぐ、俺にとって無意味な存在になりつつあるということだ。少年もいつかは、大人になってしまう。いつからか少年も、成長するごとに欠点ばかりが露骨に強調されるようになってしまう。和哉はそうなる前に、魅惑的な姿のまま、永遠に俺のものになる運命なのだ。
 「久しぶりだね」
 声をかけた俺を見て、和哉は少し口元で微笑んだ。俺のことはよく覚えているらしい。
 「ああ。こんばんは」
 あまり気のない返事である。俺は黙って、テーブルにひじを突き、彼のプレイを見ていた。ゲームオーバーになると、彼は顔をあげて、ニヤッと笑う。
 「また、俺としたいの?」
 俺も意味ありげに笑う。
 「そんなところだ。今夜は、OKか?」
 「コレさえ出してくれれば、いつでもOKだよ」
 和哉は親指と人差し指でマルをつくる。
 「いいともさ。今日は二本でどうだ?」
 「・・・気前がいいじゃない」
 「そのかわり、ちょっとハードだぜ。それでもよけりゃあな」
 「平気だよ。今から行く?」

 俺は思わせぶりに目隠しをさせて、自宅へ車を走らせた。家の場所を知られると困るから、と言った。俺にしてみればたわいもないゲーム。和哉にとってはドキドキする犯罪の中の気分の体験。もちろん、彼が俺の家のドアを、生きて再びくぐれるはずもないのだが。
 俺は彼を納屋へと導き、目隠しを取った。パイプベッドが準備してある。和哉の死刑台だ。俺は和哉を軽く抱き寄せると、額に軽くキスをして、ベッドに導いた。
 「ここ、何だか変な臭いがしない?」
 聡の死臭だろうか。俺にはわからない。
 「さあ、そうかい、俺は何も臭わない。・・・ここに横になって、そう・・・」
 優しく裸にして、彼と交わった。死の前の神聖な儀式と思えば、いやが上にも嵩ぶる。彼の温かいアナルで、俺は存分に暴れた。和哉にさほどの苦痛はない。あれから、誰かと「経験」をしたのかもしれない。よがりにかすかな「慣れ」を感じた。それは本来、俺をしらけさせるはずの感覚だったが、死刑にすることを心に決めていれば、懲罰の理由を合理化するだけのことだった。
 一息入れた俺は、彼に背を向けて額の汗を拭っていた。
 「もう、終わり?」
 俺は振り返り、にやりと笑う。
 「まさか、これからが本番さ」
 俺はロープを手に取り、和哉の手首に回す。和哉は興味深げに、それを見ている。
 「エスエムするの?」
 「ほう、よく知ってるな」
 「そのぐらい」
 「でも、したことはないだろ?」
 「しないよ。そんな変態じゃない」
 「ふうん。そうか、俺は変態か」
 「だってそうじゃないか。男同士でセックスしたり、ロープで縛ったりさ」
 和哉の口調には、多分に冗談が含まれている。かわいらしい憎まれ口である。
 「ふふ、じゃあ、お前も俺の、変態仲間だ」
 俺は両手をベッドに拘束しながら、冗談めかして答える。和哉の顔に笑みが広がる。家族や教師の前で、決して見せない笑顔だろう。何が彼を逸脱させ、片意地にさせるのか知ってみたい。
 足の膝に縄を回し、肩口まで引き上げて開脚で縛る。羞恥で和哉の顔が赤らむのがわかる。俺は和哉の性器を指先でいじくりながら、声をかける。
 「お前はなぜ、ちゃんと学校へ行かないんだい」
 「え?」
 その場に全く不釣り合いな質問だった。和哉の顔に当惑が広がる。
 「お前はなぜ、夜中まで遊び歩いて、見も知らない男に体を売る?」
 険しい表情が見る間に広がる。
 「なんでえ、お説教するためにこんなとこに呼んだのかよ」
 全裸で開脚したスタイルでは、彼がすごんでもおかしさが広がるだけだった。
 「遠い異国ではね、君ぐらいの小さな子どもが、兵隊として戦っている」
 「・・・・・・」
 「中にはね、自分の意志に関係なく、誘拐され、親兄弟から引き離されて、人殺しを強要される者もいる」
 俺は彼の反応にほとんど注意を払うことなく、続けた。
 「君はそんな不幸な少年達と比べて、どうなんだ。自分の命を安売りしなきゃならないほど、君は不幸なのか」
 意外なことに、彼は鋭く反応した。
 「そんなこと、わかるかよ。親がいたって、親がいないやつより不幸なことだってある。好き好んで、日本なんかに生まれたわけじゃない。お金やものがいっぱいあったって、幸せとは限らないさ」
意外にも、彼の言葉は受け売りではなく、真実の響きを持っていた。思ったよりも賢い少年だ。俺を少しは理解してくれるかも知れないと、ちらりと考えた。
 「生きている実感がしないだろう? 何もかも頼りなくてさ。セックスしたり、殴られたり、痛めつけたり、血を流したりするときだけが、生きている実感がするのさ」
 彼は返事をしなかったが、俺は和哉の目に、共感の光を感じ取ったと思った。
 初めて和哉を抱いたとき、俺は彼の性器の形の素晴らしさに感嘆した。中学二年としては平凡な大きさだろうが、体つきの割には大きなペニスだ。包皮をかぶってはいるが、雁首ははっきりしており、勃起すると竿は豊かな曲線を描く。同性愛者として、俺はさほど男性器に執着する方ではないと思うが、彼のペニスには心惹かれた。
 俺は不安げな和哉を残して、小道具を揃えて戻ってきた。小椅子に腰掛け、彼の腰のあたりにかしずいて、ペニスに手をかける。俺の言葉は彼の心をかき乱したが、ペニスへの愛撫を続けるうちに、無言のまま少し落ち着いてきたように見える。俺は和哉のペニスの包皮をまくり上げ、親指と人差し指で敏感な皮膚をくすぐるように愛撫した。鈴口に指を這わせる。やがて彼の体に覆い被さり、そそり立ったペニスに口づけする。固くした下で、竿から舐め上げ、愛撫する。和哉の息づかいが激しくなり、あえぎが漏れ始める。
 絶頂を迎える前に、俺は残酷なアイデアを試す。思わせぶりに唇を離すと、和哉は怪訝そうに首を持ち上げて俺の方を見る。俺は木箱の蓋を取り、長いまち針を取り出し、その先端が放つ、鈍い光を見つめた。
 「なにを・・・」
 彼の言葉を待たず、俺は左手で竿の部分をしっかりとつかみ、雁首の根本に、針先を横様にあてがう。
「ちょっと! 嫌だよ! 何するの! 嫌だよ!」
 腰をよじって抵抗する和哉。しかし、拘束された体の動ける範囲は限られている。俺は真横に、彼のペニスを突き刺し、針先を貫通させた。滑らかな感触に、俺は手が震え、和哉の悲痛な叫声も、どこか遠くで聞こえるようだった。
 串刺しにされたペニスは見る間に弛緩し、小便を漏らす。和哉の顔を見ると、蒼白になって唇を振るわせていた。俺はまち針をもう一本取り出すと、光にかざして彼に見せつける。
 「嫌だ・・・痛い・・・抜いて・・・」
 たった一本の針の一撃で和哉はショック状態に陥り、声には張りがなくなっていた。
 「生きている実感ってやつを味あわせてやるよ」
 俺はむき出しにした亀頭に、深々と針を突き刺す。「うっ」という声が漏れて、体中の筋肉が緊張し、体が反り上がる。俺は次々に針を構え、亀頭が針山のようになるまで執拗にそれを続けた。針を刺すたびに血玉が浮き上がり、やがて流れ出すが、和哉のペニスを濡らす血は何か赤い油のようであった。俺は竿から血をすくって、それを舐めた。金属の味がする。
 「痛い・・・やめて・・・」
 傷ついたレコードのように、和哉は哀れなか細い声で短い言葉をくり返す。日焼けした頬は今は紙のように色を失い、頬を伝う涙が痛々しい。俺はたまらない気持ちになり、針山のようになったペニスをいじくりながら、自分のペニスをも刺激する。
 俺は残った針を左手に持ち、一本を構え、睾丸にぶすりと突き刺した。和哉は激痛に声も出ないのか、ただ首を左右に振って唇を噛んでいた。すっかり縮み上がった左右の睾丸にも、それぞれ数本ずつの針が突き立てられ、俺の手持ちのまち針は、見事に和哉のペニスを飾ってくれた。今や、性器とその周囲は血まみれである。
 俺は精気を失った和哉の哀れな顔に顔を寄せ、柔らかな頬に手を添え、唇を吸った。彼が物心ついて以来、こんなに大切に扱われたことがあっただろうか。俺は乾いた涙の筋を舐める。微妙に塩辛い涙の後を舌でたどる。その間も片手は自分のペニスをしごいている。クライマックスに向けての儀式である。
 俺はナイフを手に取り、和哉の傷だらけのペニスを片手で真上に引き上げ、陰嚢のそばに刃をあてがい、スライドさせた。深々と刃物が陰嚢の下に食い入り、和哉は残った力の全てを吐き出すように体を硬直させた。声ではなく、空気の漏れるような音がする。余りにもたやすく、和哉のペニスは彼の体から離断された。俺はその真っ赤な、縦横に針の貫いた、見ようによっては滑稽な宝物を片手に高く掲げ、果てるまで自分のペニスをしごいた。やがて和哉の体からは大量の血液が失われ、命を奪うことであろう。俺は全裸の二人の少年を、向かい合わせに座らせた。二人とも、黒いガムテープでしっかりと目隠しをしてある。二人は首輪をして、その首輪は一メートルほどの短い鎖でつながれている。両手は後ろ手錠で拘束してある。
 一人は、やや筋肉がつき始めて、スポーツ少年らしいしなやかな体つきである。頬の稜線には、柔らかな曲線が残り、ほのかな幼さを漂わせる。性器は、もちろん成長しきっておらず、皮をかぶって無毛であるが、亀頭の形はしっかりとしてきている。小さな方は、全く幼い。胸や腹部の柔らかで微かな膨らみに幼児体型を残し、肌のきめが美しい、色白でほのかにピンクに染まった頬がかわいらしい。性器は、全く子どものものである。
 俺はまず、小さな方の首を後ろから乱暴につかんだ。首を縮めて体をこわばらせる。二人とも事前に十分痛めつけてあるから、口はきかない。一人ずつ別の部屋で、裸にしてしたたかに蹴り上げ、踏みつけてやった。意外と小さい方が生意気で、いつまでも毒づいてくるから、ペンチで歯を一本引っこ抜いてやった。「総入れ歯にしてやろうか」って言ってやったが、そこまで言わなくても怯えきっていた。二人とも「俺の前で人間並みに口を利いたら、手足の指を全部切り落としてやる」と言って、ナイフで足の小指の付け根をちょっと切ってやった。二度と口を利かない。悲鳴でさえも一生懸命漏らすまいとこらえているのだ。得体の知れないやつにとっ捕まって、暗闇の中で痛めつけられる恐怖ってどんなもんなのだろう。
 俺はちびの首をつかんで、年上の方の股間に導いた。一方の手で股間の物をつかんでやると、こっちも思わず漏れそうなる声をこらえて唇を噛んでいる。唇にペニスをあてがい、「舐めろ」と命じた。ちびは命令してる俺のモノだと思っただろう。素直に口を開けて、ぺろぺろやりはじめた。年上の反応が見物だった。相当驚いた様子だった。この育ち具合ならオナニーの経験ぐらいはありそうだが、まさかしゃぶってもらったことはあるまい。どこかで聞いた話だが、人間は五感の一つなり二つなりを封じられると、他の感覚が非常に鋭くなるらしい。二人は盲人の触感を味わっていることになる。
 俺は事細かに命じて、舌を使ってペニスの包皮をめくらせたり、いろんな刺激を与えさせてやった。たまらずに漏らすあえぎがかわいらしくてたまらない。俺は一方で、「俺が許可するまで出すんじゃねえぜ」と、年上の方の耳元で命じた。俺が監督であり観客であるフェラチオ・ショーだった。俺は慣れてきたちびが懸命に奉仕するのをしばらく楽しんだ後、年上の耳元で「出していいぜ」とささやいた。「ウゥ」苦しみ悶えるような声を出して、二度三度とアクションをつけて、彼は射精した。俺は「飲め!」と鋭く命じた。ちびは熱い精液を一生懸命に受け止め、せき込みながら必死に受け止めている。きれいな顔が白濁にまみれるのを見ると、たまらなく嵩ぶってくる。
 「よおし、交代だ」
 俺は、主客を交代させ、今度はちびのペニスを年上にしゃぶらせる。ちびの性器は生意気にも勃起するが、おそらく精液は出るまい。紅潮した顔で荒い息をもらすちびの姿はたまらない。歯を抜かれた痛みも忘れているだろうか。そのうちちびがびくびくと体を震わせて、イッたことがわかった。
舐めていた年上の方自身のペニスが、また半立ちになっているのを見て、俺は延長戦をすることにした。ちびを四つん這いにして、年上をまたがらせ、肛門を責めさせるのだ。二人とも何も見えないから、なかなかはまらないのがまたおかしかった。俺はちびの肛門と年上のペニスにたっぷりローションをなじませて、手助けしてやった。年上の方は意に反した快感に、ちびは得体の知れない経験の恐怖に、それぞれ体を震わせている。年上の方に腰を使わせるたびに、ちびは短い声を漏らし、やがて忍び泣いているのがわかった。俺は快感が体を貫くのを感じた。年上のペニスから精が放たれてちびの臀部と言わず太股と言わず汚すのを見ながら、俺自身も射精した。そして俺は次の段階へとことを進める。
 「いいぜ、二人ともなかなかのエロ役者ぶりだな。さあ、ご対面といくか」
 俺は二人を向かい合わせ、後ろ手錠を外し、二人の視界を塞いでいた黒い布ガムテープを乱暴に剥がした。眩そうに目を細める二人が顔を合わせ、ちびの方が、思わず相手を見据えて叫ぶ。
 「・・・お、お兄ちゃん!」
正仁と明仁、俺は最初に弟の方に目を付けた。私立小学校の五年生。俺はその学校の運動会を見物に出かけたのだ。少しぽっちゃりとして、整った顔立ちに瞳が大きく、睫毛が長くて愛くるしい。俺は組み体操をしている集団の中で、ひときわ光る彼にすぐ目をつけた。彼を応援している家族はすぐにわかった。昼休みに彼が家族のいる方へ駆け寄ったからだ。父母と、家政婦と兄。俺は、明仁がこの家族のアイドルのような存在であるらしいことがすぐにわかった。愛嬌を振りまきながら兄にじゃれている明仁を見ていて、俺は残酷なアイデアが次第に固まっていくのを感じていた。会話とゼッケンを見て、彼らの名字を確かめた。それから、夕方まで粘って、家族の車を尾行し、家のあるおよその場所をつかんだ。まさか玄関まで尾行するわけにはいかなかったが、資産家の彼の家を見つけるのはそう難しいことではなかった。
 俺は次に兄の正仁を登校時に尾行した。彼もまた電車に乗って私立の中学に通っていることがわかった。彼は部活動をやっているらしく、六時を回ってから何人かたばになって帰ってくる。スリムな体型で人望があることが下校時の様子からうかがわれた。難しいのはとにかく電車に乗るまではいつも集団であることだ。他の友人などに俺の姿を見られるわけにいかなかった。
 俺は、短期決戦に出た。難しく見えても、ある程度の運と思い切りがあれば意外にうまく行くものだ。逆に運が悪ければ、どんなに綿密な計画を立てても失敗するときは失敗する。俺はこの日失敗すれば潔く計画を放棄するつもりだった。校門前で明仁を待ち受ける。父親に命じられたと言って車に導けば、たわいもなく彼は助手席に腰掛ける。「××社長の息子の明仁君ですね」などと、下調べの成果を発揮するまでも無かったかもしれない。
 正仁は自宅近くの駅で待ち伏せる。「弟さんが交通事故なんです。社長に言われて迎えに来ました」なんて、俺のくさい芝居でも一回きりなら通じるものだ。安全教育なんて、ここ一番には役に立たないものだ。利発そうに見える正仁が、血相を変えて車に乗り込む様は傑作だった。
 眠らせた二人を拉致して、裸に剥いて後ろ手に拘束して別々の部屋に監禁した。目覚めるのを待って俺はそれぞれの部屋で二人を痛めつけると、目隠しをして例の部屋に拘引し、二人をまぐあわせたのだ。
「ご対面、ってところだな。感想はどうだい、お二人さん」
 俺は一人椅子に座り、床にひざまずく二人を見下ろしていた。
 「あんたは一体・・・なぜ俺達を・・・」
 暴力の嵐にあってあっさりと陥落した正仁ではあったが、弟の危難に際して、少し勇気を取り戻したらしい。それでも先ほどの約束を思い出したのだろう。怯えた目をして口をつぐむ。
 「指はいらねえか。いや、今だけはいいぜ、しゃべらせてやる」
 俺はニヤニヤして、短刀を弄びながらそう言った。
 「弟のケツ穴を犯した感想はどうだ」
 憎しみを宿した目で正仁は俺を見る。おれはうずくまって泣く弟の方に視線を向ける。
 「最初の勢いはどうした。甘えんぼの明仁君はお兄ちゃんがいなければ何もできないか。さっきお前のケツ穴にチンポ突っ込んだのはお前のお兄ちゃんだぜ。兄貴のチンポの味は?」
 俺はしばし黙って返答を待つ。しかし何も返ってこない。明仁はすすり泣くだけだ。兄は弟を気遣わしげに見ている。
 「せっかくしゃべってもいいって言ったのに。もう二度と口が利けなくなる前にさ」
 正仁がはっとしたように俺の方を見上げる。
 「察しがいいな。そう、お前達はここで死ぬんだ」
 「そんな・・・」
 甲高い声を上げたのは弟の方だった。
 「どうしてこんなことするの? お願い、助けて。死にたくないよ。何でも言うこと聞くから。おじさんお願い」
 「明仁!」
 哀願する明仁のボーイソプラノは俺の嗜虐心を煽らずにはおかない。弟を案ずる兄の一声もまた、美しかった。
 「どうしても、死にたくないか?」
 俺は、短刀を光にかざしながら二人に問いかける。
 「じゃあ・・・」
 俺は明仁に歩み寄ると、短刀を近づけ、彼の子どもっぽい柔らかい手に柄を握らせた。
 「こいつで兄貴を殺すんだ。そしたらお前だけ鎖を外してやるよ」
 座り込んだ明仁は、短刀を持って呆然としている。
 「そんなこと・・・」
 正仁がうつむいていた顔をさっと上げて俺を見る。
 「あんたが・・・あんたが、俺を殺せばいいだろう。そして明仁を助けてくれよ」
 俺は小馬鹿にしたように正仁を見下ろした。
 「勇敢なヒーローだな。だが、刃物で殺されるのがどんなに苦しいかわかっているのかい」
 俺は立ち上がり、木箱の中からもう一本の短刀を取り出す。それを正仁の前に投げてよこす。
 「これで、公平だろ? どっちか生き残った方を、解放してやるよ」
 「そんなこと・・・できるわけないだろっ!」
 叫ぶ正仁を黙殺して、俺は、布ガムテープをとり、再び二人の顔に巻きつけた。そのテープで、口も塞ぐ。二人の手に刃物を握らせ、命じた。
 「二人とも殺されたくなかったら、相手をやるんだ」
 息詰まる沈黙が二人の間を支配する。たるんだ鎖が二人をつないでいる。二人が微妙に動くたびに、チャリチャリと音を立てる。俺は二人のそばを行ったり来たりしながら、タイミングをうかがっていた。
俺は静かに二人を離れ、もう一本の短刀を手にとって戻ってくる。俺は静かに明仁に歩み寄り、短刀を構えて、彼の白い胸に素早く傷を付けた。「ヒッ」というような声が漏れて、彼の乳首から胸の中央あたりに、赤い筋が走る。ガムテープに塞がれた目で、必死に兄の様子をうかがおうとしているのがわかる。続いて俺は、正仁にも傷を付けた。弟よりも乱暴に、肩口に刃物を走らせる。たじろいだ正仁が体を引き、鎖が引っぱられる。疑惑と驚愕が彼の顔に浮かぶのがわかる。目が見えず、口が利けないのがもどかしかろう。
 俺は陰険な計画を着々と進める。二人の体に交互に傷を付ける。次第に深い傷を。二人の息が荒くなって、兄の表情には悲壮感が浮かんでいるように見える。弟が泣き始めた。そして、心の中の一本の線が切れるときが来た。弟の方が先だった。ガムテープで塞がれた口の奥からうなり声を漏らして、短刀をめったやたらに振り回し始めた。鎖は一メートルしかないから、そのうちの何回かが兄の胴や腕をとらえた。兄は弟の恐慌状態に会うや、弟に向けて突進し、彼を組み敷いた。何とか、弟を鎮めようとしているのだろう。ところが不幸なことに、弟の担当の刃がまともに兄の手のひらを切り裂き、とうとう恐怖に耐えかねた兄は、自分の短刀で弟を刺してしまった。
 明仁の首の付け根から赤い血が噴き出し、彼は悲痛な声を漏らす。正仁には、明仁がどの程度傷ついたかわかりようもない。ぬるぬるとしたを血を手のひらに感じ、取り返しのつかないことをしてしまったことを認識したのだろうか。刃物を取り落として、手探りで明仁の体の位置を確かめ、抱きしめようとしたのだ。正仁の口が動いたように見えた。口が利けたら、「明仁、ごめん」とでも言っただろうか。ところが、抱きすくめられようとした明仁は、また猛然と体をよじり、短刀を突きだし、その刃先は、正仁の下腹部を見事なまでにとらえ、刀身はその半分ほどを、正仁の体に滑りこませた。けいれんを起こしたように正仁の体ははねのけられ、仰向けに横たわった。
 上半身を朱に染めて、首を押さえて座り込む明仁と、腹に刀を突き立てて、その横に力無く横たわる正仁。俺はのろのろと体を起こして、まず二人の首から鎖を外し、ガムテープを全てはぎ取った。虚脱した空気が数瞬流れた後、明仁は兄の方にすり寄っていった。
 「ごめんなさい、お兄ちゃん」
 つぶやくような声だった。明仁は正仁の腹に突き立った短刀を抜いた。ごぼごぼと泡を吹きながら鮮血がしみ出す。慌てて、明仁はその傷口を押さえた。遠のいた正仁の意識が、戻って来た。
 「明仁・・・」
 正仁は明仁の方に力無く手を伸ばす。
 「こっちに来てくれよ。兄ちゃん、寒い・・・暗くて寒いよ」
 明仁は、正仁の上に覆い被さるようにして、正仁は、その彼の背中と首に手を回すようにして、二人は抱き合った。二人の空間の中に、俺はいない。
 「泣くなよ・・・明仁」
 「うん」
 二人の最期の言葉。次第に二人とも腕の力を失い、折り重なって目を閉じて、闇に包まれていった。
 それは至福の瞬間。俺はその演出者。その美しい光景に、俺は心の底から満足感を覚えた。