カテジナ狩りの森

森の中へわざとカテジナさんを逃がしてからそろそろ一時間が過ぎた。
追跡を開始するにはいい頃合だ。
「いくよフランダース、ハロ」
「バウッ、ワゥ」
「リョウカイ、ウッソー」
元々は優秀な猟犬の血をひくフランダースと森林内地形マップをロードしたハロが僕の相棒だ。

強化人間といっても、所詮森林に慣れていないカテジナさんに僕たちが追いつくまで一時間もかからなかった。
追い付かれたのを察知して大きな木の陰に隠れていた。
「バゥバゥ」
僕は気づかないふりをしてやり過ごし、もう一度逃がして追うつもりだったけど、フランダースが獲物を見つけた猟犬の性で吠えてしまった。
「来ないでっ!」
落ちていた木の枝を握り締め、恐怖と憎悪をこめた目でこちらを睨みつけるカテジナさん。
しかし、森の中で完全に猟犬の本能に目覚めたフランダースが瞬時にその手首に噛みついてしまう。
「痛っ!」
「グルルルルル」
「はなせっはなせっ、ああっ!」
必死でフランダースを引き離そうとするカテジナさんの首筋に僕の手刀が入った。
ヂリヂリヂリヂリ
何かが焦げつくような匂いと、背中から尻にかけて感じる熱さにカテジナは目を覚ました。
「….ウッソ….」
目の前にいるのはウッソ・エヴィン。
昔の事は水に流しましょうと甘い言葉で自分を騙し、監禁して日々弄び続ける悪魔。
身体を洗うため川へと連れていかれる途中で森に逃げこんだがあえなく捕まってしまった
そのウッソの顔が今、逆さに視界に映る。
つまり自分は逆さに吊られているのだ。
みると両手足首を縛られ、腹を上に向け木の上から吊るされている。
そして….意識がはっきりしてくると背中から尻にかけて感じていた熱さがより鮮明になる。
鼻腔に入ってくる焦げ臭い匂い。
まさか。
不自由な首を捻り、下を見た。
「ひいっ」
そこには燃え盛る炎があった。
「気がつきましたか?カテジナさん」
ウッソが笑顔で聞く。
「な、何をしてるのよっ!」
「見てわかりませんか、豚の丸焼を作るんです」
笑顔のままのウッソが、カテジナには悪魔に見えた。
「熱っ、熱いっ!」 森の中を逃げ回ったため、泥に汚れた白い裸身をくねらせ必死で炎から逃れようとするカテジナの姿を、ウッソの命令通りに撮影するハロ。
「いやあカテジナさん、色っぽい踊りですね、お尻を一生懸命ふっちゃって」
「こ、殺してやるっ!この餓鬼っ!」
ウッソの脳天気な声に怒りの絶叫を返すカテジナ。
しかし。
「どうやって?」
ウッソの言葉に唇を噛みしめながら、必死で炎から逃れるべく無様な空中裸踊りを続ける。
もっともそこまでして身体を上に跳ねあげても、地球の重力の下では身体はすぐに熱い炎の上に落ちてしまう。
「あの時言ったはずですよ、今日からカテジナさんは僕の家畜ですよって」
「ああ、熱い」
「家畜が逃げ出したら、それはもう野生動物です」
「熱い、熱い」
「捕まえたら殺そうが食べようが、捕まえた者の勝手ですよね」
「熱い、止めて、助けてっ!」
炎の熱さと、ウッソの静かな狂気に耐え切れなくなり、絶叫と共にカテジナは….失禁した。
バシュー!
用意されていた消化剤によって炎は瞬く間に消え去った。
「さすがにカテジナさんのおしっこだけじゃ消えませんでしたねえ」
その言葉にカテジナは宙吊り失禁の醜態を思い出し顔を真っ赤にする。
裸に剥かれ何度となく陵辱されて来たカテジナだったが、それでもまだ羞恥心というものは残っていた。
それが自分自身を苛むのだが。
「さて、ご希望どおり助けて差し上げたからには、僕の頼みも聞いてくれますね、カテジナさん」
「….好きにすれば、いつものように….」
今回の余りに過酷な仕打ちでウッソの恐ろしさが骨身に染みたカテジナ。
もはや逆らう気力は失せていたが、それでもふてくされた態度をとって最低限の衿持をしめそうとした。
だが。
ヒュン!
「ああっ!」
獣吊りにされて無防備な股間に、木の枝のムチが飛んだ。
「わかってないようですね、僕はカテジナさんにお願いがあると言ってるんですよ」
おそるおそる顔を上げてウッソを見ると、相変わらず笑顔。
しかしその目は笑っていなかった。
「カテジナさんを食べるのをやめる代わりに、僕のを食べてはもらえませんか」
そう言って年齢と容姿に見合わぬ巨大な男根をカテジナの目前につき出すウッソ。
何をしろと言っているかはわかっていた。
今までにも何度も、ウッソの巨大なモノを口腔内に押し込まれ中で精を放たれる屈辱を文字どおり味あわされていた。
しかし、その際には必ずウッソはカテジナの口には歯で噛めぬように「口輪」をはめた。
カテジナには知る由もないが、その口輪は正式名称をオープン・ギャグという。
ましてそれがウッソが秘かに肉体関係を持っている戦争未亡人レーナ・ワーカーが何故か所有していてウッソとの「プレイ」に使用していた物などとは。
だが今ウッソはその装備なしに、カテジナへの屈辱的な口腔陵辱を行おうとしていた。
「だ、誰がそんなこ…ああっ!」
拒否の叫びの最中に悲鳴を上げるカテジナ。
その背中に、まだ熱のある焼け残りの薪を押しつけられたのだ。

「むぐぐう」
屈辱と息苦しさに涙をこぼしながら、カテジナはウッソの年齢と容姿に見合わぬ巨大なモノをくわえていた。
いっそのこと噛みついてやりたい。
だが片手にまだ煙を上げている薪を持ったウッソを見ればそんな考えは消えてしまう。
結局は三度目にそれを背中に押し付けられる前に、屈服して口に巨大な肉棒をくわえたのだ。
自分が情けなかった。
戦争が終わって一年余、肉体的精神的疲労から一時的な記憶の混乱と視神経の麻痺に陥っていたカテジナは、完全に記憶と光を取り戻していた。
しかし、今の自分の境遇では、かえって記憶など戻らない方が良かったかもしれない。
かつて意固地になって拒否していたウッソに、玩具のように、いや玩具そのものとして弄ばれる今は。
昔の自分なら、たとえ火あぶりにされようとこのような屈辱を甘んじて受けたりはしなかったと思う半面。
彼女の中でもう一人の自分が囁く、そんなことはない、あなたは昔から弱い人間だったのよ、弱いからこそ戦争の狂気に身を委ねていたのよ、と。
「心がこもってませんねカテジナさん、あと一分以内に、僕のたまりにたまったカテジナさんへの想いを飲み干してください」
ウッソからの宣告に、カテジナの背筋に冷たい汗。
一生懸命なめしゃぶるが、一分はあっという間に過ぎた。
ウッソの熱い肉凶器がカテジナの口から抜かれる。
「残念でしたねカテジナさん、僕の頼みを聞いてくれなかった以上、食料として役に立ってもらいますか」
その言葉に硬直するカテジナ。
「もちろん僕には人間を食べる趣味はないですよ、でも僕の今の一番の収入源であるハムやソーセージの原料が何かなんて、お客さんは気にしませんから」
「い、嫌ーっ!」
「どうしたんですカテジナさん、僕の熱い思いを飲み干すよりは肉製品になる方を選択したんじゃないんですか?」
ブルブルと首を振るカテジナ。
「黙ってちゃわかりませんよ、どうしたいのか、自分の口から言ってください」
「…….」
「口がきけないということはやっぱり人間じゃなくケダモノということですね、じゃあ遠慮なくハムにでも….」
「やめてーっ!」
絶叫して涙をボロボロこぼすカテジナ。
「やめて?はて、カテジナさんは僕に命令するんですか?」
「やめて….ください、お願いします」
「そうですか、じゃあ何がしたいんです?」
「そ、それは」
「…..いぶす前に血抜きが必要かな」
「ひぃっ…..くわえさせてください」
「誰の、何を、誰がです?」
「ウ、ウッソ…..ウッソ様のおチンポをカテジナにくわえさせてくださいっ!お願いしますっ!」
「くっくっくっ、カテジナさん、ウーイッグのカテジナさんが なんてはしたなく恥知らずな事を口走るんですか?ふふふふ、 あっはははははは」
自分に強要され卑猥な言葉を口にした哀れなカテジナに、腹をよじって大笑いするウッソ。
「くくくく、まあ仕方ないですね、ここは一つカテジナさんの願いを叶えてあげますか」
恩着せがましい言葉を発しながら、再び起立した肉凶器を涙を流すカテジナの開いた口へと挿入する。
「むぐぅ」
喉の奥にまでさしこまれた太い棒に、息苦しさを覚えながら、一刻も早くこの責め苦から逃れるために懸命になめ吸い付くカテジナ。
「ううっ」
快感がウッソの背中を走る。
ズピュウ。
白い液体がカテジナの喉の奥に発射された瞬間、ウッソは余韻を味わいもせず即座に棒を引き抜いた。
その理由はの一つは。
「ゴホッ、ゲホッ、ウグゥ」
仰向けに吊られた状態のカテジナの口の中で発射された白濁液は、地球の重力にしたがってカテジナの食堂を通らずに気管と鼻腔へと流れ込んだ。
気管の方は咳き込みを促しただけだが。
鼻腔に流れ込んだ生臭い粘液は、カテジナに嘔吐を催させた。
精神的にも、肉体的にも。
このまま突っ込んでいたら咳の時に棒を噛まれいてたであろう。
しかし引き抜いた理由はそれだけではなかった。
仰向けの状態での咳や嘔吐感の苦しさは尋常ではない。
全てがおさまっても、カテジナは荒い息をしていた。
そこへウッソが、一度引き抜いた肉棒をもう一度突き出す。
「綺麗にしてください」
何の躊躇もなく、命令通り三度それにしゃぶりつくカテジナ。
それは自分自身でも信じられない行動だった。
無意味な抵抗は無駄な苦痛の元と、心が納得しなくても身体の方が認識してしまったのだ。
再びこみあげる嘔吐感に耐えながら、空気に触れて精子が死滅したため一層生臭くなった白濁液を綺麗になめ取ったカテジナは肉棒から口を離した。
バシッ!
そのカテジナの頬に、ウッソの強烈な平手うちが入る。
「誰が口を離していいといいました?」
髪の毛を掴みながらカテジナの顔をのぞき込むウッソは笑顔。
しかしその目は邪悪な炎を宿していた。

翌朝。
罰として巨木の幹に大の字で縛られたまま放置され、疲労のためにそのまま眠りにつき、夜の間に虫に全身至るところを噛まれ刺された状態で目覚めたカテジナ。
その眼には何も写らなかった。
昨日からの極度の精神的肉体的苦痛により、視神経の麻痺が再発したらしい。
しかしカテジナはそれでいいと思った。
もうウッソの目をみなくて済むのだから。
あの悪魔のような目を。

天気のいい日は犬の散歩がウッソの日課。
しかし、今ウッソが握った綱の先にある首輪をはめているのは彼と内縁の妻シャクティの愛犬フランダースではない。
フランダースは首輪などせずに自由にカサレリアを走り回っている。
首輪の主は人間、いや、かつて人間であったもの。
先日過酷な背め苦の果てに再び失明したカテジナ・ルース。
確かに人間としてこの世に生を受けたカテジナではあったが、戸籍上はとうに死んだことになっている。
そうでなくても司法・行政の行き届かない場所に盲目の人間が住んでいるのだから、人並の生活を送るには周囲の暖かい目が不可欠。
しかしここカサレリアの地では、彼女がそれを期待するのはまったく無意味なことだった。
むしろ周囲の悪意に満ちた視線に晒されている。
そして今日もまた……。
粗末な衣服で、四つん這いを強制されて懸命に歩くカテジナを引き擦るようにしてウッソが連れてきたのはある鶏小屋の前。
「あら、ウッソ」
鶏小屋から卵を入れた篭を手に出てきた女性がウッソに挨拶をする。
年のころは17,8だが、その割に大人びた感じ。
整った容姿にもかかわらず、清楚を通り越し地味な印象の彼女の名はエリシャ・クランスキー。
しかしその清楚な瞳が、ウッソが連れている「生き物」を見た途端に狂気の色に染まる。
「あら、お散歩だったの」
言いつつ篭を小屋の前にある棚に置くとウッソの方へ近づいて行く。
「この糞雌犬のっ!」
いきなりの爪先蹴りがカテジナの脇腹へとめりこむ。
「ぐふっ!」
首輪のみならず口枷をはめられているカテジナは、悲鳴すらも出せずに呻きながらうずくまる。
続いて顔面への蹴りあげで口枷が口中にめりこみ鼻がひしゃげ、口と鼻から血が流れ出した。
しかしこんな目に合わされてもカテジナは二本足で立って応戦しようとしたり逃げようとしたりはしない。
それはとりも直さず、そうした場合の罰の方が、今加えられている暴力よりも恐ろしいことを意味していた。
「ま、待ってください、エリシャさん」
日頃は清楚なエリシャの悪鬼も逃げ出しそうな鬼気迫る表情にたじろぎながらも制止する。
「そんな強く蹴ったらしまいには蹴り殺してしまいます、大事な家畜なんですから」
「何の役にも立たない家畜でしょ、それともあなたの夜の役にたってるのかしら?」
二年前、オデロ相手に勇気をふりしぼって「帰ってきたらもう一度してやる」と言って顔を赤らめた純情なエリシャとは思えない発言。
「まさか、こんなの家畜ですよ」
「本当かしら」
「少なくともエリシャさんほどの魅力はないですね」
「….証明してよ….」

マルティナが不在のクランスキー家の小屋の前にカテジナは犬のようにつながれていた。
小屋の中からはエリシャの喘ぎ声が洩れている。
エリシャが「オデロの仇」カテジナをかくも過酷に扱う理由はウッソと関係することでオデロを裏切っている(そんなことはないのだが)という罪悪感から逃れるためであった。
無論、本人もそんなことは気づいていない、ただウッソのみがそれを察知していた。

「ううっ、むぐっ」
「ほら、そんなんじゃ入らないでしょ」
ウッソの目論見通り。
後ろめたさから逃れるため、エリシャはさらに過酷にカテジナを虐待する。
ウッソから「カテジナが最近弱ってるから滋養に卵が欲しい」と言われたエリシャ。
意外にもあっさりとうなづくや、カテジナの特殊な口枷で丸く開かれた口に卵を入れてやった。
ただし殻ごと。
「家畜の分際で卵を食べるなんて贅沢なのよ、ほら」
殻ごとの卵を喉の奥に押し込まれ、苦悶するカテジナ。
「うぐぇぇぇ」
「うるさい!」
開いた手でエリシャが平手をかました瞬間。
グシャ!
その衝撃もあってようやく卵が割れると、今度は気管に生卵をつまらせて激しく咳き込み、殻の一部を吹き出す。
「きったない、吐きだすんじゃないわよ!」
カテジナの頭を憎しげに踏みつける。
「まったくカテジナさんは卵も満足に食べられないんですか、口から食べられないなら別のところから食べさせた方がよいのかも知れませんね」
ウッソの言葉に、帰宅してからのお仕置きの内容を察知し戦慄するが。
「さて、どこで食べさせましょうか」
ウッソの考えていたのはさらに非道な事だった。

まだ咳き込んでいるカテジナの首輪をひいて歩き出すウッソ。
その行く先は発電用の水車小屋。
そこには発電機のメンテに来ているカレルとウォレンがいた。
「やあウォレン、カレル」
ウッソの呼びかけに振り向いた二人。
「ウッソ、呑気にお散歩かよ」
愚痴るウォレン。
「丁度いいとこに来てくれたね」
手伝いを期待するカレル。
二人ともカテジナが犬扱いを受けている事はいつもの事なので気にもしていない。
「何か問題があった?」

ウッソも加わって検討した結果、発電機の消耗部品の取り替えが必要という結論になった。
「資金がいるな….」
にやりと笑うウッソ。
懐からハロの遠隔操作リモコンを取り出す。
「ハロを呼ぶの?」
「うん、カメラマンが必要だからね」
「カメラマン?」
「資金稼ぎにちょっとしたビジョンを撮影するんだ」
そう言いつつ自分をニヤニヤと見つめているウッソに、盲目のカテジナは気づいていなかった。
「カテジナさん、脱いでください」
ウッソの突然の命令にカテジナはビクリと身体を震わせながら、それでも命令に従って震える手で粗末な衣服を取りはじめる。
気配や会話から、ウッソ以外の人間が二人いる事がわかっているため、その顔に見る見る羞恥の赤味がさしていく。
連れ歩く時、衣服を着せてあるのはこのためだった。
絶対服従を強いられているカテジナだけに、初めから全裸で連れ出されても文句も言えない。
しかし普段は服を着せておき、何かの度に脱がすという形を取らないと、裸にされる事に慣れてしまって羞恥地獄を味あわせる事ができなくなる。
果たしてウッソの狙い通り、カテジナの服を脱ぐ手はガタガタと震え、顔といい少しずつ露になる肌といい真っ赤に染まり、光を感じない両目からは涙が滲んでいる。
それでも命令通り、一糸まとわぬ姿になるカテジナ。
赤味のさした白い肌にはところどころに生傷や火傷があり、ここまで従順に命令に従うようになるまでに繰り返された調教の過酷さを物語っていた。
もっともそれは単に肉体的苦痛だけではなく、恐怖やトラウマを利用した心理的な要因もあるが。
どちらにしろ今のカテジナは、ウッソの命令に従い素肌をさらす雌奴隷でしかない事だけは確かだった。
「ゆでてきたよ」
ウッソの指示を受けてウォレンが持ってきたのは先ほどエリシャからもらった卵だった。
それをウッソに渡しつつ、ウッソの命令で素裸のまま四つん這いになっているカテジナをチラチラと見る。
未だマルチナを諦め切れず、そして未だ振られ続けているために童貞のウォレン。
カテジナの裸体に興奮を抑えきれない。
今までに何度かウッソによって剥かれた、あるいは命令されて肌を晒すカテジナを目にして来た。
もしも押し倒してもウッソは止めないどころか、カテジナに抵抗せず受け入れるよう命じたであろう。
しかしだからと言って、さすがに兄貴分の仇で童貞を捨てる気にはならないウォレンは歪んだ欲望をウッソのカテジナへの恥辱に荷担することで解消しようとする。
それはもちろんウッソの計算通りなのだが。
「さてカテジナさん」
ハロが撮影スタンバイし、ウォレンとカルルも見守る中。カテジナの前に仁王立ちして無情の命令を下すウッソ。
「折角の卵を口から食べられないのなら、下の方から食べて貰いましょうか、ふふ、こんな珍しい光景は撮影して大勢の人に見て貰わなくては」
ハロが撮影する中。
あまりの恥辱に全身を赤く染め、ブルブルと震え、滝のように涙を流しながら。
それでも命令通り、ゆで卵を自らの穴へと入れるカテジナ。
薄笑いを浮かべるウッソの左右で、興奮に打ち震えるウォレンとカレル。
「まだ一つ目ですよ、次はどうしました?」
ウッソの次の命令に、もう許してくださいと哀願するように首を振るカテジナだが。
「ウーイッグに着くまで身体を売って生きてきたカテジナさんが卵の一つや二つで根をあげるわけないでしょう」
現在の生き地獄と比べればどんなにマシかわからないが、それでもやはり忘れたい過去の記憶。
それを殊更に言いたてる、心の傷に塩をすりこむようなウッソの言葉にカテジナの中に久々に叛意が芽生えはじめた。
「もう我慢できない….こんな屈辱をこれ以上味わうくらいならいっそ一思いに….」
だが。
結局命令に従い、ハロに向けて大股を開きながら、二個目の卵の挿入を試みる。
逆らってもウッソは一思いに殺してはくれない。
緩慢な苦痛と絶え間ない死の恐怖を延々と与えてくるだけだ。
「一度死にかけた人間は死を恐れない」などと言うのは妄言に過ぎないと、戦場で、放浪中の飢えと寒さで、ウッソの拷問で、死の恐怖を幾度も味わったカテジナにはわかっていた。

紐を掴んで前を進むウッソと、それに引っ張られるカテジナ。
二人からは全く異なる足音が聞こえる。
高揚感に弾むような二つの足音は、マニアに高値で売れそうな映像を撮り終えて上機嫌のウッソ。
陰鬱に沈むような四つの足音は、恥辱の姿をカレルとウォレンにも見られたばかりか、映像に撮られて売られる事に耐え難い屈辱を感じているカテジナ。
撮影が終わり、粗末な衣服を着ることは許されたものの、惨めな首輪と口枷に加え、今度は鼻を上から吊ってまるで豚の鼻のようにめくりあげる拘束具まではめられてしまった。
鼻の痛みはほどでもないが、鼻を吊られた自分の顔がどんなに醜く歪んでいるかを想像すると一層の屈辱に涙がこぼれる。
どうせ前を向く必要もないので、うつむいたまま歩いていたがめざといウッソの命令で顔を上げさせられる。
「なんで下を向くんですカテジナさん、可愛いじゃないですかその鼻、まるで雌豚ですよ….そういえば今のカテジナさんは犬でしたか….よーし、今からは犬はやめて豚です」
そう言うウッソの目が、ある建物に向く。
それはウッソ達の共用の豚小屋だった。
小屋の中では一人の少女が、豚達に餌を与えていた。

およそ豚ほど誤解されている動物もおるまい
馬鹿で不潔で荒淫で貪欲な動物だと
実際は草食動物の中では象の次に頭がよく、清潔な環境にしておかないと太らず肉質も悪くなり、発情も普通の家畜と大差はない
しかしただ一つ確かなのは貪欲な大食動物ということだ

カサレリアの豚小屋は、川を引き込み糞尿や古い藁などを流し去るシステムで、さほどの悪臭はしない。
それでも獣になれていない人間にはムッと来る匂いだが、ここで豚に餌をやることに慣れてしまったスージィ・リレーンにはたいして気にもならない。
残飯を瞬間乾燥させて粉砕し、それを再び固めたペレット状の餌を豚達に与えていたスージィは兄のように慕っているウッソの姿を見かけ、外に駆け出した。
「ウッソー、あれ?」
ウッソの足元にいる人物を見て、その笑顔が沈む。
スージィのもう一人の「兄」の仇を見て。
「スージィ、今日は豚小屋の当番なのかい?」
「う、うん」
カテジナに冷たい目を向けつつ答えるスージィ。
「そうか、じゃあこの家畜に代わりをさせるから、スージィは遊んでおいで」
ウッソはスージィにだけは優しい。
普通女性には表面的に優しく見えるが、実際には下心しかないのに比べ、打算や掛け値無しの優しさを向けている。
まだ15才の自分を「男」として見るカサレリアの女性達の中で、まだ10才の彼女だけは、純粋に無邪気に自分を「兄」として慕っているからだ。
「いいの?」
「いいんだよ、こういう時のために家畜を飼ってるんだ」
「う、うん、わかった」
カテジナを一睨みしたあとでウッソの好意に甘えその場を去るスージィ。
それを見送るウッソ。
スージィにだけは自分の鬼畜なお遊びの片棒を担がせるつもりはなかった。
いくら「兄」の仇を相手だとはいえ、面白半分に虐待の限りを尽くしていれば無邪気なスージィの人格が歪んでしまう。
そんな事になったら自分はあの世のオデロに申し訳が立たないと考えるウッソ。
エリシャを寝とった事は申し訳が立つと思っているらしい。

「さてカテジナさん、豚がどうして豚小屋の外にいるんです」
スージィを優しい目で見送っていたウッソが、正反対の視線を足元のカテジナへと向ける。
「さあ、豚は豚のいるべき場所へ入るんですよ」

再び服を剥がれたカテジナは、豚小屋の中の檻の一つへと押し込められた。
その際に、ウッソは口枷を外した。
「みじめですねえカテジナさん、鼻をめくりあげられ、豚小屋の中に入れられて、もう豚そのものですね、どうです、いっそこの小屋の中で一生暮らしますか?」
口枷を外されても、揶揄を受けてもカテジナは黙っている。
下手な事を言えばそれを口実にまた酷い折檻をされる。
それこそ本当に豚小屋の中で飼われかねない。
「それとも、いっそ一思いに舌噛んで死にますか、そういえば以前クロノクルさんの後を追って死ぬとか言ってましたね」
「そ、それは…彼のことは言わないでっ….ください….」
忘れかけていた名前を出され、つい感情のままに言葉を発してしまうカテジナ。
「僕に殺して欲しいとか言って、その癖、逆に僕を刺してくれましたっけね」
かつての凶行、そして現在の自分とウッソの立場。
それを思い起こして身震いするカテジナ。
「今でも時々痛むんですよね、あの時の傷が….」
ウッソの声が段々と低くなっていき、カテジナは生きた心地もしなくなる。
「….なんかもう、苛めるのも飽きたし、やっぱり本当にここで暮らしてもらうか….」
「!」
それは芝居がかっていない、ウッソの素の言葉だった。
「それじゃあね、あ、餌だけはやるから安心していいよ、嫌なら舌を噛んで死んで」
「あ、あの….」
嫌味ったらしい丁寧な口調を止めたウッソに、ただならぬ雰囲気を察知して慌てるカテジナ。
「何だよ、僕は帰るよ、あなたはここで暮らすがいいさ」
自分はもう、虐待の道具としても用済みにされた….。
そう判断したカテジナは、服従を捨てた。
「出して、ここから出して!出せっ、出せーーーーーーっ!」
檻にしがみついて泣き叫ぶ。
「うるさいなぁ、こんなうるさいのがいたら豚たちがストレスで
痩せちゃうよ….仕方がない」
カテジナ目掛け、バケツに入った残飯をぶちまけるウッソ。
「ひっ」
「そういえばスージィが餌をあげてる途中だったから、まだ餌をもらってないのがいたな、お誂え向きに隣の檻か….」
「何をする気?」
「豚ってね、人間が思ってるよりもずっと利口で綺麗好きな動物なんだ、でも腹が減ると見境がなくなってなんでも食べる、丸太に残飯を盛っておくと丸太が噛られて穴だらけになるほどさ」
「え?」
「うるさいあんたは豚の餌にでもなってもらうよ….さよなら」
ウッソが天井から下がった鎖を引くと、カテジナのいる檻と、隣の餌をのお預けをくらってる豚達のいる檻の間の仕切板も上へと引き上げられた。
何が起こったのか、カテジナには一瞬理解出来なかった。
だが、隣の檻との仕切りが外され、飢えた豚たちがこちらへと入って来るのだと知った途端。
「いやー!」
まだウッソ達と完全に決別する前、カサレリアを訪れた時。
カテジナは初めて本物の豚を見た。
思っていたよりも遥かに大きくて、獰猛、そしてまるで肉食獣のような牙を持っていた。
たとえ肉を食う気がなくとも、自分の身体にぶちまけられた残飯を食べようとその大きな口を開け、鋭い牙が….。
「いやっ、いやっ」
悲鳴をあげながら、檻にしがみつくカテジナ。
「助けてっ!なんでもしますから助けてっ!」
「もう遅いんだよ」
冷たく吐き捨てるウッソ。
「そんなっ!ああっ」
ついに自分に豚がのしかかって来た。
生きたまま食いちぎられる恐怖に、カテジナは失禁した….が。
「ピチャピチャ」
カテジナにのしかかった豚達は、その身体にこびりついた残飯を舌でなめとっていく。
「あはははははは、びっくりしたでしょうカテジナさん」
急にいつもの丁寧な言葉使いにして悪意に満ちた口調に戻ったウッソ。
「豚同士で喧嘩をして傷つけあわないように、牙は全部抜いてあるんですよ」
騙されていたと知ったカテジナは、怒るより無惨な死を免れたことに安堵した、だが。
「ひっ、いっ、嫌、ここから出して、出してくださいっ!」
豚たちに全身をなめまわされているという現状を思い出すと、体内を凄まじい悪寒が走った。
しかし….。
「まあいいじゃないですか、その内豚になめられるのが快感になるかもしれませんよ」
「そっ、そんなわけっ、きゃあっ」
顔を舌がはい回り、悲鳴を上げる。
「くくくく、あははははは」
ウッソの笑い声が響く中カテジナは豚達になめられ通しだった。

ぐったりとしたカテジナが檻から引き出され、ホースで冷たい水をかけられる。
「豚の臭いよだれまみの汚い家畜を連れて歩くわけにはいきませんからね」
自分がやったくせに酷い言い草のウッソ。
しかしカテジナは反抗心よりも、これ以上は酷い目にあわされないようにと願うばかりであった。
今日味わった、卵責めの苦痛、強制異物挿入の恥辱、そして、生き餌の恐怖、全てが初めてのおぞましい体験。
しかし明日にはまた別の、新しい、そして身の毛もよだつ責めがカテジナを待っているだろう。
ウッソとカテジナに生ある限り。
カテ公の「お惨歩」に終わりはないのだ。